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第150話 み~つけた!

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 実家からの帰りで遅い時間になった。
 ようやくマンションに着き、眠そうな4歳の息子を急き立てるようにして、エレベーターに乗った。
 私の住まいは11階である。
 ボタンを押そうとすると、すでに息子の指が伸びていた。
「だめよ! 違う階押しちゃ」
 しかりつけたが、遅かった。
 息子が押したのは6階だ。
 成長期なのか、最近よくある。
 なんでも自分でやりたがり、そのたびいたずらが絶えないのだ。
 悪びれる風もなくニヤニヤしている息子にため息をつき、
「あんたは下がってて」
 その小さな体を後ろに押し込んだところでエレベーターが止まった。
 ドアが開く。
「え?」
 思わず声が出た。
 ドアの向こうは、真っ暗だった。
 目の前に、漆を流したような暗闇が、ただただ広がっているのだ。
 廊下の電気が消えている?
 6階だけ、停電してるのだろうか?
 それにしては、暗すぎた。
 目を凝らしていると、少しずつ、何かが見えてきた。
 ぼんやり浮かび上がってきたのは、不気味な光景だった。
 彼方まで続く、なだらかな丘。
 その頂点に、何かがいる。
 やせこけた、全裸の少年だった。
 丘の上にうずくまって、何か食べている。
 ひっ。
 少年の口元が血にまみれていることに気づき、私は危うく悲鳴を上げそうになった。
 足元にあるのは、腹を割かれた死体。
 少年は、その死体の腹から内臓を掴み出しては、おいしそうにくちゃくちゃ食べているのだ。
 ば、化け物?
 背筋に氷柱を当てられたような気分だった。
 本能的な恐怖に襲われ、私は回数ボタンを連打した。
 早く閉まれ!
 気づかれないうちに、早く!
 がー。
 遅かった。
「あのお兄ちゃん、だあれ?」
 息子が無邪気に問いかけるなり、少年がパッとこちらを振り返ったのだ。
 そして、血だらけの口を三日月形にゆがめるなり、妙によく通る声で、言ったのである。
 ひどくうれしそうに、ただ一言。
「み~つけた!」
 
 
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