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──11──[ヒロイン視点]
しおりを挟む見えない何かに足を引っ掛けられて転ぶのもツライけど、周りに誰も居ない時に耳元で聞こえる悪口が本当に心に来る……。
『嘘吐き』
最初に聴いた時は本当にビックリして周りを見渡した。誰も居ないのに耳元で聴こえるその声。色んな人の声色で囁かれて、寝ていても聴こえてくる。
『嘘吐き』
それしか言わない。
それが逆に腹が立つ。
ゲームの中ではヒロインは色んな暴言を吐かれていた。『売女』『捨て子』『淫乱』『下賤の血』『親無し』『淫売』……ありとあらゆる暴言の羅列にプレイヤーからは「製作陣は暴言の選別も出来ないのか」と言われていたほどだったのに……。
私は姿の見えない何かにただただ嘘吐き呼ばわりされるだけ。
実際イジメを自演したから嘘吐きかもしれないけどただ陰口言いたいだけならもっと色々あるんじゃない?なんでそんなに語彙力が無いのよ!?
不意に耳元で聴こえる事への苛立ちに加えてそんな苛立ちまでプラスされてるから本当に腹が立つ……!!
何?!何なの?!
お化けなの?!幽霊なの?!
こんな目にあって初めて気付いたけれど、イジメは『イジメっ子』が居ないと成立しない。『見えない何か』に襲われている私は、ホラー映画で幽霊に襲われている人や妖怪に取り憑かれている人と同じなの!
この世界風に言えば『妖精の悪戯』とか言われて逆に周りからは
「やはり聖女様ほどになると妖精も放っておけないんですね」
なんて言われて心配もしてもらえない時があるのよ!?
『見えない何か』に襲われてる(取り憑かれてる?)私を誰も『イジメられている被害者』だと思ってくれない!
聖女だから悪霊とかだと浄化の力で除霊出来るから悪いものが私に悪さをしているとはみんな思わないけれど、私が『質の悪いモノ』にまとわりつかれてる事にみんなが気付いたせいで、私を見る人の目が徐々に同情や不信感に変わってきていた……。
私に近付いたら自分も巻き込まれるんじゃないかって、みんなが私からちょっと距離を取るの……。
ゲームと同じ目に遭っているのに『何から庇い守ればいいのか分からない』時、正義感のある人でも守ってくれないどころかちょっと距離を取る事が分かって、私は転生した事により1つ人生の経験を積んだ気がした…………(悟り)
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