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7月8日 ナンパの日
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”これより雑談を始めます。雑談の所要時間は30分、役職等はございません。
それでは始めさせていただきます。
今日の雑談の話題は『ナンパ』です。
アナウンスが止んだ。
俺はメンバーを見回した。
この話題、男子から切り出したらなんか大変そうだな。
経験談語っても、自慢野郎に聞こえるし、ここは女子の愚痴に期待だな。
そもそもナンパなんてしたことないけどな!それにする勇気もないけどな!!
幸い今日もちゃんと男女比は2:2。
女子二人からさぁ!話題を切り出してくれ。
俺の願いが届いたのか、吉川が話を始めてくれた。
「ナンパってさ、なんでかわかんないんだけど、時間のないときに限って絡んでくるんだよね。あれ、家のことが嫌いなのかな」
「それって、時間ないときのほうがイライラして記憶に残りやすいから、時間ないときばっかりって印象になってるんじゃない?」
小坂がノリのいい感じで頭の良さそうなことを言った。
それにマジトーンで返す吉川。
「は?そんなわけ無いじゃん。ちゃんと数値に則ってるんですけど」
場の空気が凍った。
吉川の冷たい厳しい視線が、場を支配下。
沈黙が続く中、吉川が人が変わったかのように笑顔になり再び話し始めた。
「冗談だよ、冗談。最近論破系の人にハマっててさ、今のめっちゃそれっぽくなかった?!確かに、イライラしてるときとかのことしか覚えて無いや。小坂っち賢~い。その見た目とは裏腹にめっちゃ頭いいんだね」
上機嫌な吉川の発言が、どうやら小坂にクリーンヒットしたらしい。
「見た目とは裏腹にってことは、この見た目バカっぽく見えるってこと?…高校進学を気に頑張ってイメチェンしたのに……」
小阪の長めの独り言が、偶然俺の耳に入ってしまった。
イケメンでさらに頭もいいなんていけ好かないなんて思っていたけど、小坂も苦労してんだなぁ。
「それでさ、本題に戻るけど男子二人はナンパしたことあるの?」
変な空気になってしまったところを吉川が、無理やり話題を変えることでどうにかしてくれた…と思う。
「俺はないな。そんな度胸もないし、迷惑になると思って億劫になってしまう」
小阪のあとに話すとオチ役になりそうだったので、少しだけ食い気味で小坂の話すタイミングがないように話し始めた。
小坂は、俺の話をウンウンとうなづきながら聞き、俺の話が終わってからワンテンポ開けて話し始めた。
こういうところがモテる秘訣なんだろうか?
「俺もだいたい一緒かな?勇気がないし、迷惑かけたくない。それに、なんかこうもっといい感じの出会い方したいじゃん。別にナンパっていうものを否定してるわけじゃないよ。ナンパから始まる恋愛があったっていいとは思うよ。だけど、俺はなんかこうもっと漫画っぽいっていうか物語っぽいっていうか、要はめちゃくちゃベタな出会い方をしたいかな」
小阪の配慮の塊みたいな話を聞いて吉川はバッサリ。
「小阪話しが長い。それとめっちゃ童貞っぽい。二人の迷惑かけたくないって姿勢はめちゃくちゃいいと思うよ。ナンパをするようなやつがみんなお前らみたいな良識も常識もあるやつならうちは毎日こんなにもストレスを貯めないのにな!!!」
「わ、私はいいと思うよ、小坂くんの恋愛観?も。私もナンパをしてくる人たちがみんな二人みたいないい人たちだったら、怖い思いしなくて住むのになぁ、とは思うよ」
富田が、小阪をフォローした。
それを聞いて急に小坂が元気になった。
チョロッ。
大丈夫かな?慰めてもらったからって急に小坂が富田さんに惚れたりしてないかな?
吉田が、富田に聞いた。
「富田もナンパされることあるの?」
「うん、たまにあるよ。多分だけど、吉田さんほどではないだろうけど」
「どれくらいされるの?」
「多いときで月二回とかかなぁ。だいたい一月一回あるかないかくらいだよ。吉田さんはどれくらいされてるの?」
「うちは、多分毎週一回以上はナンパされてるよ。うちなら行けるだろって感じで寄ってくる男どもが多いんだよね」
「わかる。私のこといいなって思って声かけてくるひとより、私なら行けるだろって感じで声かけてくるひとがめちゃくちゃ多くて腹が立つよね。私はそんなに安い女じゃないよって気持ちになるよ」
「共感してくれて嬉しいわぁ」
女子の会話になってしまい完全についていけなくなる。
小坂は、合間合間に的確に「うんうん」と言いながら相槌を打っている。
さすがモテる男子は聞き方がうまい。
どうしようこのままじゃ、私だけに会話参加不足の注意のアナウンスが飛んできちゃう。
そうなったらめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
流石に一ヶ月に二回も注意される雑談問題児(自作造語)にはなりたくない。
とりあえず、小阪を真似て相槌を打つ。
さすがに本家みたいにとまではいかないけれど、なかなかうまく相槌が打てたんじゃないだろうか。
何回かギロって吉田に睨まれたけど、初めてだから仕方ない。
それからずっと、女子たちがナンパの愚痴を言って、それにタイミングよく男子が頷く時間だった。
小坂は、今日うなずきパーフェクトゲームだった。一度も吉田に睨まれることなく最後まで切り抜けていった。
俺は4度ほど睨まれてしまった。
不甲斐ない…
俺達のターンが回ってくることはなかった。
まぁ、いっか女子たちが少しだけスッキリしたっていう顔になっているし。
女子の愚痴の嵐が落ち着いた頃アナウンスが流れた。
最近アナウンス調子いいなぁ。
”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、どうぞご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、この場に教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますが、なにとぞご協力よろしくお願いいたします。
週頭なのにどっと疲れた。
土日に養った英気が全部吸われていった。
これから一週間乗り切れるのだろうか。
そもそも、今日一日乗り切れるのだろうか。
ちなみに今日のシチュエーションは駅近の喫茶店だった。
ナンパ成功した後みたいな場所だなぁ、と女子たちの愚痴を聞きながら思ったのは内緒だ。
やっぱり女子って怖い。
ナンパって怖い。
それでは始めさせていただきます。
今日の雑談の話題は『ナンパ』です。
アナウンスが止んだ。
俺はメンバーを見回した。
この話題、男子から切り出したらなんか大変そうだな。
経験談語っても、自慢野郎に聞こえるし、ここは女子の愚痴に期待だな。
そもそもナンパなんてしたことないけどな!それにする勇気もないけどな!!
幸い今日もちゃんと男女比は2:2。
女子二人からさぁ!話題を切り出してくれ。
俺の願いが届いたのか、吉川が話を始めてくれた。
「ナンパってさ、なんでかわかんないんだけど、時間のないときに限って絡んでくるんだよね。あれ、家のことが嫌いなのかな」
「それって、時間ないときのほうがイライラして記憶に残りやすいから、時間ないときばっかりって印象になってるんじゃない?」
小坂がノリのいい感じで頭の良さそうなことを言った。
それにマジトーンで返す吉川。
「は?そんなわけ無いじゃん。ちゃんと数値に則ってるんですけど」
場の空気が凍った。
吉川の冷たい厳しい視線が、場を支配下。
沈黙が続く中、吉川が人が変わったかのように笑顔になり再び話し始めた。
「冗談だよ、冗談。最近論破系の人にハマっててさ、今のめっちゃそれっぽくなかった?!確かに、イライラしてるときとかのことしか覚えて無いや。小坂っち賢~い。その見た目とは裏腹にめっちゃ頭いいんだね」
上機嫌な吉川の発言が、どうやら小坂にクリーンヒットしたらしい。
「見た目とは裏腹にってことは、この見た目バカっぽく見えるってこと?…高校進学を気に頑張ってイメチェンしたのに……」
小阪の長めの独り言が、偶然俺の耳に入ってしまった。
イケメンでさらに頭もいいなんていけ好かないなんて思っていたけど、小坂も苦労してんだなぁ。
「それでさ、本題に戻るけど男子二人はナンパしたことあるの?」
変な空気になってしまったところを吉川が、無理やり話題を変えることでどうにかしてくれた…と思う。
「俺はないな。そんな度胸もないし、迷惑になると思って億劫になってしまう」
小阪のあとに話すとオチ役になりそうだったので、少しだけ食い気味で小坂の話すタイミングがないように話し始めた。
小坂は、俺の話をウンウンとうなづきながら聞き、俺の話が終わってからワンテンポ開けて話し始めた。
こういうところがモテる秘訣なんだろうか?
「俺もだいたい一緒かな?勇気がないし、迷惑かけたくない。それに、なんかこうもっといい感じの出会い方したいじゃん。別にナンパっていうものを否定してるわけじゃないよ。ナンパから始まる恋愛があったっていいとは思うよ。だけど、俺はなんかこうもっと漫画っぽいっていうか物語っぽいっていうか、要はめちゃくちゃベタな出会い方をしたいかな」
小阪の配慮の塊みたいな話を聞いて吉川はバッサリ。
「小阪話しが長い。それとめっちゃ童貞っぽい。二人の迷惑かけたくないって姿勢はめちゃくちゃいいと思うよ。ナンパをするようなやつがみんなお前らみたいな良識も常識もあるやつならうちは毎日こんなにもストレスを貯めないのにな!!!」
「わ、私はいいと思うよ、小坂くんの恋愛観?も。私もナンパをしてくる人たちがみんな二人みたいないい人たちだったら、怖い思いしなくて住むのになぁ、とは思うよ」
富田が、小阪をフォローした。
それを聞いて急に小坂が元気になった。
チョロッ。
大丈夫かな?慰めてもらったからって急に小坂が富田さんに惚れたりしてないかな?
吉田が、富田に聞いた。
「富田もナンパされることあるの?」
「うん、たまにあるよ。多分だけど、吉田さんほどではないだろうけど」
「どれくらいされるの?」
「多いときで月二回とかかなぁ。だいたい一月一回あるかないかくらいだよ。吉田さんはどれくらいされてるの?」
「うちは、多分毎週一回以上はナンパされてるよ。うちなら行けるだろって感じで寄ってくる男どもが多いんだよね」
「わかる。私のこといいなって思って声かけてくるひとより、私なら行けるだろって感じで声かけてくるひとがめちゃくちゃ多くて腹が立つよね。私はそんなに安い女じゃないよって気持ちになるよ」
「共感してくれて嬉しいわぁ」
女子の会話になってしまい完全についていけなくなる。
小坂は、合間合間に的確に「うんうん」と言いながら相槌を打っている。
さすがモテる男子は聞き方がうまい。
どうしようこのままじゃ、私だけに会話参加不足の注意のアナウンスが飛んできちゃう。
そうなったらめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
流石に一ヶ月に二回も注意される雑談問題児(自作造語)にはなりたくない。
とりあえず、小阪を真似て相槌を打つ。
さすがに本家みたいにとまではいかないけれど、なかなかうまく相槌が打てたんじゃないだろうか。
何回かギロって吉田に睨まれたけど、初めてだから仕方ない。
それからずっと、女子たちがナンパの愚痴を言って、それにタイミングよく男子が頷く時間だった。
小坂は、今日うなずきパーフェクトゲームだった。一度も吉田に睨まれることなく最後まで切り抜けていった。
俺は4度ほど睨まれてしまった。
不甲斐ない…
俺達のターンが回ってくることはなかった。
まぁ、いっか女子たちが少しだけスッキリしたっていう顔になっているし。
女子の愚痴の嵐が落ち着いた頃アナウンスが流れた。
最近アナウンス調子いいなぁ。
”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、どうぞご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、この場に教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますが、なにとぞご協力よろしくお願いいたします。
週頭なのにどっと疲れた。
土日に養った英気が全部吸われていった。
これから一週間乗り切れるのだろうか。
そもそも、今日一日乗り切れるのだろうか。
ちなみに今日のシチュエーションは駅近の喫茶店だった。
ナンパ成功した後みたいな場所だなぁ、と女子たちの愚痴を聞きながら思ったのは内緒だ。
やっぱり女子って怖い。
ナンパって怖い。
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