上 下
32 / 114

ボス戦 南の草原のボス『ビッグラビット』

しおりを挟む
 まずはAGI値が一番高い俺から攻撃が入った。


 クリティカル!195ダメージ
 58ダメージ


『二連斬り』の片方がクリティカルになったらしい。
 ちなみに『追撃』は、相手のVITがある程度あったのか、0ダメージだったため、ログに残っていない。
 結構まんべんなくステータス振ってるけど、結構ダメージが出るようになったなぁ。

 俺が攻撃したことにより、のっそりとボスである『ビッグラビット』が振り返る。
 顔はこちらに向いたけど、身体はまだ半身ぐらいの、振り返りきれていないところに、コルドの攻撃が入った。
 コルドは、大きく拳を振りかぶって、その姿勢のまま『ビッグラビット』に突撃し、拳をきれいに振り切った。


 315ダメージ


 いやぁ、さすがだなぁ。
 圧巻の攻撃力だよなぁ。
 もともと攻撃極振りビルドだったし、これぐらい出るもんなのかなぁ。
 やっぱ極振りビルドの方が良いのかな?
 でも、いろいろしたいしなぁ。動きが遅くなるのは嫌だしなぁ。
 まぁ、今更変えられないから、いろいろ言ったってしょうがないけどなぁ。

 俺の方を向いていた『ビッグラビット』の目が、標的を完全にコルドに切り替えた。
 ヘイトは、ちゃんとコルドがとったらしい。
 俺は、振り下ろした剣を救い上げるように、もう一度、『ビッグラビット』に攻撃をする。


 25ダメージ


 通常攻撃だと、やっぱり火力がなぁ。

 ヘイトはちゃんとコルドで固定されているようで、『ビッグラビット』は俺に見向きもしなかった。
 ヘイトの確認がちょうど終わったそのタイミングで、ローズの初撃が飛んできた。


 808ダメージ


 さすがだなぁ。
 なにげにローズも極振りもどきみたいなステータスしてるんだよなぁ。
 ほとんどがINTにステータスを振ってるし、魔法の方が物理よりも威力が高めだから、ダメージとしたらこんなもんなのかな?

 ローズのダメージが思ったよりも多くて、一瞬ヘイトがローズに向きかけたけれど、コルドが機転を利かせて、軽く一発攻撃したことで、ヘイトが、コルドに戻ってきた。


 74ダメージ


 コルドの軽い一発が、俺のスキル込みの攻撃力並なんだよなぁ。
 なんでだろう?
 STR:86ってそんなに低い数字じゃないと思うんだけどなぁ。
 STRが50違うだけで、こんなにダメージに差が出るんだなぁ。
 まぁ、そうか。50差って、普通にステータスを振っていったら、レベル10個分だし。結構なさなんだなぁ。

 全員の初撃を終えて、『ビッグラビット』の残りHPを確認したところ、HPの一割以上を削っていた。
 これなら頑張れば行けるんじゃないか?
 何時間もの死闘!!みたいなのを想像していたけど、案外いけるんじゃないか?


 それから、順調に、HPを削っていった。
『ビッグラビット』のHPは残り3分の1強。
 こちらは割と余裕をもって、『ビッグラビット』の攻撃を避けている。
 避けるたびに、攻撃が止まるため、すごく効率がいいわけではないけど、安全策を取って、余裕をもって避けていた。
 攻撃を食らうかもしれないという意識がだんだんと薄れてきた中盤、事件が起こった。
『ビッグラビット』が攻撃モーションに入った時に、ヘイトを持っていたコルドが欲をかいて一撃多く入れた。
 その時、コルドは『ビッグラビット』から突進を食らってしまった。
 欲をかいて一撃多く入れたため、避ける姿勢ではなく、攻撃する姿勢だったため、重心が前に出すぎて、よけきれなかったのだ。
 一撃も攻撃を食らってなかったが故の気のゆるみ、そこを突かれた形になった。


 コルドが、117被ダメージ


 コルドのHPの約3分の2が吹き飛んだ。
 それと、コルドが、後方に大きく吹き飛んだ。
 コルドは、HPの回復と、吹き飛ばされた後方からの帰還で、3分は戦線に戻ってこれないだろう。
 この3分、簡単に無事に乗り切れるなんてこともなく。
 まず、ヘイトを持っていたコルドが戦線から離脱したため、ヘイト管理が崩壊した。
 ちょこまかとヘイトを取っていたコルドの次にヘイトを集めていたのは、一撃一撃が重いローズ。
『ビッグラビット』のターゲットはローズで固定されてしまった。
 ローズは、魔法職でありながら、ある程度はAGがあるので、攻撃を避けることに専念しようと、杖をしまった。
 ローズは、戦闘の間、後方からずっと攻撃魔法を飛ばしてくれていた。
 前線で、『ビッグラビット』の突進やら噛みつきやら、爪での攻撃を避けていた俺たちとは違って、ローズはまだ『ビッグラビット』の攻撃に目も体も慣れていないだろう。
 そんな中で、ローズが集中的に狙われたら、万が一にもよけきれないかもしれない。
 そうなったら、HPもVITも低いローズのことだ、軽い一撃を貰っただけで、ワンパンで死んでしまうかもしれない。
 どうしよう?
 俺は何ができるだろうか?
 この状況で俺は何ができるんだろうか?
 俺がヘイトを取るには、どうしたらいいだろうか?
 ローズを狙うためにこちらに背を向けている『ビッグラビット』を見て俺は思った。
 これは、しっぽにでも、尻にでも、なんとなく生物の弱点みたいなところに執拗に攻撃したら、ヘイトが取れるんじゃないだろうか?
 俺は、考えそのままおもむろに尻に攻撃を仕掛ける。

 22ダメージ
 21ダメージ
 24ダメージ

 なんとなく、『ビッグラビット』の意識がこちらに向いてきた気がする。
 ローズを狙って前傾姿勢でチャージしていたのをやめ、フラットに立ち、こちらに顔を向けた。
 よし!このままいけば行ける!!
 俺はふと思い立って、『ビッグラビット』の尻の穴に『ファイアランス』を入れた。
 詠唱時間の5秒が、永遠にも感じられた。
 詠唱が、完了し、発動した『ファイアランス』は『ビッグラビット』の尻にクリーンヒットした。


 クリティカル!269ダメージ


 尻に『ファイアランス』を入れられた『ビッグラビット』はその場でのたうち回った。
 暴れる『ビッグラビット』に近づくのは危ないと感じたため、少し離れて魔法や『スラッシュ』を撃ち込む。

 俺とローズでのたうち回る『ビッグラビット』に追い打ちをかけていると、コルドが前線に戻ってきた。
 良かったぁ。
 これで、ヘイト取りをコルドにバトンタッチで来る。
 そう思って安心した瞬間、『ビッグラビット』が光になって消えた。
 あれ?どうしたんだろう?
 頭の中に『討伐完了』の4文字はなかった。
 正直バグかと思った。
 どうしたんだろうと不安になっていると、普段より体感2割増しぐらいの音量でアナウンスが鳴った。


 ビッグラビットLv.10(南の草原ボス)を討伐しました。
 経験値や、ドロップ品は省略します。 詳細
 キャラクターレベルがアップしました。
 職業レベルがアップしました。
 剣術(入門)Lv.9/Lv.10がレベルアップしました。
 剣術(入門)がレベル限界に達しました。
 剣術(入門)が昇華可能になりました。
 魔術(入門)Lv.8/Lv.10がレベルアップしました。
 物理の心得(入門)Lv.9/Lv.10がレベルアップしました。
 物理の心得(入門)がレベル限界に達しました。
 物理の心得(入門)が昇華可能になりました。



 ボス個体が、ワールドで初めて討伐されました。
 称号『最初のボス討伐者』が贈られました。
『ビッグラビット』がワールドで初めて討伐されました。
 スキルオーブ『突進』が贈られました。
 記念称号『ビッグラビット最速討伐(記録20分14秒23)』が贈られました。
 記念称号『ビッグラビット最遅討伐(記録20分14秒23)』が贈られました。
 称号を5つ獲得したため、称号『称号コレクター(入門)』が贈られました。



 ワールドクエストが解放されました。
 ワールドクエスト『新しき世の風』が開始されました。



 なんかいろいろアナウンスが流れてきた。
 勝った!!!
 ボスに勝った!!!!
 やった!!!!やったぞ!!!
 アナウンスの内容を気にしていられないくらい感動していた。



 それからすぐに戦闘態勢をやめ、コルドとローズと喜びを分かち合う。

 これが、ワールド初討伐だと気づくのはそれから15分後のことだった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~

滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。 島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』 倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。 ……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。 しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。 意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載

処理中です...