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詩音編
16。「あなたにされたいのか、ただされたいだけなのか」
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夜通し犯され、結果詩音の脳髄はまるで焼き切れたかのように熱を持っていた。
そして……詩音は、仕事をクビになった。
「本番して、それを掲示板に書かれちゃったんだよね。内容見た?」
「いえ……」
「『りおんはそれで裏引きもしてる』って。いやー、まさか本当にしてるとは思ってないよ?本番くらいなら指名取れるならうちとしても見逃してたしさ。でもさすがに、これだと風評被害まできちゃうから。ごめんね、ほとぼり冷めたら名前変えて……あ、顔も変えてくれるといいかもね」
結局、復帰して2ヶ月足らずでの解雇。しかし思いの外稼げたし、貯金も出来た。しばらくはゆっくり就活出来るだろう。
事務所から私物だけ回収して、駅へと向かう。すると、改札の前に……森井が立っていた。あの強制泊まりコース以来なので、彼を見るのは一週間ぶりだった。
「……前髪、切ったんですね」
詩音の言葉に、森井は何も言わなかった。ただ、よく見えるようになった目で詩音を一瞥だけすると改札をくぐった。詩音も、それに続く。
ホームに到着し、彼の後ろに立つ。電車が来るまで、あと10分。周囲はまだ人がまばらだった。
「仕事、クビになりました」
「だろうな」
「……あなたがやったんでしょうね」
森井は何も言わなかった。しかし、こちらを向く。その目は、やはり冷たかった。
「俺はお前を許したわけじゃない」
「え……」
「それに、気付いた」
初めてその時、彼は笑っていた。とても嫌な、笑みだった。
「……お前は所詮便器でしかない、これに固執していた俺って結構馬鹿だったんだなって」
詩音は、固まった。脳内だけ、混乱でせわしなく動いている。
「とはいえ、これで俺の気もすんだ。お前を散々犯して、クソメスでクソ便器だって自覚させて、そんで最後にすがりついた居場所もぶち壊してやった」
「……そんなに、恨んでたの?本番拒否っただけで、しかも昔の、事なのに……」
「お前にとってはそうだろうよ、しょうもない……そんな客いっぱいいるって認識だろうな。でも俺からすれば」
森井は、一歩踏み出した。そして止まらず、歩き出す。詩音の隣で、一瞬だけ止まった。
「……まあ、俺自身が矮小なだけだ。でも一生許せないって思ってたのが、お前のその顔見て解放された。じゃあな、クソメス」
森井は駅員と何か話すと、そのまま改札を出て行った。詩音には、それを追う力は残っていなかった。
電車が到着する。詩音は呆然としながらも、乗り込んだ。中は帰宅ラッシュに被ったのが、満員だった。
触れるのは人の肩、背、足……あの、故意的な手つきはやってこない。詩音の胸や尻に、誰しもが興味を抱いていないかのようだった。
(……なんで……)
森井の言葉も、何もかも。詩音の胸や膣を快感無しに痛めつける。
また誰かの体が触れてきた。そのたび、息を呑む。しかし、誰も……痴漢ではない。いや、それが当たり前なのだ。
大切な部分が焼き切れたかのような感覚だった。だって、こんなにも。
(……触って、ほしい……っ)
それでももう、彼はいない。きっともう二度と会う事もない。
ぼろぼろと涙をこぼす詩音に、車内の人間が気をかけるわけなどなかった。
そして……詩音は、仕事をクビになった。
「本番して、それを掲示板に書かれちゃったんだよね。内容見た?」
「いえ……」
「『りおんはそれで裏引きもしてる』って。いやー、まさか本当にしてるとは思ってないよ?本番くらいなら指名取れるならうちとしても見逃してたしさ。でもさすがに、これだと風評被害まできちゃうから。ごめんね、ほとぼり冷めたら名前変えて……あ、顔も変えてくれるといいかもね」
結局、復帰して2ヶ月足らずでの解雇。しかし思いの外稼げたし、貯金も出来た。しばらくはゆっくり就活出来るだろう。
事務所から私物だけ回収して、駅へと向かう。すると、改札の前に……森井が立っていた。あの強制泊まりコース以来なので、彼を見るのは一週間ぶりだった。
「……前髪、切ったんですね」
詩音の言葉に、森井は何も言わなかった。ただ、よく見えるようになった目で詩音を一瞥だけすると改札をくぐった。詩音も、それに続く。
ホームに到着し、彼の後ろに立つ。電車が来るまで、あと10分。周囲はまだ人がまばらだった。
「仕事、クビになりました」
「だろうな」
「……あなたがやったんでしょうね」
森井は何も言わなかった。しかし、こちらを向く。その目は、やはり冷たかった。
「俺はお前を許したわけじゃない」
「え……」
「それに、気付いた」
初めてその時、彼は笑っていた。とても嫌な、笑みだった。
「……お前は所詮便器でしかない、これに固執していた俺って結構馬鹿だったんだなって」
詩音は、固まった。脳内だけ、混乱でせわしなく動いている。
「とはいえ、これで俺の気もすんだ。お前を散々犯して、クソメスでクソ便器だって自覚させて、そんで最後にすがりついた居場所もぶち壊してやった」
「……そんなに、恨んでたの?本番拒否っただけで、しかも昔の、事なのに……」
「お前にとってはそうだろうよ、しょうもない……そんな客いっぱいいるって認識だろうな。でも俺からすれば」
森井は、一歩踏み出した。そして止まらず、歩き出す。詩音の隣で、一瞬だけ止まった。
「……まあ、俺自身が矮小なだけだ。でも一生許せないって思ってたのが、お前のその顔見て解放された。じゃあな、クソメス」
森井は駅員と何か話すと、そのまま改札を出て行った。詩音には、それを追う力は残っていなかった。
電車が到着する。詩音は呆然としながらも、乗り込んだ。中は帰宅ラッシュに被ったのが、満員だった。
触れるのは人の肩、背、足……あの、故意的な手つきはやってこない。詩音の胸や尻に、誰しもが興味を抱いていないかのようだった。
(……なんで……)
森井の言葉も、何もかも。詩音の胸や膣を快感無しに痛めつける。
また誰かの体が触れてきた。そのたび、息を呑む。しかし、誰も……痴漢ではない。いや、それが当たり前なのだ。
大切な部分が焼き切れたかのような感覚だった。だって、こんなにも。
(……触って、ほしい……っ)
それでももう、彼はいない。きっともう二度と会う事もない。
ぼろぼろと涙をこぼす詩音に、車内の人間が気をかけるわけなどなかった。
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