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第149話 返して
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初めは大根かと思った。
電柱からぶら下がった電灯の光に照らされて、白くて長いものが、線路際の草むらに落ちていたのである。
が、近づいてみて、すぐに正体に気づいた。
人間の脚だ。
股の付け根あたりで切断された脚が、地中から掘り出されたばかりの大根みたいに、ごろりと転がっている。
おそるおそる手に取ってみた。
ずっしりと重く、まだ温かい。
筋肉は弾力に富み、きめの細かい綺麗な肌をしていた。
切断されて間もないのか、関節は柔らかく、死後硬直は起こっていない。
その手触りに、体の芯が疼いた。
卑猥な動画を見た時とは比べものにならないほど、激しく昏い興奮が込み上げてきたのだ。
間違いない。
これは若い女の脚だ。
近くに踏切があるから、おそらくそこで投身自殺でもしたのだろう。
その際、身体がバラバラになって、片足だけここまで飛んできたというわけだ。
アルバイトで生計を立てる独身の男にとっては、最高のプレゼントだった。
深夜近くで、幸い、周囲に人気はない。
急いでリュックに詰め込み、アパートまで自転車を走らせた。
胸の高鳴りを押さえつつ、部屋に飛び込むと、全裸になって”それ”を風呂場に持ち込んだ。
どうやって使おう。
洗いながら、妄想を膨らませた。
まずは折り曲げて、膝の内側にペニスを挟み、素股というやつを試してみるか。
断面に直接、亀頭を挿入するというのは、どうだろう。
明日は防腐剤を買ってきて、できるだけ長く使えるように加工するのだ…。
鬼畜じみた妄想で頭が爆発しそうだった。
股間では触れただけで漏らしそうなほど、性器が勃起してしまっていた。
血で汚れた部分を洗い終え、いざ行為に及ぼうとした時である。
玄関で、インターホンが鳴った。
無視したけど、いつまでたっても、鳴りやまない。
「くそ、なんだよ、こんな時間に! せっかくいいとこだったのに!」
仕方なく、おざなりにバスタオルで体を拭き、短パンだけ穿いてドアの前に立った。
ーったく、誰だよ。
そう毒づいてドアスコープをのぞいた刹那ー。
俺は凍りついた。
女が立っていた。
水色のワンピースを着た、髪の長い、見たことのない女である。
顔は半分潰れ、ぐちゃぐちゃになっている。
来ている服もボロボロで、あちこちにべっとりと赤茶色の染みがついている。
更にぞっとしたのは、女に右脚がないことがわかった瞬間だった。
「返して」
視神経だけでぶらさがった目玉で俺を恨めしげににらみつけながら、女が言った。
「返してよ。私の脚」
電柱からぶら下がった電灯の光に照らされて、白くて長いものが、線路際の草むらに落ちていたのである。
が、近づいてみて、すぐに正体に気づいた。
人間の脚だ。
股の付け根あたりで切断された脚が、地中から掘り出されたばかりの大根みたいに、ごろりと転がっている。
おそるおそる手に取ってみた。
ずっしりと重く、まだ温かい。
筋肉は弾力に富み、きめの細かい綺麗な肌をしていた。
切断されて間もないのか、関節は柔らかく、死後硬直は起こっていない。
その手触りに、体の芯が疼いた。
卑猥な動画を見た時とは比べものにならないほど、激しく昏い興奮が込み上げてきたのだ。
間違いない。
これは若い女の脚だ。
近くに踏切があるから、おそらくそこで投身自殺でもしたのだろう。
その際、身体がバラバラになって、片足だけここまで飛んできたというわけだ。
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深夜近くで、幸い、周囲に人気はない。
急いでリュックに詰め込み、アパートまで自転車を走らせた。
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どうやって使おう。
洗いながら、妄想を膨らませた。
まずは折り曲げて、膝の内側にペニスを挟み、素股というやつを試してみるか。
断面に直接、亀頭を挿入するというのは、どうだろう。
明日は防腐剤を買ってきて、できるだけ長く使えるように加工するのだ…。
鬼畜じみた妄想で頭が爆発しそうだった。
股間では触れただけで漏らしそうなほど、性器が勃起してしまっていた。
血で汚れた部分を洗い終え、いざ行為に及ぼうとした時である。
玄関で、インターホンが鳴った。
無視したけど、いつまでたっても、鳴りやまない。
「くそ、なんだよ、こんな時間に! せっかくいいとこだったのに!」
仕方なく、おざなりにバスタオルで体を拭き、短パンだけ穿いてドアの前に立った。
ーったく、誰だよ。
そう毒づいてドアスコープをのぞいた刹那ー。
俺は凍りついた。
女が立っていた。
水色のワンピースを着た、髪の長い、見たことのない女である。
顔は半分潰れ、ぐちゃぐちゃになっている。
来ている服もボロボロで、あちこちにべっとりと赤茶色の染みがついている。
更にぞっとしたのは、女に右脚がないことがわかった瞬間だった。
「返して」
視神経だけでぶらさがった目玉で俺を恨めしげににらみつけながら、女が言った。
「返してよ。私の脚」
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