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10:父娘の涙
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日が落ちた頃に、セガールが帰ってきた。カールは挨拶もそこそこに、セガールを急かして、軍服から楽な私服に着替えさせた。
ホットチョコレートの用意はできている。箱ティッシュも二つ用意した。あとは、腹を割って話し合いをすればいいだけだ。
シェリーが不安なのか、家に帰ってから、ずっとカールのシャツの裾を握っている。
カールがシェリーの痩せた小さな手を握ると、シェリーが不安そうな顔で見上げてきた。カールはシェリーに笑いかけ、ゆるく繋いだ手を振った。
「俺も一緒だから大丈夫」
「うん」
「パパを殴りたいと思ったら、代わりに俺が殴るよー。人を殴り慣れてないと、手首とか痛めちゃうからね!」
「流石に殴りたいなんて思わないわよ」
「そう?」
「うん」
シェリーの顔から、ほんの少しだけ不安や緊張の色が薄れた。
セガールが着替えて居間に戻ってきたので、早速お話し合いの始まりである。
カールはなんとなく軽く咳払いをしてから、口を開いた。
「はい。それでは。父娘で腹割って本気でぶつかり合いのお時間です」
「カール?」
「セガールさん。シェリーにはシェリーで言いたいことがあるし、貴方にだってシェリーに言いたいことがあるでしょう?この際だから、お互い本音をぶっちゃけちゃいましょう。喧嘩になってもいいですし、泣いちゃったら、責任持って後でちゃんと慰めますから」
セガールが戸惑った顔で、カールの隣で俯いているシェリーを見た。
「シェリー。俺に言いたいことがあるのか?」
「……色々ある」
「……そうか……その、俺も、ある」
「……うん」
「どっちから、ぶっちゃけます?」
「私から言う」
「はい。じゃあ、シェリーからで。セガールさんは、とりあえず最後までシェリーの話しを聞いてくださいね。途中で口を挟んだりしたら、俺から鉄拳制裁が下ります」
「分かった」
「……1ヶ月くらい前に、ママが来たの。私のことは愛してるけど、真実の愛を見つけたから、二度と会わないって。ママのこと、大好きだったけど、ママには私はいらないんだって思った」
「…………」
「薄々気づいてたわ。ママと私は同じくらい大好き同士じゃないって。ママには私がいらないんだって。いらないから、捨てたんだって。でも、認めたくなかった。ママが大好きだったから」
「……そうか」
「学校が本当に嫌いなの。『男女』って揶揄ってくる奴らがいるし、ちゃんと授業を受けたいのに、授業中に騒いで授業を妨害する馬鹿もいるし。女の子達にも、あんまり好かれてなくて、仲間に入れてもらえない。私も好きじゃないから、別に無理に仲間に入ろうとは思わないけど。それでも、グループ学習とかある時は、なんか色々しんどい。先生は空気読めてないし、なんか適当だし。揶揄われるのも、仲間に入れてもらえないのも、全部私が悪いのかなって思っちゃう。私はただ私が好きな事をしてるだけのつもりだったのに。勉強も走るのも本を読むのも、本当に好きよ。でも、それは変なんだって。子供のうちは遊ぶもんだし、女の子はズボンなんか穿かないで大人しくしとくもんなんだって。……でも私はそんなの嫌で、毎日学校に行かなきゃいけないのが苦しい」
「…………」
「パパのこと、本当は嫌いじゃないわ。でも、なんかずっとイライラしちゃって、自分でもどうしようもなくて、どうしたらいいのか分かんなくて、それで、その、八つ当たりとかしてた。……その、ごめん」
「いや……話してくれてありがとう」
「シェリー。他に言いたいことはない?」
「今のところは多分ない。全部言った気がする」
「そっか。話してくれてありがとう。じゃあ、次はセガールさんの番です」
「あ、あぁ。……ずっと、リアーナに、何で出て行かれたのか分からなかったんだ。金で困らせたことはないし、初等学校に入学するまでは、子守のセシルさんも来てくれていただろう?不自由だったり、しんどい思いを、できるだけさせないようにとしてきたつもりだった。リアーナとは見合い結婚だったが、俺なりに大事にしていたし、家族だと思ってた。特に、シェリーが生まれてからは。シェリーの事が本当に大事で、でも、リアーナが出ていってから、どう接したらいいのか分からなくなった。母親がいた方がいいのだろうと婚活パーティーに行ったりもしていた。俺がシェリーに望んでいるのは、ただ、幸せに笑ってくれることだけなんだ。でも、お前がどうしたら笑ってくれるのかも分からなくなってしまって。……リアーナが好きな人ができたからって出ていった時、俺は引き止められなかった。仮に引き止めても、元の夫婦には戻れないと思ったから。きっと冷めきった家族になるだけだと思ったから。……あーー、すまん。その、上手く言えない。その、情けない父親ですまない。学校の事も、全然気づいていなかった」
「……別に。だって言ってないもん」
「俺に話してくれなかった理由を聞いてもいいか?」
「……パパ、いつも忙しそうだし。それに、言ってもなんにもならないもの。学校は行かなきゃいけないし、私1人だけで授業を受けるなんてできないし」
「不甲斐ない父親ですまない」
「……私も、その、八つ当たりして、ごめん。カールが早めに病院に連れて行ってくれてなかったら、胃に穴が開いてたかもしれないって、お爺ちゃん先生が言ってた」
「そんなに胃が悪くなってたのか!……そういうことも、気軽に言えないような父親で申し訳無い。……俺は父親失格だな……」
「……別に、失格とかじゃないし。ただ、私が言えなかっただけだし。パパだって、ずっと顔色悪いじゃない」
「あー……まぁ、その、今、胃に穴が開いてて……」
「……大丈夫なの?」
「あ、薬はもらっている」
「そう」
「セガールさん、他に言いたいことはあります?」
「胃が悪かったのなら仕方がなかったんだろうが、食事はちゃんと食べてくれ。本当に心配なんだ。今なんて、もう本当にガリガリじゃないか。シェリーの事がずっと心配で堪らない」
「……うん」
「学校の事も、できたら早めに知りたかった。いや、その、察せなかった俺も鈍くて悪いから、その、話してくれなかった事を責めてる訳じゃないんだ。シェリーが気軽に話せない雰囲気をつくっていたのは、多分俺だろうから。その、シェリー。これだけは信じてほしい。たとえ、リアーナがお前のことをいらなくなったのだとしても、俺は、俺だけはシェリーがいつまでも一番の宝物だし、この世で一番愛している。本当に、何よりも大切なんだ。生まれてきてくれた頃からずっと」
「……うん」
「だから、その……できたら何でも言い合える関係になりたい。本当にお前の幸せだけを願っているんだ。お前が笑って健康でいてくれたら、それだけで俺も幸せになれる。俺は鈍いから、察せないことも多いだろう。どんな小さな事でもいい。何かあったら、いや、何もなくても、俺とお喋りしてほしい」
「うん。……パパ」
「ん?」
「抱っこ」
「おいで」
シェリーがカールの手を離して、向かい側のソファーに座っていたセガールの膝に乗り、セガールに抱きついた。セガールはしっかりとシェリーを抱きしめて、シェリーの頭を撫でながら、シェリーの頭にキスをした。
「……シェリー。話してくれて、ありがとう。心から愛している」
「……うん。パパ。大好きよ」
「うん」
お互いの肩に顔を埋めて、2人は暫くそのままでいた。2人分の鼻を啜る音が聞こえてくる。カールは抱きしめあって泣いている父娘を静かに見守った。
落ち着いたのか、シェリーがセガールの肩から顔を上げて、カールの方を見た。カールは箱ティッシュをセガールに手渡しながら、泣いて鼻の頭や目元が赤くなっているシェリーに笑いかけた。
「ホットチョコレート飲むだろ?温め直してくるよ」
「うん」
「セガールさんもホットチョコレート飲むでしょう?」
「あぁ。ありがとう」
「いえいえ。2人とも鼻かんどいてくださいね」
カールはソファーから立ち上がって、急いで台所に行き、冷めたホットチョコレートを温め直した。お盆にマグカップをのせて、居間に戻れば、シェリーがセガールのすぐ隣に座っていた。セガールが大きな手でシェリーの小さな手を握っている。
マグカップを渡して、甘いホットチョコレートを飲んだら、なんだか2人とも、ほっとしたような顔をした。
まだ目が赤いセガールが、ホットチョコレートを飲みつつ、口を開いた。
「シェリー。学校が嫌なら、学校は暫く休まないか?」
「勉強はしたいわ。好きだもの」
「家庭教師を雇ったらいいんじゃないですか?金持ちの家は、子供を学校に通わせずに、そうしてるところもありますよね」
「あぁ。それがいいな」
「うち、別に金持ちって程じゃないじゃない」
「パパは一応高給取りに入るぞ。管理職だし」
「それに俺が下宿代?みたいなのを入れたら、家庭教師くらい余裕で雇えますよね。元々、いくらかお支払するつもりでしたし。ていうか、お世話になってて、なんもしないのは落ち着かないんですよね。俺」
「もう色々してくれているだろう。金はいらない」
「食費とか、俺がいる間はかなり増えるじゃないですか。危険手当とかついてる分、俺の方が給料いいですよ。2ヶ月後の航海は、予定通りなら1ヶ月くらいの短期のものですし、暫くはこの家にいる方が長いですよ」
「いや、しかしな……」
「実家暮らしの奴だって、家に金を入れるのが普通でしょ。居候させてもらってるんだから、いくらか払うのは当然のことです」
「……じゃあ、下宿の相場くらいで」
「家庭教師代と食費を合わせた分くらい、払いますね」
「それだと相場より高くなる」
「どうでしょ?家庭教師もピンキリでしょうし。明日、2人に余裕があれば、早速午後から斡旋所に行ってみましょうか。一度面接してから雇わないと、シェリーとの相性もありますから」
「……分かった。じゃあ、とりあえず、そういうことで。シェリーもいいか?」
「うん。あ、走る時間は欲しいわ」
「それは俺と一緒に走ろう。朝早くなるが、大丈夫か?」
「頑張るわ」
「夕方は俺と一緒に走ったらいいよね」
「うん」
「じゃあ、とりあえずはそういうことで!まずは2人の体調をよくしながら、気長に前に進んでいきましょう」
「「うん」」
カールは頷いてくれた2人に、ニッと笑いかけた。
なんとか一番大きな山は越えられた気がする。
ホットチョコレートの用意はできている。箱ティッシュも二つ用意した。あとは、腹を割って話し合いをすればいいだけだ。
シェリーが不安なのか、家に帰ってから、ずっとカールのシャツの裾を握っている。
カールがシェリーの痩せた小さな手を握ると、シェリーが不安そうな顔で見上げてきた。カールはシェリーに笑いかけ、ゆるく繋いだ手を振った。
「俺も一緒だから大丈夫」
「うん」
「パパを殴りたいと思ったら、代わりに俺が殴るよー。人を殴り慣れてないと、手首とか痛めちゃうからね!」
「流石に殴りたいなんて思わないわよ」
「そう?」
「うん」
シェリーの顔から、ほんの少しだけ不安や緊張の色が薄れた。
セガールが着替えて居間に戻ってきたので、早速お話し合いの始まりである。
カールはなんとなく軽く咳払いをしてから、口を開いた。
「はい。それでは。父娘で腹割って本気でぶつかり合いのお時間です」
「カール?」
「セガールさん。シェリーにはシェリーで言いたいことがあるし、貴方にだってシェリーに言いたいことがあるでしょう?この際だから、お互い本音をぶっちゃけちゃいましょう。喧嘩になってもいいですし、泣いちゃったら、責任持って後でちゃんと慰めますから」
セガールが戸惑った顔で、カールの隣で俯いているシェリーを見た。
「シェリー。俺に言いたいことがあるのか?」
「……色々ある」
「……そうか……その、俺も、ある」
「……うん」
「どっちから、ぶっちゃけます?」
「私から言う」
「はい。じゃあ、シェリーからで。セガールさんは、とりあえず最後までシェリーの話しを聞いてくださいね。途中で口を挟んだりしたら、俺から鉄拳制裁が下ります」
「分かった」
「……1ヶ月くらい前に、ママが来たの。私のことは愛してるけど、真実の愛を見つけたから、二度と会わないって。ママのこと、大好きだったけど、ママには私はいらないんだって思った」
「…………」
「薄々気づいてたわ。ママと私は同じくらい大好き同士じゃないって。ママには私がいらないんだって。いらないから、捨てたんだって。でも、認めたくなかった。ママが大好きだったから」
「……そうか」
「学校が本当に嫌いなの。『男女』って揶揄ってくる奴らがいるし、ちゃんと授業を受けたいのに、授業中に騒いで授業を妨害する馬鹿もいるし。女の子達にも、あんまり好かれてなくて、仲間に入れてもらえない。私も好きじゃないから、別に無理に仲間に入ろうとは思わないけど。それでも、グループ学習とかある時は、なんか色々しんどい。先生は空気読めてないし、なんか適当だし。揶揄われるのも、仲間に入れてもらえないのも、全部私が悪いのかなって思っちゃう。私はただ私が好きな事をしてるだけのつもりだったのに。勉強も走るのも本を読むのも、本当に好きよ。でも、それは変なんだって。子供のうちは遊ぶもんだし、女の子はズボンなんか穿かないで大人しくしとくもんなんだって。……でも私はそんなの嫌で、毎日学校に行かなきゃいけないのが苦しい」
「…………」
「パパのこと、本当は嫌いじゃないわ。でも、なんかずっとイライラしちゃって、自分でもどうしようもなくて、どうしたらいいのか分かんなくて、それで、その、八つ当たりとかしてた。……その、ごめん」
「いや……話してくれてありがとう」
「シェリー。他に言いたいことはない?」
「今のところは多分ない。全部言った気がする」
「そっか。話してくれてありがとう。じゃあ、次はセガールさんの番です」
「あ、あぁ。……ずっと、リアーナに、何で出て行かれたのか分からなかったんだ。金で困らせたことはないし、初等学校に入学するまでは、子守のセシルさんも来てくれていただろう?不自由だったり、しんどい思いを、できるだけさせないようにとしてきたつもりだった。リアーナとは見合い結婚だったが、俺なりに大事にしていたし、家族だと思ってた。特に、シェリーが生まれてからは。シェリーの事が本当に大事で、でも、リアーナが出ていってから、どう接したらいいのか分からなくなった。母親がいた方がいいのだろうと婚活パーティーに行ったりもしていた。俺がシェリーに望んでいるのは、ただ、幸せに笑ってくれることだけなんだ。でも、お前がどうしたら笑ってくれるのかも分からなくなってしまって。……リアーナが好きな人ができたからって出ていった時、俺は引き止められなかった。仮に引き止めても、元の夫婦には戻れないと思ったから。きっと冷めきった家族になるだけだと思ったから。……あーー、すまん。その、上手く言えない。その、情けない父親ですまない。学校の事も、全然気づいていなかった」
「……別に。だって言ってないもん」
「俺に話してくれなかった理由を聞いてもいいか?」
「……パパ、いつも忙しそうだし。それに、言ってもなんにもならないもの。学校は行かなきゃいけないし、私1人だけで授業を受けるなんてできないし」
「不甲斐ない父親ですまない」
「……私も、その、八つ当たりして、ごめん。カールが早めに病院に連れて行ってくれてなかったら、胃に穴が開いてたかもしれないって、お爺ちゃん先生が言ってた」
「そんなに胃が悪くなってたのか!……そういうことも、気軽に言えないような父親で申し訳無い。……俺は父親失格だな……」
「……別に、失格とかじゃないし。ただ、私が言えなかっただけだし。パパだって、ずっと顔色悪いじゃない」
「あー……まぁ、その、今、胃に穴が開いてて……」
「……大丈夫なの?」
「あ、薬はもらっている」
「そう」
「セガールさん、他に言いたいことはあります?」
「胃が悪かったのなら仕方がなかったんだろうが、食事はちゃんと食べてくれ。本当に心配なんだ。今なんて、もう本当にガリガリじゃないか。シェリーの事がずっと心配で堪らない」
「……うん」
「学校の事も、できたら早めに知りたかった。いや、その、察せなかった俺も鈍くて悪いから、その、話してくれなかった事を責めてる訳じゃないんだ。シェリーが気軽に話せない雰囲気をつくっていたのは、多分俺だろうから。その、シェリー。これだけは信じてほしい。たとえ、リアーナがお前のことをいらなくなったのだとしても、俺は、俺だけはシェリーがいつまでも一番の宝物だし、この世で一番愛している。本当に、何よりも大切なんだ。生まれてきてくれた頃からずっと」
「……うん」
「だから、その……できたら何でも言い合える関係になりたい。本当にお前の幸せだけを願っているんだ。お前が笑って健康でいてくれたら、それだけで俺も幸せになれる。俺は鈍いから、察せないことも多いだろう。どんな小さな事でもいい。何かあったら、いや、何もなくても、俺とお喋りしてほしい」
「うん。……パパ」
「ん?」
「抱っこ」
「おいで」
シェリーがカールの手を離して、向かい側のソファーに座っていたセガールの膝に乗り、セガールに抱きついた。セガールはしっかりとシェリーを抱きしめて、シェリーの頭を撫でながら、シェリーの頭にキスをした。
「……シェリー。話してくれて、ありがとう。心から愛している」
「……うん。パパ。大好きよ」
「うん」
お互いの肩に顔を埋めて、2人は暫くそのままでいた。2人分の鼻を啜る音が聞こえてくる。カールは抱きしめあって泣いている父娘を静かに見守った。
落ち着いたのか、シェリーがセガールの肩から顔を上げて、カールの方を見た。カールは箱ティッシュをセガールに手渡しながら、泣いて鼻の頭や目元が赤くなっているシェリーに笑いかけた。
「ホットチョコレート飲むだろ?温め直してくるよ」
「うん」
「セガールさんもホットチョコレート飲むでしょう?」
「あぁ。ありがとう」
「いえいえ。2人とも鼻かんどいてくださいね」
カールはソファーから立ち上がって、急いで台所に行き、冷めたホットチョコレートを温め直した。お盆にマグカップをのせて、居間に戻れば、シェリーがセガールのすぐ隣に座っていた。セガールが大きな手でシェリーの小さな手を握っている。
マグカップを渡して、甘いホットチョコレートを飲んだら、なんだか2人とも、ほっとしたような顔をした。
まだ目が赤いセガールが、ホットチョコレートを飲みつつ、口を開いた。
「シェリー。学校が嫌なら、学校は暫く休まないか?」
「勉強はしたいわ。好きだもの」
「家庭教師を雇ったらいいんじゃないですか?金持ちの家は、子供を学校に通わせずに、そうしてるところもありますよね」
「あぁ。それがいいな」
「うち、別に金持ちって程じゃないじゃない」
「パパは一応高給取りに入るぞ。管理職だし」
「それに俺が下宿代?みたいなのを入れたら、家庭教師くらい余裕で雇えますよね。元々、いくらかお支払するつもりでしたし。ていうか、お世話になってて、なんもしないのは落ち着かないんですよね。俺」
「もう色々してくれているだろう。金はいらない」
「食費とか、俺がいる間はかなり増えるじゃないですか。危険手当とかついてる分、俺の方が給料いいですよ。2ヶ月後の航海は、予定通りなら1ヶ月くらいの短期のものですし、暫くはこの家にいる方が長いですよ」
「いや、しかしな……」
「実家暮らしの奴だって、家に金を入れるのが普通でしょ。居候させてもらってるんだから、いくらか払うのは当然のことです」
「……じゃあ、下宿の相場くらいで」
「家庭教師代と食費を合わせた分くらい、払いますね」
「それだと相場より高くなる」
「どうでしょ?家庭教師もピンキリでしょうし。明日、2人に余裕があれば、早速午後から斡旋所に行ってみましょうか。一度面接してから雇わないと、シェリーとの相性もありますから」
「……分かった。じゃあ、とりあえず、そういうことで。シェリーもいいか?」
「うん。あ、走る時間は欲しいわ」
「それは俺と一緒に走ろう。朝早くなるが、大丈夫か?」
「頑張るわ」
「夕方は俺と一緒に走ったらいいよね」
「うん」
「じゃあ、とりあえずはそういうことで!まずは2人の体調をよくしながら、気長に前に進んでいきましょう」
「「うん」」
カールは頷いてくれた2人に、ニッと笑いかけた。
なんとか一番大きな山は越えられた気がする。
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