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決戦の朝は、緊張と不安からか、
目覚まし時計より、2時間も早く起きた。

寝てる間も寝てなかった気がする。

今日で、ツバサくんと一緒にいられるのは
最後かもしれない。

だから、めいいっぱいかわいくいたい。

ちょっとメイクをして、髪も巻いた。
あざとい服を着て鏡をのぞく。

映る自分の姿にガッカリする。

いくら着飾っても、自信のなさと不安が
顔に出てる。

雰囲気が重い。

ダメだ!
フラれてもせめて、思い出の中では
かわいくいたい!

気持ちを整えて好きな香りをまとう。

よし、落ち着いてきた。

ナナちゃんも今日はきっと、
おしゃれをして来るはず。

私に対して警戒してるはずだし、
工藤くんも来るんだから。

あの子はきっと、ツバサくんがダメなら
工藤くんに行く気だ。

そりゃ、そうだよね。
あの工藤くんとあんなに仲良くなって、
期待しない訳がない。

アイドル級にイケメンで、
工藤くんを知らない女の子はいない。

ファンクラブだって、1つや2つじゃない。

桜高の今年の入試の倍率は、工藤くんが
受験するとの情報でかなり上がった。
女子はほとんど桜高へ流れたんじゃないかな。
あまりにも女子が偏るから、
男女別の枠が設けられたほどだ。

そんな大人気の工藤くんは
女の子に対して冷たくて無反応。
相手にせず、スルーを貫く冷たい人。
近付くなオーラをまとい、偶然を装って
触れようとしたり、気を引こうと邪魔を
すると、かなりキレられると噂。
そんな工藤くんを守ろうとできた
ファンクラブは、工藤くんに近付く子には
容赦ない。

ファンクラブを恐れた人達は
遠くから、でもチャンスを狙いながら
いつもキリキリしてる。

だから、あの日、桜高の花壇で
工藤くんとナナちゃんが2人で仲良く
話している姿に衝撃を受けた。

あの、工藤くんが、女の子と仲良くしてる。

名前で呼んでる。

自分のシャツを縫わせてる。

女の子に触れている。

彼女かと思った。

それが、ツバサくんのなぁなだったって、
知って、もう許せないって思ったんだ。

はじから男を騙す女!

絶対にツバサくんが好きなのに、
工藤くんとイチャイチャする。

きっと、作戦だよね。

ほら見て、私、
こんなイケメンのアイドルにも
特別扱いされてるの。
ツバサくん、ヤキモチやいて!

そう言っているように見えた!

でも残念。

ツバサくんには、そのままストレートに
伝えないと全く伝わらない。

カマッテちゃん、みたいに
気を引こうとしても無駄。

ナナちゃん、私は伝えたからね。

あなたも欲しいなら、ぶつかってよ。

正々堂々と私と戦ってよ。

抜け駆けはしない。

ちゃんとあなたにも分かるように
宣戦布告をするから。

緊張と興奮に背中を押され、
不安はかき消された。

大きくでも短く息を吐いて、家を出た。










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