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#348話 施餓鬼会⑬
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父は半ば意識を失っており、はだけた病衣は血に濡れていた。
「父さん、しっかりしろ! あれは何だったんだ?」
呼びかけても唸り声を上げるだけで、まともな答えは返ってこない。
見ると、左の脇腹に傷があり、そこから出血している。
とりあえず、110番と119番に通報した。
15分か20分ほどで、派手にサイレンを鳴らしながら、パトカーと救急車がやってきた。
都会でなくて幸いだった。
さすが田んぼの中の一軒家。
これほどの騒ぎでも、野次馬はひとりとして現れない。
私は事情聴取で残ることになり、救急車には、眠っているところをたたき起こされた母が同乗して行った。
妹は病気の子供の世話があるので付き添いは無理だということになったのだ。
鑑識官らしき数人が父の寝ていた部屋を調べる隣の仏間で、私は刑事たちの取り調べを受けることになった。
寝たきり老人を、介護に疲れた中年の息子が殺そうとしたー。
などと、状況からして私が疑われても仕方ないところだったが、幸い、そうはならなかった。
「やっぱり野生の獣ですかね」
一通り話し終えると、二人組のうち若い方の刑事が年配の刑事に話しかけた。
「診断の結果を見ないと何とも言えないが、まあ、その可能性はあるな」
難しい顔でメモを覗き込みながら、初老の刑事が答えた。
「野生の獣? 何ですか、それ」
予想外の言葉に思わず突っ込むと、
「最近多いんですよ、正体不明の生き物に襲われたとかいう被害届。最近というか、まあ、きのうからですが」
ますます信じ難い返事が返ってきた。
「いくら田舎だからといって、このあたりにそんな害獣が出たなんて話、これまで聞いたことないですけど」
「ええ、ですが、これも異常気象のせいなのか、ここ数年、全国的に熊の目撃例も増えてますしね。私たちは熊というより、目撃者の話等から、野生の猿みたいな生き物を疑ってるんですが」
「ニホンザルとか、そういうのですか?」
「まあ、そうです」
私は腕組みして考え込んだ。
あれは、ニホンザルではなかった。
シルエットから、はっきりそう思う。
球形の身体に。それを持ち上げる逆関節の4本の長い脚。
一番近いものはといえば、やはり蜘蛛である。
そして…。
信じたくないことだが、ひとつだけ、心当たりがあった。
「猟友会とも相談してみます」
そう言い残して刑事たちが帰ると、私はふと思いついて、台所を覗いてみた。
やっぱり。
またしても不吉な予感が胸の中に膨れ上がる。
もしや、と思い、その足で離れへと向かった。
あり得ない、とは思う。
しかし、最悪の場合・・・。
「父さん、しっかりしろ! あれは何だったんだ?」
呼びかけても唸り声を上げるだけで、まともな答えは返ってこない。
見ると、左の脇腹に傷があり、そこから出血している。
とりあえず、110番と119番に通報した。
15分か20分ほどで、派手にサイレンを鳴らしながら、パトカーと救急車がやってきた。
都会でなくて幸いだった。
さすが田んぼの中の一軒家。
これほどの騒ぎでも、野次馬はひとりとして現れない。
私は事情聴取で残ることになり、救急車には、眠っているところをたたき起こされた母が同乗して行った。
妹は病気の子供の世話があるので付き添いは無理だということになったのだ。
鑑識官らしき数人が父の寝ていた部屋を調べる隣の仏間で、私は刑事たちの取り調べを受けることになった。
寝たきり老人を、介護に疲れた中年の息子が殺そうとしたー。
などと、状況からして私が疑われても仕方ないところだったが、幸い、そうはならなかった。
「やっぱり野生の獣ですかね」
一通り話し終えると、二人組のうち若い方の刑事が年配の刑事に話しかけた。
「診断の結果を見ないと何とも言えないが、まあ、その可能性はあるな」
難しい顔でメモを覗き込みながら、初老の刑事が答えた。
「野生の獣? 何ですか、それ」
予想外の言葉に思わず突っ込むと、
「最近多いんですよ、正体不明の生き物に襲われたとかいう被害届。最近というか、まあ、きのうからですが」
ますます信じ難い返事が返ってきた。
「いくら田舎だからといって、このあたりにそんな害獣が出たなんて話、これまで聞いたことないですけど」
「ええ、ですが、これも異常気象のせいなのか、ここ数年、全国的に熊の目撃例も増えてますしね。私たちは熊というより、目撃者の話等から、野生の猿みたいな生き物を疑ってるんですが」
「ニホンザルとか、そういうのですか?」
「まあ、そうです」
私は腕組みして考え込んだ。
あれは、ニホンザルではなかった。
シルエットから、はっきりそう思う。
球形の身体に。それを持ち上げる逆関節の4本の長い脚。
一番近いものはといえば、やはり蜘蛛である。
そして…。
信じたくないことだが、ひとつだけ、心当たりがあった。
「猟友会とも相談してみます」
そう言い残して刑事たちが帰ると、私はふと思いついて、台所を覗いてみた。
やっぱり。
またしても不吉な予感が胸の中に膨れ上がる。
もしや、と思い、その足で離れへと向かった。
あり得ない、とは思う。
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