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ACT10 淫靡な特訓

#22 リコ⑮

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 おっぱいビームの威力を説明するのは難しい。
 とにかく、その光子の奔流を浴びると、どんな物体でも、分子だか原子だかクォークだかにまで分解して、文字通りこの世から消滅してしまうのである。
 その原理を、地方のFランク商業高校しか出ていないリコに説明しろというのはどだい無理な話で、リコとしては、原理を知らずにスマホを使いこなすように、ただイオに言われるまま、たまにぶっ放すのが習いになっていた。
 今、昆虫怪獣はそのクワガタのような巨大な頭だけが残り、砂浜に鎮座ましましている。
 その上には例のみなしごハッチみたいな野戸珍子が仰向けに伸びていて、まだ死んでいない証拠にかすかに胸を上下させていた。
 リコが怪獣の頭を吹っ飛ばさなかったのは、この改造人間を殺すのが忍びなかったからである。
「おい、起きろ」
 リコはすでに人間に戻っている。
 おっぱいビーム発射と同時にタイムアウトになり、変身が解けたのだ。
「うーん」
 複眼少女が目を覚ます。
 ビキニ下着姿のリコを見上げて、ぽかんと口を開けた。
「お、おまえは…」
「おまえは、じゃない。ノドチンコとやら、きさま、いったいどういうつもりだ? 人の家を朝っぱらからいきなり襲撃しやがって」
「そ、それは…おまえとアリアを拉致して、珍墨彩さまに献上しようと…」
「うちのことはともかく、どうしてアリアを狙う? あんな無力な子どもを追い回して、何が楽しいんだ? 腸詰帝国、いや、その珍墨彩とやらは、何を考えてる?」
 変身した直後であるだけに、体力の消耗が激しかった。
 リコは複眼少女の前にあぐらをかくと、じっとその顔を見つめた。
 複眼の部分を除けば、ノドチンコはまだあどけない顔立ちをしていた。
 年のころは、人間でいえば、高校生くらいだろうか。
「そんなこと、知らない…。あたしは、まだ見習いだから…」
「見習い?」
「そう、見習い改造人間だ」
 屈辱で赤くなった顔を見られまいと、うなだれるノドチンコ。
 そこに、ハルとアリアが、駆けつけてきた。
「リコさま、大丈夫でしたかあ? きゃ、たいへん! 血が出てますよぉ」
「そいつは誰だ。見たところ、怪しいやつだな」
「このくらいの傷、平気さ。それよりこの娘は、ノドチンコ。帝国の改造人間見習いだそうだ」
「改造人間にも見習いがいるのか」
 ハルが意外そうに眉を吊り上げた。
 その時である。
「いるさ。この僕だって、そうだ」
 突然、頭上から声が降ってきた。
「あ、ビュンビュン丸…」
 空を見上げたチンコの頬に朱がさした。
「キモ汁ビュンビュン丸、参上!」
 怪獣の頭の上に、もうひとつ、人影が舞い降りた。
「キモ汁、ビュンビュン丸…?」
 リコのこめかみに、青筋が立つ。
 すっくと立ちあがった。
「あのな」
 くびれた腰に両手を当て、新たな改造人間をにらみつけると、吐き捨てるように言い放つ。
「おまえら、人を馬鹿にしてんのか? いい加減にしろ。変てこな名前ばっか、名乗りやがって!」



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