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詩音編

13。回想の行方

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床を引きずられるせいで、何度も扉や壁にぶつけられる。しかし森井はお構い無しだった。
そうだ、思い出してきた。今までの常連客の中でも……森井は飛び抜けて、面倒な客だった。
無意識なのかは分からないが、女性を見下した言動。そして、本番行為の要求。

(……そうだ、私いつも逃げてた……けど、どうやってたんだっけ)

きっと自分の事だから、適当に笑顔を振りまいていたんだろう。触られる流れで淫乱を発動して、気を逸らせていたのかもしれない。
本番行為を拒んでいた理由は単純で、他の嬢が自分の客にそれを原因に粘着されているのを見たからだ。
ただ、面倒ごとを避けたくてやっていただけだった。本当に軽い気持ちで。

(怖い……)

電車の中で痴漢されているあの時は、単純に快感を享受しているに過ぎなかった。それだけで終わるし、そもそも始まっていたなんて思いもよらなかった。
森井は寝室の扉を開けた。殺風景な部屋に敷かれたベッドフレームの無いマットレスに、詩音を投げつける。

「あうっ」

さっきに比べれば衝撃は無いにしろ、恐怖は揺らがない。森井はすぐさま、覆いかぶさってきた。

「俺が俺だって分からなかったから、またあんなに喘いでたのか?」

否定は出来なかった。しかしそれが、どうもかんに障ったらしい。

「……最後のあたりは、明らかに嫌そうだったもんな。クソメスの分際で、俺を拒みやがって」
「ご、ごめんなさ……」
「また戻んのか?」

膝をスカートの中に入れられ、そのままぐりっと股を押される。そうだ、これもよくやられていた。

「ん、あっ♡」
「戻ってんな。嫌がりながら感じる、最悪なクソメスに」

そのまま服に手をかけられる。客としての順序を無視している割に、いつもと比べその手付きは冷静だった。
それでも、ブラジャーに包まれた巨大な乳房を見ると、また森井の目は歪む。

「……くそっ」

その小さなうめきにつられズボンに視線を向けると、おぞましいほどに大きな尖りが見えた。
どうして、この男は。

(私が嫌いなんだろうに、何でこんなに……)

詩音の心のつぶやきになど気付くわけもなく、森井はズボンとパンツを下ろした。立ちこめる匂いで、洗い立てでないことはよく分かった。

「さっさと、舐めろ」

その命令も、かつてと同じだった。
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