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第51話 酋長の帰還

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 村に戻ると、ライラが飛び掛かって俺を地面に押し倒した。

「ぐぼぁ!」

 俺の顔や胸に何度も頬を押し付けてくる。

「ご無事ですね! 死んでないですよね! 幽霊じゃないですよね!」

 ライラは俺の顔を両手で力いっぱいに挟む。

「生きてる! ちゃんと生きてる! いきてえぇえぇぇぇえん」

 俺の上に跨ったままライラは大泣きした。
 
「さっきまでは元気だったが、今は死にそうなんじゃねーかな」

 マーカスがすっとぼけた調子でそんなことを言った。俺の上にいるライラが目を血走らせて叫ぶ。

「あぁもう! もう! もう! もうここでシンイチ様の子どもを作りましょう! ここで! いますぐ! 三人作りましょう!」

 ライラが服を脱ぎだした。というか脱いだ。

「ちょっ、ライラ! マーカス! ネフュー! 止めて止めて!」

 俺が絶叫する。そして手で自分の目を覆う前に、一瞬でライラの見事な下乳とその先端の突起をきっちり脳内録画した。えっと……それはそれ、これはこれ。

 フィーネが慌てて自分のマントをライラに掛けて、俺から引き剥がした。

「と、とりあえず……ただいま!」

「お、おがえり、おがえりなさぃぃぃ」

 泣きながらライラが返事をした。
 
 そりゃ、出発する際の悲壮な空気を思えばライラの涙は理解できなくもない。村の中に入ると、マーカスとヴィルのハーレムチームの女性陣もライラと同じような反応をしていた。ロコもコボルト全員からその帰還を喜ばれていた。

「ステファン、ライラ、留守中、村を守ってくれてありがとう」

「いえ、わたしは何もしていません」

「そうとは思わないけど、まぁ、何もしてないで済んだのならそれが一番だよ」

 俺はキョロキョロと興味深そうに周囲を見渡す幼女(ドラゴン)を抱え上げ肩車する。

「おぉー! 高い! 高いぞ! シンイチ!」

 全滅も本気で覚悟した上での出発だった。

 一緒に付いて行くと暴れるライラを説得するまでに大変な労力が必要だった。

 最後はステファンと女性陣が全員でライラの上に押し乗って動きを止めなきゃならなかった。

 それが今、コボルト村はまたいつもの明るい雰囲気を取り戻し始めていた。

 俺はコボルト村に帰還を果たした。



 ~ 神ネットスーパー ~

(ぴろろん! EONポイントの使用が50万ポイントを越えました。EON提携サービスがシルバーメンバーに上昇、一階フロアの全店舗のご利用が可能となります)

 その日の宴会用の食材を注文し終えると、ココロチンがそんなことを言った。

(つまりどういうこと?)

(そのままの意味です。EONの一階にある全ての店舗でポイントを使用することができますよ)

(なんだと!?)

(ですから……)

(いや、どんな店舗が入ってるのってこと! どんな店があるの!)

(えっと一階では、ドラッグストア、パン屋、マモノナルド、アイスクリームやクレープのお店に、それから女性用の服飾店、100円ショップ、花角うどん、お好み焼き、たい焼き店、花屋さん……クリーニング店もありますがこれはご利用いただけませんね。あと寿司店と、イベントフロアでは北海道フェアが開催中です)

(な、な、な、な!)

「なんだってぇぇぇぇ!」

 俺は腰の高さでぐっと両手を握り締めて絶叫した。

「「「ほわぁあ」」」

 自分たちが欲しい商品を俺がちゃんと注文するか後ろでソワソワと見守っていたマーカスたちが驚いて変な声を挙げる。ちなみに注文画面は彼らには見えない。

 俺は北海道フェアで買い物ができることに感動していたが、それ以上に驚いたことがあった。

(シルバーメンバーってことは、その上はゴールドがあったり?)

(はい。ゴールドメンバーは2階フロアのご利用が可能となります。区役所の出張所がご利用いただけますよ)

(まぁそこはツッコまないよ。もしかしてその上もあったり?)

(プラチナメンバーになると3階フロアのご利用が可能となります)

(プレドライブ5とエルフィンリングのソフトは? 何階?)

(家電は3階ですね。でも電気は送れませんよ?)

(あっ、そうか。本屋は?)

(3階です)

 いや、まぁいい。どうせプラチナメンバーへの道のりは遠いものになるんだろう。焦る必要はない。只今は未来の可能性が広がったことを喜ぶだけで十分だ。

(ココロチン、買い物かごのサイズを大きくしたりはできないの?)

(できません)

 詳しく聞くと、この神スパは天上界でもグレーゾーンのサービスらしい。厳密厳格に天上界の法に照らせば違法側に振れるのだが、現状の買い物ルールの範囲においては片目をつぶって見逃されているのだとか。

(田中様に分かり易いように言えば「パチンコはギャンブルではない」と言い張って厳密な法適用をしないアレと同じです)

(ちょっ! なんか止めて! 伏字にして! でもだいたい分かった)

(逆に現状のルールを越えて無茶をするとこのサービス事態が停止に追い込まれる可能性があります)

(わかった。今のままで問題ない。今後も買い物を頼むよ)

(あっ、でもココロチンとか開発部の皆さんの分は別口じゃだめ? 買い物かごサイズはそのままでいいんだけど、差し入れに1回利用しちゃうとその日の買い物ができないのはちょっと……)

(いいですよ。差し入れ分についてはわたしの買い物かごを使ってポイントだけ引き落とすことにしましょう)

 意外と緩いルールなのかな?

(ちなみにわたしの買い物かごのサイズは田中様のかごの2倍のサイズとなりますので、いっぱい差し入れていただいて大丈夫ですよ)

 意外でもないけどガメツイのかな?

(聞こえてますからね)

(……)

 翌日……。

 俺はマモノナルドのモノノフバーガーを堪能した。

 美味くて懐かしくて涙が出た。

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