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第80話 私立白百合学園1

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 俺は南浩二みなみこうじ[削除済み]歳。私立白百合学園の二年生だ。
元々女学校だったこの学園は将来的に共学へ移行するために、今年から各学年に少数の男子生徒を編入させている。

 俺はこの学園に近い共学に通っていたのだが、白百合学園の学園長であり叔母である小夜子さんに頼まれて、今年の春からこの学校に通うことになった。

「お兄ちゃん! 待ってよー! わたしを置いて先に行くなんて酷いよー! ぷんぷん!」

 この金髪ツインテールの美少女は妹のティア。この学園の1年生だ。本人には内緒なんだけど、ティアとは血がつながっていない。

 もちろん俺はティアのことを本当の妹と思っているけれど、最近の過度なスキンシップにはちょっと頭を抱えてしまうところがある。

「あら南さん、ごきげんよう! あら、南さん、タイが曲がっていてよ」

「し、白羽鳥会長! お、おはようございます! お、お兄ちゃん! か、会長さんにタイを直してもらっちゃたよぉ! ティアもう一生これ洗わない!」

「いや、洗えよ?」

「ふふっ、相変わらずお二人とも仲がよろしいことで、微笑ましい限りですわね」

 この長い黒髪に切れ長の瞳が美しい大和撫子は白羽鳥静乃。白羽鳥財閥の娘であり、家柄良し、成績良し、性格良し、そして学園三大アイドルのトップに立つと言われている完璧美少女だ。

「ふぁぁぁ、会長と南くんが一緒に並んで歩いているわ」

「素敵! 二人はお付き合いされているのかしら?」

「ほわわぁ、朝から良いものを見れましたわ。今日寝れるわー」

 俺たちを遠巻きに見守る女生徒たちからそんな声が聞こえてくる。

「うふふ。みなさん、わたくしたちのことが気になるようですわね」

「そ、そうっすね」

「わたくしとしては、南くんがわたくしのことをどう思ってくださっているのか、それだけにしか興味はありませんけど」

「へっ!?」

「ちょっ、会長さん! 会長さんのことは大好きだけど、お兄ちゃんは渡せませんから!」

 ギュッ!

「ちょっ、ティア! くっつぎ過ぎだ! む、むむむ胸があたた、当たってるから!」

「ふふっ、昔と比べたら成長したでしょ?」

「あらっ、わたくしもティアさんのことは大好きですけれど、南くんのことは譲れませんわ!」

 ギュッ!

「ほわ! ちょ、会長!?」

「ふふふ。わざと当ててますのよ?」

 白羽鳥会長の目が艶っぽく光る。会長の豊かなバストがお胸が柔らかいのが、お、お、俺の腕に!

「「「キャァァァ!」」」

 周囲からの黄色い声が一層大きくなった。

(ジィィィィィィィィィィィィ)

 ん、誰かが俺のことを見てる? 

 いや、そういやみんなの注目の的だよな。

「浩二ぃぃぃ!」

 ドンッ!

 背中を乱暴に突き飛ばされて、俺は思わず前へつんのめってしまう。

「ちょっ、ハルナ! 痛ぇよ!」
「うっさい! あんたが両手に華で鼻の下伸ばしてるからでしょ!」

「なんで後ろからそんなことがわかんだよ!」
「わかるものはわかるの!」

 こいつは千川ハルナ、俺の幼馴染で同級生だ。赤毛のポニーテールでスレンダーボディにDカップの双丘が盛り上がている。陸上部のエースで後輩たちからも好かれているスポーツ少女だ。

「朝練終わったのか? ご苦労さん」

「う、うん! おはようさん?」

「なんで疑問形?」

「う、うっさい!」

 ハルナが俺の背中を突いてくる。

「南くん、わたくし生徒会での打ち合わせがありますので先に失礼させていただきますわ。ハルナさん、南くんの右腕はお譲りいたしましてよ。ではごきげんよう!」

「ちょっ、会長! 何言ってるのよ! べ、別に浩二の隣なんか……」

 と言いつつ、ハルナは俺の右腕を取って歩き始める。

 ぎゅっ!

「ちょっ、ハルナ! 胸が当たってる!」

「あ、当ててるの!」

(ジィィィィィィィィィィィィィ)

 んー。誰かが俺のことをじっと見ている気がする……。

 いや、気のせいか。みんな見てるしな。

「あっ、ハルナ先輩が南くんと一緒に歩いてる!」
「もしかして、二人はお付き合いしているのかしら?」

「いえ、わたしはティアさんが本命だと思いましてよ」
「あっ、わたくしもそう思ってましたの」

 こうして俺は両手に華の状態で校内へと入っていくのであった。

「ちょ、ティア! お前は一年の教室だろ、なんでうちのクラスにまで付いてきてるんだよ」

「だって! お兄ちゃんとずっと一緒に居たいんだもの!」

「やれやれ、困った妹だな。じゃぁ、俺が教室まで送ってやるからそれでいいか?」

「うん! さすがお兄ちゃん! だーーい好き!」

 俺は妹を一年の教室へと連れて行った。

「きゃぁぁ、南先輩よ!」
「南さんだ!」
「ほわゎわ、カッコイイ!」
「ふぅ、今日寝れるわー」
「結婚したい」

 妹のクラスの女生徒たちが一斉に俺に目を向けて大騒ぎし始めた。

「そ、それじゃな!」

 俺が教室を去ると。背中に女生徒たちの嬌声が聞こえてきた。

 やれやれ、これだから妹を教室に送るのは嫌なんだよな。

 やれやれ。

(ジィィィィィィィィィィィィィ)



 ~ シンイチ ~

「俺は一体何を見せられているんだ?」

 恐らく勇者のものであろう脳カプセル前に装置を設置した俺は、さっきから奇妙な映像が視界に繰り広げられていくのをジィィィと見ていた。

「シンイチ様、大丈夫なのですか?」

 ライラが俺を心配して声を掛けてくれる。

 俺は大丈夫だけど、この勇者は……頭大丈夫なのだろうか?

 ふと、俺は視界に移っているモブキャラ少女と目が合った。黒いおさげ髪に眼鏡という典型的なモブだった。彼女は俺の視線に気が付いて、突然妙なことを口走った。

「この物語に出てくる主人公と女の子はみーんな18歳以上だよ!」 


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