乙女狩り

戸影絵麻

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#11 第3の死④

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 自転車置き場に行くと、チャリは相変わらず壊れたままだった。

 時間が巻き戻ってあたしが生き返っても、他は元のままということか。

 仕方なく、駆け足で大通りに出た。

 腕力はないけど、持久力と脚力には自信がある。

 これでも高校時代は陸上部に居たのだ。

 スレンダーな体形を保つために、休日はたまに走ったりもする。

 橋に差し掛かると、自然に目が河原に行った。

 いた。あの変なやつ。

 釣りでもないのに、土手に腰かけて、身を乗り出して川面を見てる、あのひょろ長い後ろ姿。

 既視感に、なんとなくほっとする。

 でも数秒で、コンクリートの欄干に隠れて見えなくなった。

 橋を渡り切ると、大きな交差点だ。

 ここを横断歩道に沿って斜めに渡ると、いよいよ駅前広場である。

 あたしはジョギングスタイルで信号が変わるのを待ちながら、視線を徐々に上へと上げていった。

 駅前広場の真ん中には、長大なエスカレーターが上り下りと二列あり、駅ビルの二階にじかに行けるようになっている。

 今度はあれを使おう。

 そう、決心を新たにする。

 これまで二回とも、まっすぐコンコースに突っ込んだところを、あの黒いやつに殺されてる。

 ならば、道を変えていったん二階に登り、駅ビルを突っ切って向こう側から下に降りて、裏に出ればいい。

 信号が青になる。

 よし、行こう。

 あたしは覚悟を決め、両のこぶしを握り締めて、駆け出した。
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