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第50話 ドラゴン終了
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~ ドラゴンが見たもの ~
グレイベアを追い出したドラゴンは不思議な集団が巣穴に近づいてくるのを山頂から観察していた。
ポンッ、ポンッ、ポンポンッ。
森の中に軽妙な太鼓の音が響く。
ぷふぃぃぃぃ、ひょろろぉぉぉ。
何とも奇妙な笛の音が響く。
奇妙な集団がドラゴンの巣穴がある森の中を進んでいた。
集団の先頭を歩く黒髪長身のエルフの男が、集団を巣穴へと誘導している。その隣を、銀髪の美しい女エルフが並ぶ。女は周囲の警戒に集中しているようだった。
集団の後尾には、背中に珍しい色の瓶をたくさん詰め込んだ籠を持った屈強な男と、白狼族らしき子供がいた。さらに果物や干し肉を入れた籠や、空の桶を持ったコボルトが五匹いる。
集団の中央には、全身を白く奇妙な紋様が描かれた布で身を包んだ娘が、しずしずと歩いていた。
この奇妙な集団が自分の領域に入ってきたとき、ドラゴンはさっさと喰うべきかブレスで焼き払うべきか悩んだ。
しかし、彼らが自分の元へ供物を持って来ようとしていることに気が付くと、とりあえず受け取ってから考えることにしたのだった。
ぷふぃぃぃぃ、ひょろろぉぉぉ。
中央にいる白い布を被った娘が笛を吹く。おそらくアレを生贄に捧げようというのだろう。白い布には魔術でも掛かっているのか、生贄の臭いをドラゴンから隠している。
ドラゴンは巣穴のある山の頂上に身を伏せて、彼らを観察しているうちに興味を持ってきた。
あの屈強そうな男が籠に背負っている供物は何なのだろう。もしつまらないものだったら、それを理由に全員喰ってやろうとドラゴンは考えた。
巣穴の前に到着すると、先頭のエルフが手を挙げた。集団はそれ以上進むのをやめて、その場に供物を並べ始める。
コボルトが並べた空の桶に、屈強な男は籠に入っていたものを桶の上で傾ける。
とくとくとくとく。
どうやら中身は酒のようだった。ドラゴンの鼻腔に、生まれてこの方一度も嗅いだことのない香しい匂いが漂ってくる。きっとこれまでに味わったことがないほど美味い酒に違いないとドラゴンは確信した。
ぷふぃぃぃぃ、ひょろろぉぉぉ。
なんとも気の抜けた笛の音だったが、ドラゴンは許すことにした。それより何より酒が飲みたい。
ズズッ。
山が地滑りするような音が周囲に響く。太鼓と笛の音が止まり、集団の全員が山の上へと目を向ける。
ズズズッ。
目の前に降りてきたドラゴンの姿に全員が固まった。
最初に動いたのは、全身を白い布を被った娘だった。彼女は酒が満たされた桶を持って、しずしずとドラゴンの前に進み出る。桶の中の酒が波打っているのは、娘の手が震えているからだろう。
折角のお酒がこぼれてしまうではないかとドラゴンはヒヤヒヤした。
「魔物の中の王、大空の覇者たるドラゴン様にぃー。謹んでお供えものを捧げ奉るぅー。山の幸と海の幸ぃ、そして生娘と美味い酒をば捧げさせていただくでごじゃるー」
白い布を被った娘が、妙に甲高い声で変なことを言った。だが言っている意味はわかる。供え物を自分に捧げるということだろう。
それにしてもこの酒は良い匂いがする。
ドラゴンは娘の持つ桶に顔を近づけて、その香りを嗅いだ。これは絶対に美味い! ドラゴンは口を開いて舌先を桶の中に浸した。
「【幼女化ぁぁぁ!】」
娘がドラゴンの舌先に触れて絶叫する。
なんだ!?
……とドラゴンが思ったときには、白い布を被った娘はいつの間にか自分を見下ろすほど大きくなっていた。
「やったぜ!!」
~ シンイチが見たもの ~
俺は帝都指定ゴミ袋50Lで作ったドレスっぽいのを脱ぎ捨てる。
「幼女(ドラゴン)とったどぉぉ!」
そして目の前にいる角付き、羽付き、尻尾付きの幼女を両手で高く抱き上げた。
「「「「「おぉぉぉ!」」」」
その場にいた全員が歓喜に包まれた。
「ど、どういうことじゃ? わ、わらわは一体……」
ドラゴンは事情を掴めずに困惑している。【幼女化】を絶叫する直前に、意識維持オプションを設定していたので、ドラゴンの意識はそのままだった。
ちなみに幼女(ドラゴン)の角や羽、そして尻尾に強力な力は宿っていない。ココロチンによると、元の種族の面影を残しておきたいというだけの、エンジェル・キモオタ立っての趣味《要求》ということだ。
「一体全体どういうことなのじゃ!」
幼女(ドラゴン)が口をハァーッと息をシンイチに向かって吐き掛ける。
「なっ! ファイアブレスが出ないじゃと!?」
「ハハッ、よーし、元気そうでいいね。いいこちゃんだね!」
シンイチが左腕に幼女を抱きなおす。
(ぬっ、こやつ人間のくせにわらわを恐れぬのか……ほわぁ、こやつ腕への収まり具合が妙に心地良いのじゃぁ……)
「……って違うのじゃ! おい貴様、天空の支配者たるわらわに無礼を働くなど許されぬことなのじゃぞ! 喰ってやろうか!」
「あーっ、お酒が飲めなかったからお腹空いちゃってるのかな? はい、あまーい練乳チューブだよー」
シンイチが練乳チューブのキャップを取り、少しだけ練乳を絞りだす。幼女(ドラゴン)は、その匂いを嗅いだ次の瞬間にはシンイチからチューブを奪って、練乳をチューチューと吸っていた。
シンイチが幼女(ドラゴン)の頭を優しくなでると、幼女(ドラゴン)は幸せいっぱいに目を細めて練乳を吸い続けた。
マーカスがパンッと手を打つ。
「ハイ! ドラゴン終了! さぁ、村へ帰るべ!」
「「「「おー」」」」
ここに来た時の緊張は完全に解れ、全員が一斉にだらけた感じで返事を返した。
グレイベアを追い出したドラゴンは不思議な集団が巣穴に近づいてくるのを山頂から観察していた。
ポンッ、ポンッ、ポンポンッ。
森の中に軽妙な太鼓の音が響く。
ぷふぃぃぃぃ、ひょろろぉぉぉ。
何とも奇妙な笛の音が響く。
奇妙な集団がドラゴンの巣穴がある森の中を進んでいた。
集団の先頭を歩く黒髪長身のエルフの男が、集団を巣穴へと誘導している。その隣を、銀髪の美しい女エルフが並ぶ。女は周囲の警戒に集中しているようだった。
集団の後尾には、背中に珍しい色の瓶をたくさん詰め込んだ籠を持った屈強な男と、白狼族らしき子供がいた。さらに果物や干し肉を入れた籠や、空の桶を持ったコボルトが五匹いる。
集団の中央には、全身を白く奇妙な紋様が描かれた布で身を包んだ娘が、しずしずと歩いていた。
この奇妙な集団が自分の領域に入ってきたとき、ドラゴンはさっさと喰うべきかブレスで焼き払うべきか悩んだ。
しかし、彼らが自分の元へ供物を持って来ようとしていることに気が付くと、とりあえず受け取ってから考えることにしたのだった。
ぷふぃぃぃぃ、ひょろろぉぉぉ。
中央にいる白い布を被った娘が笛を吹く。おそらくアレを生贄に捧げようというのだろう。白い布には魔術でも掛かっているのか、生贄の臭いをドラゴンから隠している。
ドラゴンは巣穴のある山の頂上に身を伏せて、彼らを観察しているうちに興味を持ってきた。
あの屈強そうな男が籠に背負っている供物は何なのだろう。もしつまらないものだったら、それを理由に全員喰ってやろうとドラゴンは考えた。
巣穴の前に到着すると、先頭のエルフが手を挙げた。集団はそれ以上進むのをやめて、その場に供物を並べ始める。
コボルトが並べた空の桶に、屈強な男は籠に入っていたものを桶の上で傾ける。
とくとくとくとく。
どうやら中身は酒のようだった。ドラゴンの鼻腔に、生まれてこの方一度も嗅いだことのない香しい匂いが漂ってくる。きっとこれまでに味わったことがないほど美味い酒に違いないとドラゴンは確信した。
ぷふぃぃぃぃ、ひょろろぉぉぉ。
なんとも気の抜けた笛の音だったが、ドラゴンは許すことにした。それより何より酒が飲みたい。
ズズッ。
山が地滑りするような音が周囲に響く。太鼓と笛の音が止まり、集団の全員が山の上へと目を向ける。
ズズズッ。
目の前に降りてきたドラゴンの姿に全員が固まった。
最初に動いたのは、全身を白い布を被った娘だった。彼女は酒が満たされた桶を持って、しずしずとドラゴンの前に進み出る。桶の中の酒が波打っているのは、娘の手が震えているからだろう。
折角のお酒がこぼれてしまうではないかとドラゴンはヒヤヒヤした。
「魔物の中の王、大空の覇者たるドラゴン様にぃー。謹んでお供えものを捧げ奉るぅー。山の幸と海の幸ぃ、そして生娘と美味い酒をば捧げさせていただくでごじゃるー」
白い布を被った娘が、妙に甲高い声で変なことを言った。だが言っている意味はわかる。供え物を自分に捧げるということだろう。
それにしてもこの酒は良い匂いがする。
ドラゴンは娘の持つ桶に顔を近づけて、その香りを嗅いだ。これは絶対に美味い! ドラゴンは口を開いて舌先を桶の中に浸した。
「【幼女化ぁぁぁ!】」
娘がドラゴンの舌先に触れて絶叫する。
なんだ!?
……とドラゴンが思ったときには、白い布を被った娘はいつの間にか自分を見下ろすほど大きくなっていた。
「やったぜ!!」
~ シンイチが見たもの ~
俺は帝都指定ゴミ袋50Lで作ったドレスっぽいのを脱ぎ捨てる。
「幼女(ドラゴン)とったどぉぉ!」
そして目の前にいる角付き、羽付き、尻尾付きの幼女を両手で高く抱き上げた。
「「「「「おぉぉぉ!」」」」
その場にいた全員が歓喜に包まれた。
「ど、どういうことじゃ? わ、わらわは一体……」
ドラゴンは事情を掴めずに困惑している。【幼女化】を絶叫する直前に、意識維持オプションを設定していたので、ドラゴンの意識はそのままだった。
ちなみに幼女(ドラゴン)の角や羽、そして尻尾に強力な力は宿っていない。ココロチンによると、元の種族の面影を残しておきたいというだけの、エンジェル・キモオタ立っての趣味《要求》ということだ。
「一体全体どういうことなのじゃ!」
幼女(ドラゴン)が口をハァーッと息をシンイチに向かって吐き掛ける。
「なっ! ファイアブレスが出ないじゃと!?」
「ハハッ、よーし、元気そうでいいね。いいこちゃんだね!」
シンイチが左腕に幼女を抱きなおす。
(ぬっ、こやつ人間のくせにわらわを恐れぬのか……ほわぁ、こやつ腕への収まり具合が妙に心地良いのじゃぁ……)
「……って違うのじゃ! おい貴様、天空の支配者たるわらわに無礼を働くなど許されぬことなのじゃぞ! 喰ってやろうか!」
「あーっ、お酒が飲めなかったからお腹空いちゃってるのかな? はい、あまーい練乳チューブだよー」
シンイチが練乳チューブのキャップを取り、少しだけ練乳を絞りだす。幼女(ドラゴン)は、その匂いを嗅いだ次の瞬間にはシンイチからチューブを奪って、練乳をチューチューと吸っていた。
シンイチが幼女(ドラゴン)の頭を優しくなでると、幼女(ドラゴン)は幸せいっぱいに目を細めて練乳を吸い続けた。
マーカスがパンッと手を打つ。
「ハイ! ドラゴン終了! さぁ、村へ帰るべ!」
「「「「おー」」」」
ここに来た時の緊張は完全に解れ、全員が一斉にだらけた感じで返事を返した。
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