149 / 426
第149話 返して
しおりを挟む
初めは大根かと思った。
電柱からぶら下がった電灯の光に照らされて、白くて長いものが、線路際の草むらに落ちていたのである。
が、近づいてみて、すぐに正体に気づいた。
人間の脚だ。
股の付け根あたりで切断された脚が、地中から掘り出されたばかりの大根みたいに、ごろりと転がっている。
おそるおそる手に取ってみた。
ずっしりと重く、まだ温かい。
筋肉は弾力に富み、きめの細かい綺麗な肌をしていた。
切断されて間もないのか、関節は柔らかく、死後硬直は起こっていない。
その手触りに、体の芯が疼いた。
卑猥な動画を見た時とは比べものにならないほど、激しく昏い興奮が込み上げてきたのだ。
間違いない。
これは若い女の脚だ。
近くに踏切があるから、おそらくそこで投身自殺でもしたのだろう。
その際、身体がバラバラになって、片足だけここまで飛んできたというわけだ。
アルバイトで生計を立てる独身の男にとっては、最高のプレゼントだった。
深夜近くで、幸い、周囲に人気はない。
急いでリュックに詰め込み、アパートまで自転車を走らせた。
胸の高鳴りを押さえつつ、部屋に飛び込むと、全裸になって”それ”を風呂場に持ち込んだ。
どうやって使おう。
洗いながら、妄想を膨らませた。
まずは折り曲げて、膝の内側にペニスを挟み、素股というやつを試してみるか。
断面に直接、亀頭を挿入するというのは、どうだろう。
明日は防腐剤を買ってきて、できるだけ長く使えるように加工するのだ…。
鬼畜じみた妄想で頭が爆発しそうだった。
股間では触れただけで漏らしそうなほど、性器が勃起してしまっていた。
血で汚れた部分を洗い終え、いざ行為に及ぼうとした時である。
玄関で、インターホンが鳴った。
無視したけど、いつまでたっても、鳴りやまない。
「くそ、なんだよ、こんな時間に! せっかくいいとこだったのに!」
仕方なく、おざなりにバスタオルで体を拭き、短パンだけ穿いてドアの前に立った。
ーったく、誰だよ。
そう毒づいてドアスコープをのぞいた刹那ー。
俺は凍りついた。
女が立っていた。
水色のワンピースを着た、髪の長い、見たことのない女である。
顔は半分潰れ、ぐちゃぐちゃになっている。
来ている服もボロボロで、あちこちにべっとりと赤茶色の染みがついている。
更にぞっとしたのは、女に右脚がないことがわかった瞬間だった。
「返して」
視神経だけでぶらさがった目玉で俺を恨めしげににらみつけながら、女が言った。
「返してよ。私の脚」
電柱からぶら下がった電灯の光に照らされて、白くて長いものが、線路際の草むらに落ちていたのである。
が、近づいてみて、すぐに正体に気づいた。
人間の脚だ。
股の付け根あたりで切断された脚が、地中から掘り出されたばかりの大根みたいに、ごろりと転がっている。
おそるおそる手に取ってみた。
ずっしりと重く、まだ温かい。
筋肉は弾力に富み、きめの細かい綺麗な肌をしていた。
切断されて間もないのか、関節は柔らかく、死後硬直は起こっていない。
その手触りに、体の芯が疼いた。
卑猥な動画を見た時とは比べものにならないほど、激しく昏い興奮が込み上げてきたのだ。
間違いない。
これは若い女の脚だ。
近くに踏切があるから、おそらくそこで投身自殺でもしたのだろう。
その際、身体がバラバラになって、片足だけここまで飛んできたというわけだ。
アルバイトで生計を立てる独身の男にとっては、最高のプレゼントだった。
深夜近くで、幸い、周囲に人気はない。
急いでリュックに詰め込み、アパートまで自転車を走らせた。
胸の高鳴りを押さえつつ、部屋に飛び込むと、全裸になって”それ”を風呂場に持ち込んだ。
どうやって使おう。
洗いながら、妄想を膨らませた。
まずは折り曲げて、膝の内側にペニスを挟み、素股というやつを試してみるか。
断面に直接、亀頭を挿入するというのは、どうだろう。
明日は防腐剤を買ってきて、できるだけ長く使えるように加工するのだ…。
鬼畜じみた妄想で頭が爆発しそうだった。
股間では触れただけで漏らしそうなほど、性器が勃起してしまっていた。
血で汚れた部分を洗い終え、いざ行為に及ぼうとした時である。
玄関で、インターホンが鳴った。
無視したけど、いつまでたっても、鳴りやまない。
「くそ、なんだよ、こんな時間に! せっかくいいとこだったのに!」
仕方なく、おざなりにバスタオルで体を拭き、短パンだけ穿いてドアの前に立った。
ーったく、誰だよ。
そう毒づいてドアスコープをのぞいた刹那ー。
俺は凍りついた。
女が立っていた。
水色のワンピースを着た、髪の長い、見たことのない女である。
顔は半分潰れ、ぐちゃぐちゃになっている。
来ている服もボロボロで、あちこちにべっとりと赤茶色の染みがついている。
更にぞっとしたのは、女に右脚がないことがわかった瞬間だった。
「返して」
視神経だけでぶらさがった目玉で俺を恨めしげににらみつけながら、女が言った。
「返してよ。私の脚」
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
追っかけ
山吹
ホラー
小説を書いてみよう!という流れになって友達にどんなジャンルにしたらいいか聞いたらホラーがいいと言われたので生まれた作品です。ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる