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眠れない夜
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アルンフォルトまでは一週間かかる旅になる
この距離をヴィル様は、私の為に行き来してくださっていたのだ
「ヴィル様、ありがとうございます。私の為にご苦労をお掛けしたのですね」
「ん?いや、今はこうして一緒に帰れるのだから、それだけで十分報われたよ」
少し眠そうにしながら微笑んだ
「お疲れのようですね。大丈夫ですか?」
「ああ。ここ最近は出発までにやらなければならない事が多くて、寝不足だったんだ。今日はゆっくり寝れそうだよ」
大きな欠伸をしている
可愛らしく見えて笑みが零れてしまう
「笑ったな?アリー」
「ヴィル様が可愛らしくて」
「ん?何だそれは‥‥アリーの肩を借りるぞ!」
そう言うと、私の隣に座り直し肩に寄りかかった
金色のサラサラな髪がくすぐったい
あっという間に寝息を立てた
よほど疲れているのだろう
私のせいで心配を掛けてしまった蓄積もある
こんな肩で良かったら、頼りないがいくらでも使って欲しい
思わず綺麗な髪を撫でる
寝顔は少年のようだ
断罪式で次期国王としての威厳を見せた顔とは別人に見える
「綺麗なお顔ね‥‥」
思わず見惚れてしまう
ガタンガタンと大きく揺れても眠り続けている
早く宿に着いてゆっくり寝られたら楽だろうに‥‥
私は窓の外を眺めた
次々に変わる景色が新鮮だ
私にとっては念願の外の世界
眠気など全く無い
楽しくて仕方がない
この様な旅が一週間も出来るなんて夢のように幸せだ
外は薄暗くなってきている
もうすぐ宿に着くのだろうか‥‥
そう思って外を眺めていると、大きな湖が見えてきた
サマフォート家の側の湖を懐かしく思う
私は穏やかな湖を見るのが好きだ
とくに月夜の湖は、キラキラと光って私を何度も慰めてくれた事を思い出す
大きな湖にはボートも見える
乗れるのかしら?
そんな事を一人で考えていると、馬車が止まった
湖の側の建物だった
キーラ様が戸を開ける
「殿下、着きましたよ」
ヴィル様は、まだ起きない
「お疲れのようです」
小声で言うとキーラ様は頷いた
「ここ最近は、あまり寝る時間が無かったようです」
と理解を示したものの
「殿下!早く降りてください。中でゆっくりお休みになられてください!」
と大声を出した
「ん?あっ‥‥あぁ」
ヴィル様はまだ眠そうに起きると馬車を降りた
今日の宿は貴族専用だという
貸切の為、客は私達しかいない
皆馬車での移動で疲れていて、夕食を食べると明日に備えて休むことになった
私の部屋はヴィル様の隣で、私の反対隣はサアラの部屋になっている
「アリアンお嬢様、この様に馬車で出掛けるのは初めてですから、お疲れでしょう?お体は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。サアラこそ大丈夫?」
「私は体力には自信がありますから、まだまだ平気ですよ!湯浴みで疲れを取ってからお休みください。今準備致します」
「ええ、ありがとう。サアラも疲れているのにごめんなさい」
「いいえ、私はお手伝い出来る事が生き甲斐ですから」
お任せくださいと笑って手を握った
本当に頼もしい侍女で、私は甘えてばかりだ
湯浴みを終え部屋に戻るところでヴィル様の部屋の戸が開いた
ヴィル様は欠伸が止まらないほど眠そうで
「アリー、先に寝るよ。アリーも早く寝って疲れを取るんだよ」
「はい。おやすみなさい。ヴィル様」
部屋に入りあっという間に寝てしまった
「殿下もお疲れの様ですね」
そう言うサアラも瞼が重くなっている
「さぁ早く寝ましょう。明日もあるのだからサアラもゆっくり休んでちょうだい」
「はい、お嬢様。では失礼致します」
サアラと別れ自分の部屋のベッドに腰掛けた
私は‥‥というと眠くない
実は馬車でこんなに色々な所が見れている事が嬉しくて疲れなど全く感じていない
離宮に閉じ籠っていた私にとっては、生まれて初めての経験だ
眠れるわけがない
楽しすぎるのだ
困ったわ‥‥
側にあった湖を思い出す
静まり返った中をそっと抜け出した
見つかったら怒られてしまうだろう
けれど初めて自由になれた気がして、自分の思う事をしてみたかった
後ろめたい気持ちはあるものの、音を立てないようにそっと建物の外へ出た
外は月が綺麗な夜で空気が澄んでいた
湖の方へ歩いて行く
穏やかでキラキラと光る水面に心が洗われるような気になる
ヴィル様と再会した夜も、満月の湖が見たくて抜け出した事を思い出す
建物の脇にはボートが置いてあった
きっとお天気の良い日にボートに乗って楽しむのだろう
私は朝早く発つからボートに乗る事は叶わない
乗ってみたかったなぁ‥‥
湖の前に立つ
心が落ち着く
そんな時、ガシャッガシャッと何か音が聞こえた‥‥
この距離をヴィル様は、私の為に行き来してくださっていたのだ
「ヴィル様、ありがとうございます。私の為にご苦労をお掛けしたのですね」
「ん?いや、今はこうして一緒に帰れるのだから、それだけで十分報われたよ」
少し眠そうにしながら微笑んだ
「お疲れのようですね。大丈夫ですか?」
「ああ。ここ最近は出発までにやらなければならない事が多くて、寝不足だったんだ。今日はゆっくり寝れそうだよ」
大きな欠伸をしている
可愛らしく見えて笑みが零れてしまう
「笑ったな?アリー」
「ヴィル様が可愛らしくて」
「ん?何だそれは‥‥アリーの肩を借りるぞ!」
そう言うと、私の隣に座り直し肩に寄りかかった
金色のサラサラな髪がくすぐったい
あっという間に寝息を立てた
よほど疲れているのだろう
私のせいで心配を掛けてしまった蓄積もある
こんな肩で良かったら、頼りないがいくらでも使って欲しい
思わず綺麗な髪を撫でる
寝顔は少年のようだ
断罪式で次期国王としての威厳を見せた顔とは別人に見える
「綺麗なお顔ね‥‥」
思わず見惚れてしまう
ガタンガタンと大きく揺れても眠り続けている
早く宿に着いてゆっくり寝られたら楽だろうに‥‥
私は窓の外を眺めた
次々に変わる景色が新鮮だ
私にとっては念願の外の世界
眠気など全く無い
楽しくて仕方がない
この様な旅が一週間も出来るなんて夢のように幸せだ
外は薄暗くなってきている
もうすぐ宿に着くのだろうか‥‥
そう思って外を眺めていると、大きな湖が見えてきた
サマフォート家の側の湖を懐かしく思う
私は穏やかな湖を見るのが好きだ
とくに月夜の湖は、キラキラと光って私を何度も慰めてくれた事を思い出す
大きな湖にはボートも見える
乗れるのかしら?
そんな事を一人で考えていると、馬車が止まった
湖の側の建物だった
キーラ様が戸を開ける
「殿下、着きましたよ」
ヴィル様は、まだ起きない
「お疲れのようです」
小声で言うとキーラ様は頷いた
「ここ最近は、あまり寝る時間が無かったようです」
と理解を示したものの
「殿下!早く降りてください。中でゆっくりお休みになられてください!」
と大声を出した
「ん?あっ‥‥あぁ」
ヴィル様はまだ眠そうに起きると馬車を降りた
今日の宿は貴族専用だという
貸切の為、客は私達しかいない
皆馬車での移動で疲れていて、夕食を食べると明日に備えて休むことになった
私の部屋はヴィル様の隣で、私の反対隣はサアラの部屋になっている
「アリアンお嬢様、この様に馬車で出掛けるのは初めてですから、お疲れでしょう?お体は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。サアラこそ大丈夫?」
「私は体力には自信がありますから、まだまだ平気ですよ!湯浴みで疲れを取ってからお休みください。今準備致します」
「ええ、ありがとう。サアラも疲れているのにごめんなさい」
「いいえ、私はお手伝い出来る事が生き甲斐ですから」
お任せくださいと笑って手を握った
本当に頼もしい侍女で、私は甘えてばかりだ
湯浴みを終え部屋に戻るところでヴィル様の部屋の戸が開いた
ヴィル様は欠伸が止まらないほど眠そうで
「アリー、先に寝るよ。アリーも早く寝って疲れを取るんだよ」
「はい。おやすみなさい。ヴィル様」
部屋に入りあっという間に寝てしまった
「殿下もお疲れの様ですね」
そう言うサアラも瞼が重くなっている
「さぁ早く寝ましょう。明日もあるのだからサアラもゆっくり休んでちょうだい」
「はい、お嬢様。では失礼致します」
サアラと別れ自分の部屋のベッドに腰掛けた
私は‥‥というと眠くない
実は馬車でこんなに色々な所が見れている事が嬉しくて疲れなど全く感じていない
離宮に閉じ籠っていた私にとっては、生まれて初めての経験だ
眠れるわけがない
楽しすぎるのだ
困ったわ‥‥
側にあった湖を思い出す
静まり返った中をそっと抜け出した
見つかったら怒られてしまうだろう
けれど初めて自由になれた気がして、自分の思う事をしてみたかった
後ろめたい気持ちはあるものの、音を立てないようにそっと建物の外へ出た
外は月が綺麗な夜で空気が澄んでいた
湖の方へ歩いて行く
穏やかでキラキラと光る水面に心が洗われるような気になる
ヴィル様と再会した夜も、満月の湖が見たくて抜け出した事を思い出す
建物の脇にはボートが置いてあった
きっとお天気の良い日にボートに乗って楽しむのだろう
私は朝早く発つからボートに乗る事は叶わない
乗ってみたかったなぁ‥‥
湖の前に立つ
心が落ち着く
そんな時、ガシャッガシャッと何か音が聞こえた‥‥
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