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第174話 幼女好きの魔法使い

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 俺たちの妖異の倒し方は、もう定型パターンが出来上がっている。

 まずはグレイちゃんの本来の姿による物理攻撃。

 移動時にグレイベアに乗っていた場合、そのまま妖異に突進して倒してしまう。だがグレイちゃんは、ショゴス等のエンガチョ系妖異に対する攻撃を嫌がる傾向があるのだ。

 その場合、ルカがファイアブレスで妖異を焼き尽くす。それでも倒しきれなかった場合、俺が【幼女化ビーム】を放って妖異を倒す。

 これが基本パターン。

 後は、接敵時の状況や、その時の二人の気分次第でパターンが変化するのだ。

 妖異が単独の場合、討伐は俺まかせだ。二人ともやる気を見せることはほとんどなく、さっさと【幼女化】で妖異を始末して、さっさとグレイベア村に帰ろうとする。

 だが妖異以外に魔族などの敵がいるような場合、途端に二人はノリノリになる。

 今日のショゴタン討伐はその典型的なパターンだ。

 大型のショゴタンの周りには、多く魔族が付き従っていた。

 統一された鎧を着ているところから、どこか大きな組織の部隊なのだろう。もしかするとセイジュウ神聖帝国の部隊かもしれない。

 ショゴタンは、グレイちゃんにとってはエンガチョ系妖異なので、ルカの出番だ。

 グレイベアの頭部に立ったルカは大きな声で口上を上げ始める。

「ふははは! この火竜が守りし領域に土足で踏み入った死者共よ! わらわの怒りに恐れおののくがよい!」

 魔族たちの視線がルカちゃんに集まった。

「ドラゴン変身! とぅ!」

 ルカが大きくジャンプして、空中でくるりと一回転。

 その瞬間、ルカの首元の賢者の石が強烈な輝きを放つ。

 ビカッ!

 光が消えた瞬間、そこには巨大なレッドドラゴンが空中で羽ばたいていた。

「「「ふぁ!?」」」

 突然のドラゴンの出現に、魔族たちが一斉に息を呑み、そのままフリーズした。

 スゥ……。

 ヴフォォォォオオオオオオ!

 巨大な炎がルカの口から吐き出され、一直線にショゴタンに向かう。

 ぐぉおおおお!

 ショゴタンはルカの吐き出す炎を正面に受けながら、ジリジリと俺たちの方へ近づいてきた。その本体は炎によって蒸発しているのか、蒸気を発しつつ徐々に小さくなっている。

 このまま焼き続ければ、そのうちショゴタンは完全に消滅するだろう。だけど、あまり近づかせるのはよろしくない。ショゴタンの触手槍の攻撃は、決して侮るべきではないものだからだ。

 そこで俺は、こっそりと【幼女化ビーム】を放った。

 ビームはルカのファイアブレスに重なるように伸びていき、ショゴタンに命中。

 ボンッ!

 という音は炎の轟音で搔き消されたが、ショゴタンは一瞬で幼女となり、

 ボンッ!

 という音が再びしたときには、ショゴタンは完全に動かなくなっていた。

 ヴフォォォォオオオオオオ!

 ルカのファイアブレスは、ショゴタンを乾いた枝葉のように焼き尽くして行った。

 ショゴタンが消滅すると、ドラゴンの首元から強い光が放たれた。

 その光はグレイベアを持つ包み込み……

 シュッ!

 光が消えた時には、幼女姿のルカとグレイちゃんが立っていた。

「妖異ショゴタン討伐完了! まだドラゴンを恐れぬなら、わらわの前に出でよ!」

「うーっ! うーっ! グレイも受けて立つ! うーっ!」

 既に魔族たちのほとんどが逃げていた。

 残っていた者も、慌てて逃げ始めた。

 逃げる魔族をわざわざ追うようなことはしない。

 もし妖異なら、こうした状況になっても逃げたりしないだろう。奴らは自分たちが有利か不利かなんて判断せず、ただ命を奪うために向ってくるからだ。

 俺たちも、妖異については徹底的に殲滅する。逃がしたりすることはない。

「今回はショゴタン以外は魔族だったみたいだね。もうみんな逃げちゃったよ」

「ふむ。それじゃ、さっさと村に戻るとするかの」

「うーっ! うっ、うっー!」

 これが俺たちの妖異討伐の基本パターン。

 これまで逃してきた魔族たちが、俺たちのことを噂しているせいか、最近では出会い頭に、

「あれはドラゴンだ! 逃げろ!」
「ドラゴンに変身するヤツだ!」
「噂の怪力熊幼女ってアイツのことじゃないか?」 
「幼女好きの魔法使いがいるぞ!」
  
 などと言って、早々に逃げ出す魔族も見かけるようになってきた。

 ……ちょっと待て! 

 幼女好きの魔法使いって俺のことか!?

 誤解にも程があるわ! 

 幼女に対する面倒見はかなり良い方なのは確かだが、俺自身は幼女好きなんかじゃないからな!

 というか、どちらかというと幼女というか子供なんてウザイとか思ってる方だから!

 ひたすらご機嫌取ったり、飽きるまで一緒に遊ばされたり、好き放題遊び終わった後片付けをさせたりさせられたり、夜のトイレに起こされたり、食事の世話させられたり、寝るまで際限なくお話を強要されたり、熱が出たり、お腹を壊したりしたら、お父さんお母さんの代わりに薬師のところに連れて行ったり、あれ? 俺って皇帝じゃなかった? 皇帝の仕事って子守だっけ?とか自問自答する日々! もうね、もうね、もうねもうね、とにかく大変なんだわ!

 そんな俺を幼女好きとか!

 そんなこと抜かしやがった魔族を地の果てまで追いかけて掴まえて、

「俺のロリコン下限ラインは、二次元駆逐艦までだから!」

 と叫んでやりたい。

 いや、

 叫んでやる!

(ココロ:ギルティ!)

(シリル:ギルティですね)

 ホワイ!?

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