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7月1日 童謡の日
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”これより雑談を始めます。雑談の所要時間は30分、役職等はございません。
それでは始めさせていただきます。
今日の雑談の話題は『童謡』です。
楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスが終わった。
今日のメンバーは、俺から時計回りに矢野、森、芦田。
場所は、図書室の中みたいな片側が本、もう片方が窓の部屋だ。
それで、雑談の内容は『童謡』。
毎度思うけれど、なんでこのアナウンスの内容はこんなにもすっと頭の中で漢字に変換されるのかな?
『どうよう』って聞いたら、『同様』とか、『動揺』とか、話として成立しそうな同音異義語があるのに、何故か一発で『童謡』ってわかっちゃったんだよなぁ。
不思議だなぁ。
まぁ、考えてても仕方ないか。
俺が状況の整理をしながら、適当なことを考えていると、森が話し始めた。
「話題は童謡だってさ、うん。皆って小さいころどの童謡が好きだった?」
そこに間髪入れずに、芦田が会話に入っていく。
「えぇ、私は、犬のおまわりさんかなぁ。お母さんがめっちゃ歌ってくれたから、一緒にいっぱい歌った記憶があるよ」
「犬のおまわりさんかぁ、うん。わんわんわわーんのところとか歌ってて楽しいよね。それに覚えやすいし、うん」
「でしょ?!えぇ、私が最初に覚えた童謡が犬のおまわりさんなんだよね」
「そうなんだ、うん。芦田さんってさ、ちゃんと歌詞の内容分かってて歌ってた派?それとの、なんとなくリズムと音覚えて歌ってた派?」
「えぇ、わたしはね、なんとなくで歌ってたよ。だからさ、最近歌詞を見てみて驚いたんだけど、小さいところを結構覚え間違いしてたんだよね」
「わかる、うん。あるあるだよね、うん。わたしもなんとなくで歌ってたからさぁ、助詞とかを変に覚えてるんだよね」
芦田と森が、お互いに向き合って話し始めてしまった。
適当なこと考えてぼーっとしてたら会話に乗り遅れてしまった。
ヤバいどうしよう。
最後の一人になって、よそよそしく「小さいころどんな童謡聴いてた?」って、最初からの流れを説明しながら聞かれたらちょっと病む自信がある。
よし、タイミングを見計らって会話に入るぞ。
矢野には悪いけれど最後になんてなるものか。
矢野の方も決意の表情みたいなのを浮かべている。
矢野もこの会話に入ろうと決心したのだろう。
俺はものすごく気合を入れた。
なんとなく、次芦田が森に聞き返して、森のターンになってしまいそうだったので、滑り込みで会話に入っていく。
「俺は、赤とんぼが好きだったよ」
「あ、僕も」
少しどもりながらも、矢野が会話に入ってきた。
お、のっかってきたな。これで二人とも最後って感じがしなくなるな。良く乗った矢野。
だけど、お前大丈夫か?
お前ほんとに赤とんぼが好きなのか?
最後一人取り残されないために、無理やり合わせに来たなら赤とんぼはきつくないか?
「田中君も矢野君もなかなか渋いね、うん」
森が、反応してくれた。
森と芦田とで向かい合って話していたのだが、ふたりともこっちの方を向いてくれた。
やっと卓を囲んで話ができるようだ。
「えぇ、ふたりとも同じ歌なんだ、意外だね。ふたりともなんか雰囲気とか全然違うのに」
芦田も俺たちを会話に入れてくれたようだ。
「赤とんぼってなかなか子供にしては渋いと思うんだけど、なんで赤とんぼが好きだったの?」
森から質問が飛んできた。
俺は矢野と目配せをして、先に行っていいかを目で聞いた。
なんとなく先を譲ってくれてそうな気配を感じたので、俺から話し出した。
「俺は、親がこの曲が好きで、親がよく口ずさんでいるのを聴いてたんだ。だから、赤とんぼを聴くと、親と一緒にいる感じがして好きだったんだ」
「へぇ、そうなんだ。思い出だね、うん。矢野君はなんで赤とんぼが好きなの?」
森が、矢野に話を振った。
この雑談の主導権は完全に森が握ったらしい。
森がどんどんと回していく。
矢野大丈夫なのか?
無理やりかぶせただけじゃないのか?
ちょっと不安になってきた。
「僕はね、おばあちゃんが赤とんぼを歌ってくれたから、好きだったんだよ。いつも優しいおばあちゃんが、ゆったりと赤とんぼを歌ってくれて、それがすごく心地よかったんだ。それで僕はね、赤とんぼが好きになって、おばあちゃんに頼んで教えてもらったんだ」
矢野がおばあちゃんの顔でも思い出してるのか、思い出に浸っているような顔で言った。
「みんな、身近な人に歌ってもらってた曲が好きだったんだね、うん」
森が総括みたいなことを言った。
芦田が、話しをまとめて満足げな森に向かって聞いた。
「えぇ、森さんが好きだった童謡って何~?」
「私はね――――」
”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスから意識を戻すと、俺は教室の自分の席についていた。
森さんの好きな童謡はなんだったのだろうか。
ほんのちょっとだけ気になる。
それでは始めさせていただきます。
今日の雑談の話題は『童謡』です。
楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスが終わった。
今日のメンバーは、俺から時計回りに矢野、森、芦田。
場所は、図書室の中みたいな片側が本、もう片方が窓の部屋だ。
それで、雑談の内容は『童謡』。
毎度思うけれど、なんでこのアナウンスの内容はこんなにもすっと頭の中で漢字に変換されるのかな?
『どうよう』って聞いたら、『同様』とか、『動揺』とか、話として成立しそうな同音異義語があるのに、何故か一発で『童謡』ってわかっちゃったんだよなぁ。
不思議だなぁ。
まぁ、考えてても仕方ないか。
俺が状況の整理をしながら、適当なことを考えていると、森が話し始めた。
「話題は童謡だってさ、うん。皆って小さいころどの童謡が好きだった?」
そこに間髪入れずに、芦田が会話に入っていく。
「えぇ、私は、犬のおまわりさんかなぁ。お母さんがめっちゃ歌ってくれたから、一緒にいっぱい歌った記憶があるよ」
「犬のおまわりさんかぁ、うん。わんわんわわーんのところとか歌ってて楽しいよね。それに覚えやすいし、うん」
「でしょ?!えぇ、私が最初に覚えた童謡が犬のおまわりさんなんだよね」
「そうなんだ、うん。芦田さんってさ、ちゃんと歌詞の内容分かってて歌ってた派?それとの、なんとなくリズムと音覚えて歌ってた派?」
「えぇ、わたしはね、なんとなくで歌ってたよ。だからさ、最近歌詞を見てみて驚いたんだけど、小さいところを結構覚え間違いしてたんだよね」
「わかる、うん。あるあるだよね、うん。わたしもなんとなくで歌ってたからさぁ、助詞とかを変に覚えてるんだよね」
芦田と森が、お互いに向き合って話し始めてしまった。
適当なこと考えてぼーっとしてたら会話に乗り遅れてしまった。
ヤバいどうしよう。
最後の一人になって、よそよそしく「小さいころどんな童謡聴いてた?」って、最初からの流れを説明しながら聞かれたらちょっと病む自信がある。
よし、タイミングを見計らって会話に入るぞ。
矢野には悪いけれど最後になんてなるものか。
矢野の方も決意の表情みたいなのを浮かべている。
矢野もこの会話に入ろうと決心したのだろう。
俺はものすごく気合を入れた。
なんとなく、次芦田が森に聞き返して、森のターンになってしまいそうだったので、滑り込みで会話に入っていく。
「俺は、赤とんぼが好きだったよ」
「あ、僕も」
少しどもりながらも、矢野が会話に入ってきた。
お、のっかってきたな。これで二人とも最後って感じがしなくなるな。良く乗った矢野。
だけど、お前大丈夫か?
お前ほんとに赤とんぼが好きなのか?
最後一人取り残されないために、無理やり合わせに来たなら赤とんぼはきつくないか?
「田中君も矢野君もなかなか渋いね、うん」
森が、反応してくれた。
森と芦田とで向かい合って話していたのだが、ふたりともこっちの方を向いてくれた。
やっと卓を囲んで話ができるようだ。
「えぇ、ふたりとも同じ歌なんだ、意外だね。ふたりともなんか雰囲気とか全然違うのに」
芦田も俺たちを会話に入れてくれたようだ。
「赤とんぼってなかなか子供にしては渋いと思うんだけど、なんで赤とんぼが好きだったの?」
森から質問が飛んできた。
俺は矢野と目配せをして、先に行っていいかを目で聞いた。
なんとなく先を譲ってくれてそうな気配を感じたので、俺から話し出した。
「俺は、親がこの曲が好きで、親がよく口ずさんでいるのを聴いてたんだ。だから、赤とんぼを聴くと、親と一緒にいる感じがして好きだったんだ」
「へぇ、そうなんだ。思い出だね、うん。矢野君はなんで赤とんぼが好きなの?」
森が、矢野に話を振った。
この雑談の主導権は完全に森が握ったらしい。
森がどんどんと回していく。
矢野大丈夫なのか?
無理やりかぶせただけじゃないのか?
ちょっと不安になってきた。
「僕はね、おばあちゃんが赤とんぼを歌ってくれたから、好きだったんだよ。いつも優しいおばあちゃんが、ゆったりと赤とんぼを歌ってくれて、それがすごく心地よかったんだ。それで僕はね、赤とんぼが好きになって、おばあちゃんに頼んで教えてもらったんだ」
矢野がおばあちゃんの顔でも思い出してるのか、思い出に浸っているような顔で言った。
「みんな、身近な人に歌ってもらってた曲が好きだったんだね、うん」
森が総括みたいなことを言った。
芦田が、話しをまとめて満足げな森に向かって聞いた。
「えぇ、森さんが好きだった童謡って何~?」
「私はね――――」
”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスから意識を戻すと、俺は教室の自分の席についていた。
森さんの好きな童謡はなんだったのだろうか。
ほんのちょっとだけ気になる。
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