80 / 180
第79話 勇者 vs 悪魔勇者
しおりを挟む
勇者に転生した南浩二は吹雪の中で片膝を付いていた。
「こんなところで素っ裸とか、あの女神はボクを殺す気なのか?」
シュパッ!
南浩二の身体はそのまま横に倒れ込み、
首がコロコロと転がって身体から離れていった。
こうして転生勇者である南浩二は、フィルモサーナ大陸に転生して23秒後に死亡した。
自分を殺したのが何者かも分からないままに。
「本当にこれが勇者なのか?」
茂木聖従が勇者の遺体を足で蹴ってひっくり返す。
「はい。間違いありません。すべてが預言で示された条件や特徴の通りです」
ローブを被った女が聖従の疑問に答えた。
ブーン、ブーン、ドゥーン、ドゥーン、ブーン、ブーン……
吹雪の風音に交じって不気味な音が響き始めた。
蚊を大きくしたような化け物、ミ=ゴの群れが聖従たちを取り囲む。ひときわ図体の大きいドドミ=ゴが聖従の前に進み出る。
「なんだ、こいつら?」
聖従の周囲に12の黒い影が立ち昇り、彼を守るようにミ=ゴに向き合う。
「宇宙《そら》から来た神々の眷属たちです」
ローブの女が答える。
「この世界を正しき姿に戻すために神から遣わされた、聖従様の命に従う輩です」
「ほーん」
聖従がこの奇妙な生物たちに特に関心を抱くことはなかった。
「そんじゃ命令だ。そこの勇者の遺体はここに寝かしとけや」
ドドミ=ゴは微かに頭部を下げ、そのまま空中へと消えていった。ミ=ゴたちもその後を追う様にして去っていく。
「勇者を探しに来たやつらに、ちゃんと遺体を見せてやらねーとなぁ。さっさと帰るぞ、ここは寒くていけねぇ」
悪魔勇者が手をかざすと黒いゲートが出現する。
全員がゲートに入り終わるとそれは消滅した。
~ 回収後 ~
ドドミ=ゴの遺骸が回収された後。
俺たちはフワデラさんが発見した勇者の遺体を検分していた。鋭い刃物で切られたのだろうか、胴体と頭部の切り口は綺麗なものだった。そして勇者の頭部だが……
「頭空っぽだ!」
勇者の後頭部は切り開かれており、その中にあるはずの脳が紛失していた。フワデラさんが決して勇者の悪口を言ったわけではなかったのだ。当たり前か。
「化け物共の仕業でしょうか?」
ライラが尋ねる。
「だろうね。まっ、すぐにハッキリするさ」
俺たちは100均にて500円で販売されている手回しランタンを掲げ、古代神殿の中へと足を進めた。先頭をフラデラさん、俺とライラを案内役である北方の戦士が挟む形で隊列を組む。
神殿内は地下深くへと広がっていた。回廊の天上は高く、廊下は十分な広さが取られていたものの、扉などの大きさからミ=ゴに合わせた作りになっていることが分かる。
「シンイチ殿、こちらへ!」
フワデラさんが扉の前で手招きをしていたので、俺は近づいて部屋の中を覗く。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
部屋の中には大量の『脳が入ったカプセル』が陳列されていた。
ライラはもちろん、案内人の二人の戦士もこの部屋の異様な光景に固まっていた。もちろん俺も固まっていたわけだけど、それは恐怖からだけではない。
明らかにこの世界においてはオーバーテクノロジーである未知の装置で部屋が埋め尽くされていたのだ。それは元日本人である俺から見てもSFの世界だった。
とは言えまったく心当たりがないわけでもない。やはりこのミ=ゴってのはクトゥルフ神話の神話生物そのものなんじゃないか? そう思わざる得ない。
ということは、もしかするとこれらの脳はちゃんと生きているんじゃないか? そう思って俺は部屋をじっくりと観察する。
「ここにある脳はもしかするとまだ生きてるかもしれない」
俺の言葉に全員が驚いて視線を向ける。
「なんだと……」
驚愕するフワデラさんを尻目に、俺は部屋中を見回して観察する。
んーっ。
(ココロチン? 何か分かんない?)
俺は早速ココロチンに頼った。
(わたしも初めて見ますね……前方にある装置が移動できるようですね。脳を観察するものでしょうか)
俺はココロチンが示した装置を適当に選んだ脳カプセルの前に移動させてみた。
ボワーン!
突然、俺の視界に映像が映し出された。一瞬、視界がブレて回復する。
(どうやら、この脳が見ている映像を受信しているようです)
映像は、どこかの農園で果実を収穫している様子が映しだされていた。
装置を少し移動させると映像が途切れる。別の脳の前に移動させると、今度は先程と違う光景が視界に映し出された。
「シンイチ様! 大丈夫ですか?」
ライラが心配そうに尋ねる。
「うん。大丈夫。どうやらこの魔法の仕掛けは、この脳が見ている夢を映し出すみたいなんだ」
「いったい何のためにそんなことを……」
フワデラさんが理解し難いという顔で言った。
「妖異の考えることなんてわかりませんし、知りたくもありませんよ。それより、ここには勇者の脳があるはずです。それを……」
「シンイチ様、あれじゃないでしょうか?」
ライラが指さした先には、他のカプセルとは一回り大きく、他とは違う部品が付いている脳カプセルがあった。
「いかにもって感じだなぁ」
俺は移動装置をそのカプセルの前に持って行った。
「こんなところで素っ裸とか、あの女神はボクを殺す気なのか?」
シュパッ!
南浩二の身体はそのまま横に倒れ込み、
首がコロコロと転がって身体から離れていった。
こうして転生勇者である南浩二は、フィルモサーナ大陸に転生して23秒後に死亡した。
自分を殺したのが何者かも分からないままに。
「本当にこれが勇者なのか?」
茂木聖従が勇者の遺体を足で蹴ってひっくり返す。
「はい。間違いありません。すべてが預言で示された条件や特徴の通りです」
ローブを被った女が聖従の疑問に答えた。
ブーン、ブーン、ドゥーン、ドゥーン、ブーン、ブーン……
吹雪の風音に交じって不気味な音が響き始めた。
蚊を大きくしたような化け物、ミ=ゴの群れが聖従たちを取り囲む。ひときわ図体の大きいドドミ=ゴが聖従の前に進み出る。
「なんだ、こいつら?」
聖従の周囲に12の黒い影が立ち昇り、彼を守るようにミ=ゴに向き合う。
「宇宙《そら》から来た神々の眷属たちです」
ローブの女が答える。
「この世界を正しき姿に戻すために神から遣わされた、聖従様の命に従う輩です」
「ほーん」
聖従がこの奇妙な生物たちに特に関心を抱くことはなかった。
「そんじゃ命令だ。そこの勇者の遺体はここに寝かしとけや」
ドドミ=ゴは微かに頭部を下げ、そのまま空中へと消えていった。ミ=ゴたちもその後を追う様にして去っていく。
「勇者を探しに来たやつらに、ちゃんと遺体を見せてやらねーとなぁ。さっさと帰るぞ、ここは寒くていけねぇ」
悪魔勇者が手をかざすと黒いゲートが出現する。
全員がゲートに入り終わるとそれは消滅した。
~ 回収後 ~
ドドミ=ゴの遺骸が回収された後。
俺たちはフワデラさんが発見した勇者の遺体を検分していた。鋭い刃物で切られたのだろうか、胴体と頭部の切り口は綺麗なものだった。そして勇者の頭部だが……
「頭空っぽだ!」
勇者の後頭部は切り開かれており、その中にあるはずの脳が紛失していた。フワデラさんが決して勇者の悪口を言ったわけではなかったのだ。当たり前か。
「化け物共の仕業でしょうか?」
ライラが尋ねる。
「だろうね。まっ、すぐにハッキリするさ」
俺たちは100均にて500円で販売されている手回しランタンを掲げ、古代神殿の中へと足を進めた。先頭をフラデラさん、俺とライラを案内役である北方の戦士が挟む形で隊列を組む。
神殿内は地下深くへと広がっていた。回廊の天上は高く、廊下は十分な広さが取られていたものの、扉などの大きさからミ=ゴに合わせた作りになっていることが分かる。
「シンイチ殿、こちらへ!」
フワデラさんが扉の前で手招きをしていたので、俺は近づいて部屋の中を覗く。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
部屋の中には大量の『脳が入ったカプセル』が陳列されていた。
ライラはもちろん、案内人の二人の戦士もこの部屋の異様な光景に固まっていた。もちろん俺も固まっていたわけだけど、それは恐怖からだけではない。
明らかにこの世界においてはオーバーテクノロジーである未知の装置で部屋が埋め尽くされていたのだ。それは元日本人である俺から見てもSFの世界だった。
とは言えまったく心当たりがないわけでもない。やはりこのミ=ゴってのはクトゥルフ神話の神話生物そのものなんじゃないか? そう思わざる得ない。
ということは、もしかするとこれらの脳はちゃんと生きているんじゃないか? そう思って俺は部屋をじっくりと観察する。
「ここにある脳はもしかするとまだ生きてるかもしれない」
俺の言葉に全員が驚いて視線を向ける。
「なんだと……」
驚愕するフワデラさんを尻目に、俺は部屋中を見回して観察する。
んーっ。
(ココロチン? 何か分かんない?)
俺は早速ココロチンに頼った。
(わたしも初めて見ますね……前方にある装置が移動できるようですね。脳を観察するものでしょうか)
俺はココロチンが示した装置を適当に選んだ脳カプセルの前に移動させてみた。
ボワーン!
突然、俺の視界に映像が映し出された。一瞬、視界がブレて回復する。
(どうやら、この脳が見ている映像を受信しているようです)
映像は、どこかの農園で果実を収穫している様子が映しだされていた。
装置を少し移動させると映像が途切れる。別の脳の前に移動させると、今度は先程と違う光景が視界に映し出された。
「シンイチ様! 大丈夫ですか?」
ライラが心配そうに尋ねる。
「うん。大丈夫。どうやらこの魔法の仕掛けは、この脳が見ている夢を映し出すみたいなんだ」
「いったい何のためにそんなことを……」
フワデラさんが理解し難いという顔で言った。
「妖異の考えることなんてわかりませんし、知りたくもありませんよ。それより、ここには勇者の脳があるはずです。それを……」
「シンイチ様、あれじゃないでしょうか?」
ライラが指さした先には、他のカプセルとは一回り大きく、他とは違う部品が付いている脳カプセルがあった。
「いかにもって感じだなぁ」
俺は移動装置をそのカプセルの前に持って行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる