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「洗濯機、見に行こうか」

ニコニコしながら、まだ洗濯機の話をする。

「ツバサくん、あんな風に言ったら、
先輩に誤解されるよ。早く違うって、
約束なんてしてないって言いに行こう」

腕を掴んで引っ張った。
でも、ツバサくんは私の手をそっと離す。
そしてまた笑う。

「誤解じゃないよ、
俺が先に話してたんだから、
先輩の用事は今度にしてってだけだよ。
まだ、香澄ちゃんと話したいし」

なんなのかな、分からない。
期待していいのか、いけないのか、
分からない。

普通なら期待していい案件だ。

でも、ツバサくんは違う。

分からない。

先輩が私に何の用事だったのか、
見当がつかないんだ。

あの雰囲気を感じない。
本当にただ、用事があったと思ってる。

もう、

イライラさえ、する。
なんだろう、天然にも程がある。
恋愛に疎すぎる。
人間愛しか信じない人なのかとさえ思える。

「うん?どうしたの?香澄ちゃん。」

この、果てしなく広い笑顔を壊したい!
本気にさせたい!

怒らせたとしても、感情を揺さぶらせたい!

穏やかにふんわりと生きているなんて、
そんなのおかしいから。

野球で悔しかったり、闘争心だったり、
向上心、達成感、好奇心、愛、があるように、
私にも興味を持って欲しい!
夢中になって欲しい!

空気が読めないなら、教えてあげる。

「私はツバサくんと、
友だちにはなりたくない。
ナナちゃんとツバサくんみたいな
関係になるなら、もう、関わらない!」

言い切った。

これで終わりなら、これでいい。
私は友だちになりたい訳じゃない。
恋人になれないなら、
友だちのままで、なんて
そんな風には思えない。
近くにいたら苦しいから。
恋人になれないなら、離れたい!

笑顔から困惑した顔になる。
「なんで?友だちになれないの?」

そこがゴールじゃないからだよ。

「私は友だちにはなりたくないの。
私がツバサくんと仲良くしているのは
友だちになりたいからじゃない。
友だちよりも、もっともっと
近い関係になりたい。
ツバサくんが、好きなの。
彼女になりたいの。
ツバサくんが同じように、
思ってくれないなら、距離を置きたい。
ごめん、わがままなんだと思う。
でも、無理だから。
土曜日、映画の後に、
気持ちを聞かせて欲しい。
それまで考えてみて。
私の事、考えて欲しい。」

初めて見るような、真剣な、でも
困惑して、なんとも言えない顔をしている。

「もし私といて、
楽しいって思ってくれるなら、
恋人として、彼女として付き合えるか
考えて欲しい。
なれないなら、もう私とは話せないよ。
一緒に出かけられないよ。
優しくしないよ。
メールも電話もしないから。」

最後は脅迫みたいになってる。
ちょっと上から目線で恥ずかしけど、
これくらい言わないと分からないから。

断ったら、私を失うって、
そう思って考えて欲しい。

いらないなら、捨てていいから。

このままダラダラ続けたら、
ナナちゃんとの関係みたいになる。
それだけはなりたくない!

そんなのは嫌だから。

「さ、授業はじまるよ、土曜日までは
今まで通りにしようね。」

ゆっくり考えてね。

私、この賭けに絶対に勝つから!
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