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eスポーツ部誕生
39 記憶
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速人がチュートリアルををやっている間、真紀はモニター上のゲーム画面を見ながら、チラチラと速人も見ていた。
真紀の第一印象どおり、東京に住んでいたころのボーイフレンドによく似ている。大きめの瞳と女の子のように長いまつ毛。それほど高くないもののすっきり通った鼻筋。見れば見るほどよく似ている。
彼の写真は一枚も持っていない。すべては真紀の記憶の中にある姿なので、ひょっとしたら違うかもしれないが、少なくとも今の真紀にはそっくりに見えていた。
それに加え、時おり見せるキーボードのブラインドタッチ。ゲーム中における素早い攻撃を行うときの指の動きは、ボーイフレンドがピアノを演奏していたときによく似ていた。
そんな、ゲーム中の速人の生き生きとした姿を見ていると、真紀が封印していた記憶が徐々に解放されてる感じがした。
速人がチュートリアルを追えると、真紀の方を向き話しかけてきた。
「どう? LoLは好きになった?」
この瞬間だった。真紀の心の奥底にあった記憶が完全に解放され、濃厚な思い出と感情が一気に流れ出してきた。
速人によく似た学生服姿の少年が、笑顔で語りかけてきたイメージが浮かんだ。
そして……
『どう? ピアノは好きになった?』
この言葉と声質が、脳内でリアルに再生された。
真紀は心が震え、涙があふれだしてきた。
突然泣き出した真紀の姿を見た速人は、何が起きているのか分からなかった。
『まさか、今、僕が言った事が原因?』
自分が言った言葉が真紀を傷つけたと思い込み焦った。
「ごめん。真紀さん、僕が何か変なことを言った?」
「違うの。速人君は何も悪くないよ。私の問題なの」
速人は困惑した。どう対応したらよいかまったく見当がつかなかった。
それは翔も同じだった。目の前の女の子が泣いていて、それを助ければ自分の株が上がるとは思ったものの、泣き出した原因に検討がつかず何も声をかけられないでいた。
二人がなすすべなく、しばらく見つめていると、徐々に真紀は落ち着きを取り戻した。
「うん、好きになったよ」
「えっ、えー?!」
速人は突然の告白だと思い、顔を赤らめ、どうしてよいか分からずにいた。
真紀は言葉足らずで伝わらなかったと思い言い直した。
「LoLの事、好きになったよ」
「あ……、そういう事ね」
速人は安堵と共に気恥ずかしい気持ちが入り乱れた。
「え? なんだと思ったの?」
「おみゃあさん、絶対コクられたと思ったんだろう」
翔が速人をからかった。
「ない、ない。今日、出会ったばかりなのにそんな事、思わないよ」
速人が焦りながら否定をした姿を見て、真紀はやっと自分が生んだ誤解を理解した。とたんに恥ずかしくなって真っ赤な顔をして言った。
「違うの、違うの、ごめんね変な言い方して」
真顔に戻った速人は真紀に聞いた。
「ところで、eスポーツ部は入ってくれるの?」
「うん、入る、入る」
そう言い、真紀は大きくうなずいた。
「翔君は?」
「こんな面白そうなゲームができるんだで、もちろん入るがね」
「じゃあ、これで3人の入部は確定だね。あと2名集めるだけで正式な部活になれるよ。頑張ろうね」
3人は顔を合わせ笑顔になった。
真紀の第一印象どおり、東京に住んでいたころのボーイフレンドによく似ている。大きめの瞳と女の子のように長いまつ毛。それほど高くないもののすっきり通った鼻筋。見れば見るほどよく似ている。
彼の写真は一枚も持っていない。すべては真紀の記憶の中にある姿なので、ひょっとしたら違うかもしれないが、少なくとも今の真紀にはそっくりに見えていた。
それに加え、時おり見せるキーボードのブラインドタッチ。ゲーム中における素早い攻撃を行うときの指の動きは、ボーイフレンドがピアノを演奏していたときによく似ていた。
そんな、ゲーム中の速人の生き生きとした姿を見ていると、真紀が封印していた記憶が徐々に解放されてる感じがした。
速人がチュートリアルを追えると、真紀の方を向き話しかけてきた。
「どう? LoLは好きになった?」
この瞬間だった。真紀の心の奥底にあった記憶が完全に解放され、濃厚な思い出と感情が一気に流れ出してきた。
速人によく似た学生服姿の少年が、笑顔で語りかけてきたイメージが浮かんだ。
そして……
『どう? ピアノは好きになった?』
この言葉と声質が、脳内でリアルに再生された。
真紀は心が震え、涙があふれだしてきた。
突然泣き出した真紀の姿を見た速人は、何が起きているのか分からなかった。
『まさか、今、僕が言った事が原因?』
自分が言った言葉が真紀を傷つけたと思い込み焦った。
「ごめん。真紀さん、僕が何か変なことを言った?」
「違うの。速人君は何も悪くないよ。私の問題なの」
速人は困惑した。どう対応したらよいかまったく見当がつかなかった。
それは翔も同じだった。目の前の女の子が泣いていて、それを助ければ自分の株が上がるとは思ったものの、泣き出した原因に検討がつかず何も声をかけられないでいた。
二人がなすすべなく、しばらく見つめていると、徐々に真紀は落ち着きを取り戻した。
「うん、好きになったよ」
「えっ、えー?!」
速人は突然の告白だと思い、顔を赤らめ、どうしてよいか分からずにいた。
真紀は言葉足らずで伝わらなかったと思い言い直した。
「LoLの事、好きになったよ」
「あ……、そういう事ね」
速人は安堵と共に気恥ずかしい気持ちが入り乱れた。
「え? なんだと思ったの?」
「おみゃあさん、絶対コクられたと思ったんだろう」
翔が速人をからかった。
「ない、ない。今日、出会ったばかりなのにそんな事、思わないよ」
速人が焦りながら否定をした姿を見て、真紀はやっと自分が生んだ誤解を理解した。とたんに恥ずかしくなって真っ赤な顔をして言った。
「違うの、違うの、ごめんね変な言い方して」
真顔に戻った速人は真紀に聞いた。
「ところで、eスポーツ部は入ってくれるの?」
「うん、入る、入る」
そう言い、真紀は大きくうなずいた。
「翔君は?」
「こんな面白そうなゲームができるんだで、もちろん入るがね」
「じゃあ、これで3人の入部は確定だね。あと2名集めるだけで正式な部活になれるよ。頑張ろうね」
3人は顔を合わせ笑顔になった。
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