Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六

文字の大きさ
上 下
37 / 193

2日目の自由行動その3 調薬終了、次はミヤネ露店

しおりを挟む
「お前ら、さっきから口ばっか動かして、手が動いてねぇじゃねぇか!」

 雑談ばっかりしてたら、ササキさんから檄が飛んできた。なんとなく拳骨が落ちてきそうな檄だ。
 確かに今この場でみんな口は動いているけど、誰の手も動いていなかった。
 ここは作業場のはずだよな?
 カフェかなんかだと勘違いしそうなくらい、話しかしてない。
 でも、ササキさんも手を動かさずに雑談してたのになぁ。

「あぁ、ごめんごめん。話に夢中になっちゃって」

 ダイアさんがうれしいことを言ってくれる。
 夢中になってくれてたんだ!
 俺も謝りながら、とりあえず言い訳を並べる。

「すみません。皆さんのことを早く覚えようと必死で」

「オクツさんとの話が楽しくて!」

 いやぁ、クジョウくんもうれしいことを言ってくれる。

「ササキ、君も用具を出しただけで、何も作業が進んでないじゃないか」

 ダイアさんが、俺が思ったことを代弁してくれたのかな? っていうことを言った。
 そうだそうだ!
 心の中で、ダイアさんに賛同しておいた。

「確かにそうだな……すまん」

 ササキさんは、ちょっとだけ恥ずかしそうに言った。
 これは、雑談に夢中になってたのが恥ずかしいのかな? それとも、注意したことを自分もしていた事が恥ずかしいのかな?

「まぁ、そろそろちゃんと作業しましょう!」

「そうですね!」

 俺とクジョウくんで、場の雰囲気を切り替えようとする。
 そこに、ダイアさんも乗ってくれて、さっきまで残っていた楽しく雑談って雰囲気が、だんだん、作業もしようって雰囲気になってきた。

「あぁ、じゃあ、作業を始める前にオクツ君に1つアドバイス! 『生産の心得(入門)』ってスキルを取った方が良いよ」

 生産にも心得スキルがあったんだ。
 知らなかった。
 SPのスキル一覧も、生産の方まで見ないからなぁ。
 仕方ない、仕方ない。

「それって、SPで取れますか?」

 心得スキルだから、SPで取れるだろうけど、一応確認してみる。

「取れるよ」

「じゃあ、SPも余ってるので、さっそく取ってみます」

 ダイアさんに教えてもらった、『生産の心得(入門)』スキルをSPで取った。
 ステータスアップ系のスキルがあらかた取り終わって、今後どんなスキルを取ろうか考えてたタイミングだったから、SPが余っていたのだ。

「そうした方が良いと思うよ。ここにいる3人はみんな持ってるから!」

「そろそろ、作業を始めるぞ。そろそろ、手を動かしながら話せー」

 ササキさんの号令で、みんなが各々手を動かしだした。
 俺もその流れに乗って手を動かす。

「はいはい」

「分かりました」

「クジョウを見習え! もうあいつは黙々と作業を始めたぞ!」

 俺が用具の用意をしている時、クジョウくんはもう作業を始めていた。
 すごく真剣な表情で集中している。

「すごいですね! あの集中力」

「集中ってスキルを持ってるのもあるけど、あの没頭癖は天性の才能だと思うよ!」

 ダイアさんが、クジョウくんを褒めた。
 同じ調薬(入門)組として、親近感があったけど、クジョウくんの表情とかを見て、一気に生産職の人なんだなぁという尊敬の気持ちがわいてきた。

「本格的な雑談は、ポーションを冷ますときにでもな」

 ササキさんの言葉を聞いて、俺たちも本格的に作業に入っていった。


 俺のポーションづくりは順調に進んでいった。
 みんな作業中・生産中は集中していて、ほとんど雑談することはなかった。
 作業中静寂の時が流れていた。聞こえてくる音は、道具から出る音だけ。
 薬草をすりつぶす音や、鍋を火にかけている音などだけ。
 たまにする雑談は、ポーションを冷ましている時間や、道具を洗ったりしている時間だけ。
 本職だなぁって心から思った。
 やっぱり生産が、調薬が好きなんだなぁと思うほどみんな真剣にやっていた。
 その真剣さに充てられて、俺もいつも以上に集中して作業することができた。
 正直、作ろうと思っていた量よりもだいぶ多くできてしまい、初級のHPポーションもMPポーションも過剰在庫になっている。
 ササキさんの何度目かの、ポーションを覚ます時間、ササキさんが、みんなに話しかけた。

「いい感じにできたな! 俺はこれぐらいにして露店に戻るが、お前らはどうする?」

 ダイアさんも集中が必要な作業ではなかったのか、すぐに答えた。

「ササキが戻るなら、私も戻ろうかな!」

 クジョウくんは、作業を区切りのいいところまでして、答えた。

「僕は、他の生産もしたいので、ここに残ります!」

 俺は、用具の片付けをしている手を止めて答える。

「俺も、結構な量のポーションができたから、ここで切り上げます」

「おう! じゃあ、クジョウ以外は作業場を出るんだな。この後何するんだ?」

 本格的に雑談モードだ。
 まぁ、俺はすでに作業が終了しているからいいけどね!
 まず答えたのは、これまた片付けに入っているダイアさんだ。

「うーん……露店にいるかな。採取とかに出る気分でもないし」

 俺もそれに続いて答える。

「俺は、ミヤネさんの露店に向かいます。新しい装備が欲しいですし!」

 ちなみにクジョウくんは、もう作業に戻っている。
 真剣な顔して、集中しているのが分かる。

「お、ミヤネちゃんかぁ。懐かしい名前だね!」

 へぇ、ダイアさんもミヤネさんを知っているんだ。
 生産職の繋がりかな? βテスターのつながりかな?

「懐かしいも何も、お前昼過ぎぐらいにミヤネの露店に行ってただろ!」

 ササキさんから、ダイアさんに突っ込みが入った。
 そんなに親しい感じなんだ。
 名前を知ってるとか、一言二言かわしたことがあるみたいな間柄だと思ってた。
 まぁ、確かに、あのアクセサリーは、誰もが必要だしな!

「ダイアさんもミヤネさんと知り合いなんですか?」

「生産職のネットワークはすごいからね! ついでにβテスターのネットワークもあるしね」

 俺が思っていたつながりの両方らしい。

「へぇ、そうなんですか!」

 作業場から出ていく組の片付けが終わったので、個室から3人で出た。
 俺たちが個室から出る時、クジョウくんはこっちを見て手を振ってくれた。
 クジョウくんは手を振り終えるとすぐに作業に戻っていった。
 クジョウくんって本当に何かを作るのが好きなんだな!
 俺たちは、歩きながら雑談をする。

「ミヤネちゃんによろしく言っておいて!」

「分かりました!」

「ちなみに私の露店は、ここだよ」

 ダイアさんから、店の場所が記された露店の地図の画像がメッセージで送られてきた。
 ちなみに雑談を始めて最初の方に、ダイアさんとクジョウくんとは、フレンド交換をした。

「時間があったら伺いますね!」

 社交辞令じゃなくて、ほんとにね!
 ダイアさんが作った細工の商品とかも気になるし!

「時間によったら、作業場にいたり、南の草原に行ってるかもしれないけど、来てくれたら歓迎するよ!」

「じゃあ、俺たちはこっちだから、ここで別れだな」

 露店街の入り口ぐらいで、ササキさんとクジョウさんと別れる。
 進行方向が、俺とは違うのだから、仕方がない。

「誘っていただきありがとうございました!」

「どういたしましてー」

「誘ったのは、お前じゃなくて俺だろ!」

 ササキさんとダイアさんは、なんかコンビって感じがするなぁ。
 2人でいるとすごくしっくりくる感じがある。
 クジョウくんは、2人とは、生産職仲間って感じがするけど、ダイアさんとササキさんは、長年のコンビみたいな感じがする。
 不思議なもんだなぁ。
 キャラがあってるのかな?

「またねーオクツ君」

「またな、オクツ」

 2人は、俺に手を振ってくれた。
 俺は軽く手を振り返すと、歩き出した。
 俺は、2人と別れて、ミヤネさんの露店へ向かった。
 ダイアさんもクジョウくんもいい人だったな。
 いいめぐり逢いに感謝だな。



しおりを挟む
「いいね」「お気に入り登録」「しおり」などもお願いします!感想も書いていただけると嬉しいです。
感想 1

あなたにおすすめの小説

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...