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第27話 お願いします
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ゴブリン洞窟を殲滅した翌日。俺たちはまず洞窟の中を隅から隅まで探索し、ゴブリンたちが仕掛けた罠などの見落としかないかを徹底的に調べた。
ココロチンのマッピングのおかげで洞窟の構造自体はすぐに把握することができた。当面は洞窟内で寝起きすることになったものの、コボルトたちはどちらかというと外が良いと希望したので、とりあえず家の建設も課題に加わえられた。
ゴブリンたちとの最終決戦が行なわれた洞窟の一番奥まった広い空間は、俺の部屋にしようということで全員の意見が一致した。
しかし、俺はここを会議室兼倉庫兼チーム・ネフューの宿泊所にすることをゴリ押しで決定した。チーム・ネフューは俺たちが冒険者として活動するときの名前だ。冒険者としてはネフューがリーダーになるのでそのまま名前を使った。
なんでそうしたかというと……怖かったんです。
いやね。なんというか、はっきりは見てないけどゴブリン戦でいろいろと転がっているのを見たし、ここで亡くなった人って、俺たちが踏み込む前にもたくさんいたはずだし……。
ゆ、幽霊とか……出そうじゃね?
ちらっとそんな話をマーカスにしたら一笑された。
「そんなこと言ってたら、そこら中、幽霊だらけだろうよ」
脳筋の元傭兵に元日本人の心の機微はわかるまいと判断した俺は、ネフューにもちらっとそんな話をした。
「レイスとかは確かに脅威だけどここにはいないよ。シンイチの心配する彷徨える魂なら、先日の祭詞でみんな女神の元へ行ったはず。だから大丈夫だよ」
「あの祭詞って神力とか浄化の魔法みたいなのが発動してたの?」
「えっ? いや、あれはただの儀礼だよ」
「おうふ」
なんだろう。現代日本に比べたら命が異常に軽い世界だし、いちいち幽霊なんて気にしてられないってことなのか。
俺はEONポイントを使って購入した線香を焚き、塩を撒き、ワンカップ酒を備えて……もったいないので後で呑んで、修学旅行で行った奈良の大仏にこの部屋に彷徨える幽霊たちの供養を願った。
「ふうっ……」
さすがにここまでやればもう大丈夫だろう。心が晴れ晴れとした俺が額の汗を拭うと、ずっと見ていたマーカスが呆れ顔で首を振って言った。
「気が済んだか?」
「おう!」
俺は元気よく返事を返した。
その後、結局マーカスとネフューとヴィルはそれぞれ自分専用の部屋を確保してそこで寝泊まりするようになった。俺は広い会議室兼倉庫兼応接室兼宿泊所の片隅四畳半に自分の空間を確保した。
なんだろう? 俺には一番広い部屋が与えられたはずなのに。前世でデスマーチ時期に会社に泊まり込んでフロアの片隅で寝起きしていたときのこの懐かしい感覚。
今日も俺は、会議で誰かと誰かがあーだこーだ話しているのを聞きながら、倉庫の荷物を出し入れする音を聞きながら、片隅の四畳半空間で眠りに付くのであった。
~ 女奴隷 ~
「あ、あのっ! シンイチ様!」
ハーレム男の女奴隷の娘が突然、俺を呼び止めた。ただでさえ女の子と話すのが苦手な俺は、彼女の声を聞いた瞬間に緊張で身体が固まってしまった。
「はひぃぃ!? ななな何でございましょうか?」
一度睨まれて以降、彼女と目を合わせるのが怖いビビリな俺は斜め後方を見つめながら返事をする。
「どのようなご用件で?」
改めて俺が尋ねると彼女は深々と頭を下げた。
「あの、お礼を言うのが遅れてしまって……。わたしはライラと申します。あの、ご主人様とわたしを助けていただいて本当にありがとうございました」
「えっ、いやいや、頭を上げてください! 他の仲間を助けてあげられなくて、ほんと申し訳ないっていうか……」
俺は何を言っていいのかよくわからないまましゃべっていた。というか、彼女があのハーレム男を「ご主人様」と呼ぶのを聞いて心の奥がチクリと痛むのを感じた。
ご主人様かぁ。
そりゃ奴隷だからご主人様だよな。まだ好きになる前なのに何故かフラれた気分だった。
「あの、それで、実は……お願いがあるのです」
彼女のお願いというのは、ハーレム男のパーティを乗せてきた荷馬車についてだった。馬車は森の中に隠していたのだが、ライラが確認しに行ったら馬が逃がされていたらしい。
街に戻るために馬を貸して欲しいということだった。
彼女はさらに深々と頭を下げて言う。
「ご主人様を治療院に運んだら、必ず馬を連れて戻ってきます」
「いいですよ」
「お礼は必ずお支払いしま……えっ?」
ライラが少し身体を起こして俺を見る。ライラの胸チラが胸チラが……まぶし過ぎる。俺は素知らぬ顔で脳内の録画ボタンを押す。
「今、なんと……?」
「馬を連れてっていいですよ。ちゃんと返してくれればお礼は不要です」
「ありがとうございます! シンイチ様!」
ライラは何度も頭を下げて俺に感謝を繰り返した。主人のためにそんなに一生懸命になれるなんて、なんてええ娘や……。俺は胸チラ録画なんてしてたことを少し反省した。
翌朝、御者台に座ったライラが手を振って街へ戻っていった。荷台には元ハーレム男とゴブリンの捕虜だった4人、そして殲滅したゴブリンたちの耳を詰めた袋を乗せている。
お礼は不要と俺が言ったことを知ったマーカスが、元ハーレム男と交渉してゴブリン討伐クエストの報酬の半分を約束させた。
ライラたちが去った後、マーカスからこの世界で生きるための初歩の教育だと言って「タダ働きはお互いのために良くない。正当な報酬を必ず請求するように」と指導された。
途中からマーカスは酒が入って同じ話を何度も繰り返し始めたので、俺も途中からはマーカスの話を右から左へ流して、脳内でライラの胸チラをリピート再生していた。
ココロチンのマッピングのおかげで洞窟の構造自体はすぐに把握することができた。当面は洞窟内で寝起きすることになったものの、コボルトたちはどちらかというと外が良いと希望したので、とりあえず家の建設も課題に加わえられた。
ゴブリンたちとの最終決戦が行なわれた洞窟の一番奥まった広い空間は、俺の部屋にしようということで全員の意見が一致した。
しかし、俺はここを会議室兼倉庫兼チーム・ネフューの宿泊所にすることをゴリ押しで決定した。チーム・ネフューは俺たちが冒険者として活動するときの名前だ。冒険者としてはネフューがリーダーになるのでそのまま名前を使った。
なんでそうしたかというと……怖かったんです。
いやね。なんというか、はっきりは見てないけどゴブリン戦でいろいろと転がっているのを見たし、ここで亡くなった人って、俺たちが踏み込む前にもたくさんいたはずだし……。
ゆ、幽霊とか……出そうじゃね?
ちらっとそんな話をマーカスにしたら一笑された。
「そんなこと言ってたら、そこら中、幽霊だらけだろうよ」
脳筋の元傭兵に元日本人の心の機微はわかるまいと判断した俺は、ネフューにもちらっとそんな話をした。
「レイスとかは確かに脅威だけどここにはいないよ。シンイチの心配する彷徨える魂なら、先日の祭詞でみんな女神の元へ行ったはず。だから大丈夫だよ」
「あの祭詞って神力とか浄化の魔法みたいなのが発動してたの?」
「えっ? いや、あれはただの儀礼だよ」
「おうふ」
なんだろう。現代日本に比べたら命が異常に軽い世界だし、いちいち幽霊なんて気にしてられないってことなのか。
俺はEONポイントを使って購入した線香を焚き、塩を撒き、ワンカップ酒を備えて……もったいないので後で呑んで、修学旅行で行った奈良の大仏にこの部屋に彷徨える幽霊たちの供養を願った。
「ふうっ……」
さすがにここまでやればもう大丈夫だろう。心が晴れ晴れとした俺が額の汗を拭うと、ずっと見ていたマーカスが呆れ顔で首を振って言った。
「気が済んだか?」
「おう!」
俺は元気よく返事を返した。
その後、結局マーカスとネフューとヴィルはそれぞれ自分専用の部屋を確保してそこで寝泊まりするようになった。俺は広い会議室兼倉庫兼応接室兼宿泊所の片隅四畳半に自分の空間を確保した。
なんだろう? 俺には一番広い部屋が与えられたはずなのに。前世でデスマーチ時期に会社に泊まり込んでフロアの片隅で寝起きしていたときのこの懐かしい感覚。
今日も俺は、会議で誰かと誰かがあーだこーだ話しているのを聞きながら、倉庫の荷物を出し入れする音を聞きながら、片隅の四畳半空間で眠りに付くのであった。
~ 女奴隷 ~
「あ、あのっ! シンイチ様!」
ハーレム男の女奴隷の娘が突然、俺を呼び止めた。ただでさえ女の子と話すのが苦手な俺は、彼女の声を聞いた瞬間に緊張で身体が固まってしまった。
「はひぃぃ!? ななな何でございましょうか?」
一度睨まれて以降、彼女と目を合わせるのが怖いビビリな俺は斜め後方を見つめながら返事をする。
「どのようなご用件で?」
改めて俺が尋ねると彼女は深々と頭を下げた。
「あの、お礼を言うのが遅れてしまって……。わたしはライラと申します。あの、ご主人様とわたしを助けていただいて本当にありがとうございました」
「えっ、いやいや、頭を上げてください! 他の仲間を助けてあげられなくて、ほんと申し訳ないっていうか……」
俺は何を言っていいのかよくわからないまましゃべっていた。というか、彼女があのハーレム男を「ご主人様」と呼ぶのを聞いて心の奥がチクリと痛むのを感じた。
ご主人様かぁ。
そりゃ奴隷だからご主人様だよな。まだ好きになる前なのに何故かフラれた気分だった。
「あの、それで、実は……お願いがあるのです」
彼女のお願いというのは、ハーレム男のパーティを乗せてきた荷馬車についてだった。馬車は森の中に隠していたのだが、ライラが確認しに行ったら馬が逃がされていたらしい。
街に戻るために馬を貸して欲しいということだった。
彼女はさらに深々と頭を下げて言う。
「ご主人様を治療院に運んだら、必ず馬を連れて戻ってきます」
「いいですよ」
「お礼は必ずお支払いしま……えっ?」
ライラが少し身体を起こして俺を見る。ライラの胸チラが胸チラが……まぶし過ぎる。俺は素知らぬ顔で脳内の録画ボタンを押す。
「今、なんと……?」
「馬を連れてっていいですよ。ちゃんと返してくれればお礼は不要です」
「ありがとうございます! シンイチ様!」
ライラは何度も頭を下げて俺に感謝を繰り返した。主人のためにそんなに一生懸命になれるなんて、なんてええ娘や……。俺は胸チラ録画なんてしてたことを少し反省した。
翌朝、御者台に座ったライラが手を振って街へ戻っていった。荷台には元ハーレム男とゴブリンの捕虜だった4人、そして殲滅したゴブリンたちの耳を詰めた袋を乗せている。
お礼は不要と俺が言ったことを知ったマーカスが、元ハーレム男と交渉してゴブリン討伐クエストの報酬の半分を約束させた。
ライラたちが去った後、マーカスからこの世界で生きるための初歩の教育だと言って「タダ働きはお互いのために良くない。正当な報酬を必ず請求するように」と指導された。
途中からマーカスは酒が入って同じ話を何度も繰り返し始めたので、俺も途中からはマーカスの話を右から左へ流して、脳内でライラの胸チラをリピート再生していた。
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