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第50話 理事長の信用の無さを誰も驚かない件――。

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 済みません、タイトル消えてました;;
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 「理事長が、例の物語の関係者とはな……しかも、親子揃って碌でも無いときてる」

 ベルナドット様が、嫌そうに顔を顰めた。
 気性がまっすぐな人だから、理事長やワルステッドのやり口が許せなかったらしい。

 「アリエナイって言えない所が理事長らしいなぁ。暗殺者とも付き合いがあるんだ。奴隷商と仲良しでも不思議とは思わないよ。本当に、先代とは大違いで困っちゃうね?」

 ウォルフ先輩は、最近黒い方が出やすいですね……?
 先代さんとは仲が良かったらしいので、その分、怒り心頭なんだろうなぁ……。ルクスさんは色味こそ違うけれど、先代さんの若い頃にそっくりだそうで、その辺もあって理事長から嫌われているのかもしれないね――と、ウォルフ先輩はそう言った。

 「……ワルステッドの方が優秀で、ルクスの方が凡愚だって聞かされてたんだけどね?」

 ウォルフ先輩には理事長がそう言ったらしい。
 それで、ウォルフ先輩、ワルステッドを見て、この馬鹿より馬鹿ならどうしようも無いな――と関わって来なかったと言う。先代がルクス先輩を養育していたのも初耳だったみたいなんだけど。

 「多分だけど、僕がルクスを気に入ると思ったんだろうね……あの理事長達なら、僕に気に入られたルクスを殺そうとするんじゃ無いかな?何たって僕は『遺産の一つを正当な後継者が現れたら渡す』役があるからね?」

 「頭の痛い話ですわね……」

 ウォルフ先輩の言葉に私は思わずそう呟いていた。
 正当な後継者に遺産を渡す役目の事は理事長達も知ってはいるらしい。けれど、その後継者は誰か、その遺産が何を指すのかを彼等は知らないのだと言う。
 と、言う事は――ウォルフ先輩がルクスさんを気に入ったら、理事長達は遺産を横取りされると考えて、ルクスさんを殺したんじゃ無いかと言うのだ。あながち外れてなさそうな予想に鳥肌が立ってしまった……。

 「無茶苦茶ありそうな話でしょ?」

 黒い笑顔で言うウォルフ先輩に、誰もが口に出さないまでも肯定している事が感じられた。
 理事長の人望の無さよ……。

 「自分の息子ですのにね……」

 「僕が思うに自分の息子だからこそかもね……自分の大嫌いな父親の若い頃にそっくりなんだ。しかも、優秀さを見せつけられて当てつけのように感じているんじゃ無い??もしくは劣等感を刺激されてるのかも。だから、ワルステッドを持ちあげてルクス殿を下に置いて安心してるんでしょ?小心者らしいね」

 私の呟きに答えるように、過激な口調でハッキリと言ったのはエドガー様だ。
 術具関係の研究発表はエドガー様も注目する所なんだとか。毎年欠かさず発表された論文に目を通しているらしい……。将来は自分も研究者としてその発表の壇上に登りたい――それが、エドガー様の夢の一つ。
 ワルステッド名義の論文にも目を通していたらしく、名前だけは知っていたらしい。理事長には期待できないけれど、論文の丁寧な解説や、細やかな観察記録――それらから誠実な人柄を想像して密かに会えるのを楽しみにしていたのに、出て来たのがアレ・・である。
 あの場で怒鳴りたくなるくらいに腹を立てていたらしいけれど、探索の邪魔になる事が明白だったので我慢してたみたい。

 「研究者への正当な評価の機会を奪うとか万死に値するよね!女性に対する態度も酷かったし、理事長と、ワルステッドは滅びればいいよ!!」

 ベルク先生が学会の件を話してから憮然とした表情をエドガー様がしていたのは、憧れの研究者の置かれた状況に納得が出来ないからだったのかもしれない。
 話している内に昨日のイライラも思い出してしまったらしいエドガー様が、ガリガリと万年筆の軸を噛む。イライラした時の癖なのかな?
 その動作を注目されて人前だと言う事に気が付いたエドガー様が、慌てたように万年筆を下に置いた。そのまま何事も無かった振りをしてソッポを向いたので、アルとベルナドット様が苦笑している。
 エリザベス様と私は見無かった事にして微笑みあった。年相応で可愛らしい事だ。当人に言ったら怒ってしまうだろうけど……。

 「……そんなに酷い様子だったのですか?」

 エドガー様の気まずげな様子を見てから、クリス先輩がそう言ってアルの方を見た。

 「女性も留守番組に入れた方が良かったと思うくらいには……」

 「そんな人が、学園の理事長なんですか……」

 諦めるような口調でアルが言えば、ダグ君がそう言って眉を顰めた。
 ウォルフ先輩が、昨日あった理事長とのやり取りを説明すると、クリス先輩とダグ君の顔が段々と真顔になって行った。結果、エリザベス様と私は「「ご心労お察しします」」と二人に言われたのだった。

 「まぁ、徹底してたよ。女性の事は見てた癖に、挨拶する訳でも無い――殿下以外の男は無視だったしねぇ」

 「公爵家の令息と令嬢達には挨拶くらいすると思ったのですがね……」

 ウォルフ先輩の言葉に、ベルク先生が頭が痛そうな顔をしてそう話した。
 昨日は衝撃的な事が多すぎて失念していたけれど、そう言えば、そうだったかも……。
 私達は、学業の一環で行っているのだ。学園の生徒として……普通なら理事長はまずベルク先生に声を掛ける。それから引率のベルク先生が理事長に訪問の挨拶をし、生徒である私達を紹介するべきなのに。
 理事長、ベルク先生の事は完全に無視してたんじゃ無いかな?いないものとして扱ってたと言うか……。多分、そう扱う事で以前あったと言うトラブルの意趣返しのつもりだったのかもしれない。
 それでも、権力志向が強そうだから、ベルナドット様とかにも挨拶しなかったのはやっぱり不思議だけれど……。

 「あぁ、ダメダメ!王太子殿下は流石に歓待するべきだって頭はあるけれど、学生の――親が公爵なだけの子供に頭を下げたくなんか無いんだと思うよ??後、女は従属するもの――つまりは男の添え物としか考えて無いし。だから、不躾に見ても問題無いと思ってるのさ」

 その言葉に皆が引いているのが分かった。
 顔が引きつりそうになるのを頑張って堪える……。そんな考え方で良く、今まで来れたね理事長――お腹の中で何を思おうと勝手だけれど、それを態度や言葉に表すのは貴族として――ううん、大人としてどうなの??
 しかも、その一番悪い所はワルステッドに受け継がれている……。

 「とことん、社交にむかねぇな――」

 「そんな考えしか無いんなら、貴族なんて辞めればイイのにね」

 嘲る様子を隠さなくなったベルナドット様とエドガー様がそう言い合ってる。或る意味、この場にいる全員の心の内を代弁してくれたようなものだ。
 
 「……商売をやっていると、色々なお客様を見ますが――……聞いているだけでも正直、先が無さそうな方ですね」

 「あぁ。そういう感じの客は、最初羽振りが良くても、その内来なくなる……人を踏みつけて平気なヤツは、最後には自分が踏みつけられるんだ……」

 「そうですね。そして、自分が踏みつけられる事を理不尽だと感じて、文句しか言わないんです。私からすれば、厚かましい限りだと思いますがね」

 クリス先輩が、優しげな笑顔を浮かべながら話した言葉に、ダグ君も笑顔で話す。
 笑顔なんだけどなぁ……?
 何だろう、最近みんな笑顔が怖いよ??けど、言わんとする事は理解出来る気がした。他人を踏みつけにして平気だと言う事は、恨みも買いやすいと言う事だ。
 直接的に復讐する人もいるかもしれないし、何かのトラブルで援助や助けが必要になった場合、果たして助けてくれる人はいるだろうか……?そして、自分が踏みつけられる立場になる――と。
 その時に過去を反省できる人物であれば、やり直す事は出来るかもしれないけれど……――クリス先輩が言うようなタイプは、反省もせずに全ての事は周りが悪い――!そう責任転嫁する事で心の安寧を保っているのかもしれない。
 かつて踏みつけた側であったにも関わらす、自分が踏みつけられるのは嫌というクリス先輩がいった『厚かましい限り』の人になってしまうのだろうと思った……。
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 中々話が先に進まず、申し訳ありません……。
 そんな状況ですが、明日は用事があるので更新に来れなさそうです、m(_ _)m
 申し訳ありあせんが、宜しくお願い致します。
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