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第5章 ノースジブル領の危機
52.昨夜からの再会
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夕食の時刻になるとまたノーマンが部屋の扉を叩いた。その声にエマ達を始めとする侍女達が大慌てで返事をした。
「ああ!今すぐ!」
侍女の一人が扉を開いてノーマンを通すとノーマンも驚いた様子でこちらを見ていた。
「…アリス様、ご準備は宜しいでしょうか?」
「え、ええ」
私は侍女達に着飾られてまるでこれから舞踏会に行くような洋装に整えられていた。
ー張り切らなくていいと言ったのに
遡ること数刻前のことだ。
「ええ!公爵様とですか!」
「エマ、そんなに大きな声を出さないで」
私は昨夜のことをエマに話し、今日の夕食で公爵様から正式に了承してもらえればお父様に婚約をすることを報告する手紙を出そうと思うことを伝えた。
形式的に伝えたつもりだったが、私よりもエマが張り切ってしまい、こんなに着飾られる羽目になってしまった。
「想いを告げあった後なのですから、しっかり綺麗にしなくてはなりません!」とエマが私に言うと他の侍女も大喜びで私の世話に励んだ。その結果、仰々しくなっているが私の希望もあり、色はとても落ち着いた蒼色のドレスを選んでくれていた。
ノーマンに連れられながら私は公爵邸の廊下を歩き、食堂への扉の前で不意にノーマンが話しかけてきた。
「差し出がましいようですが、本日のアリス様の装いはきっとリヒト様も喜ばれるかと」
その言葉に私は耳が赤くなったように感じたが、ノーマンに「ありがとう」とだけ告げ、席へと向かった。
暫くすると公爵様が部屋へと入ってきた。私を見るなり、何か言いかけたようだったがそのまま席に着いた。それから暫くして食事が運ばれて来ると私達はぎこちなく手をつけ始めた。お互いにどちらから話そうかという駆け引きが行われているようだったが、沈黙を破ったのは公爵様だった。
「体調はどうですか?」
「え、ええ。特に異常はなく医者も暫くは安静にしておくようにとのことでした。」
「そうですか、それは良かった」
会話がまた途切れてしまうかと思ったが意外にも話しは続いた。公爵様が行った公務の話やフリーレンの様子、ノースジブル領の冬支度など興味深い話題で私も先程の雰囲気は忘れて、楽しい夕食を過ごしていた。
「…アリス嬢、この後少しよろしいですか?」
夕食も終わりに差し掛かった頃、公爵様は私誘ってきた。私は頬に熱を感じながらも「喜んで」とだけ返した。
公爵様に連れられたのは公爵邸のホールだった。あまりヴェンガルデン公爵家で舞踏会を行うのは聞いたことがないが、ここはそういった
際に開かれる場所だろう。
「どうぞお手を」
公爵様は私に手を差し伸べると私はその手に自身の手を重ねた。公爵様と2人だけしかいないホールへと足を踏み入れるとあまりの広さに驚いた。アンリゼット侯爵邸にもホールはあるが、これほどまでの規模ではない。公爵様の声で我に帰った。
「良ければ踊りませんか?」
目の前には普段はあまり見ることがない公爵様の微笑んだ顔が目の前にあった。
「ああ!今すぐ!」
侍女の一人が扉を開いてノーマンを通すとノーマンも驚いた様子でこちらを見ていた。
「…アリス様、ご準備は宜しいでしょうか?」
「え、ええ」
私は侍女達に着飾られてまるでこれから舞踏会に行くような洋装に整えられていた。
ー張り切らなくていいと言ったのに
遡ること数刻前のことだ。
「ええ!公爵様とですか!」
「エマ、そんなに大きな声を出さないで」
私は昨夜のことをエマに話し、今日の夕食で公爵様から正式に了承してもらえればお父様に婚約をすることを報告する手紙を出そうと思うことを伝えた。
形式的に伝えたつもりだったが、私よりもエマが張り切ってしまい、こんなに着飾られる羽目になってしまった。
「想いを告げあった後なのですから、しっかり綺麗にしなくてはなりません!」とエマが私に言うと他の侍女も大喜びで私の世話に励んだ。その結果、仰々しくなっているが私の希望もあり、色はとても落ち着いた蒼色のドレスを選んでくれていた。
ノーマンに連れられながら私は公爵邸の廊下を歩き、食堂への扉の前で不意にノーマンが話しかけてきた。
「差し出がましいようですが、本日のアリス様の装いはきっとリヒト様も喜ばれるかと」
その言葉に私は耳が赤くなったように感じたが、ノーマンに「ありがとう」とだけ告げ、席へと向かった。
暫くすると公爵様が部屋へと入ってきた。私を見るなり、何か言いかけたようだったがそのまま席に着いた。それから暫くして食事が運ばれて来ると私達はぎこちなく手をつけ始めた。お互いにどちらから話そうかという駆け引きが行われているようだったが、沈黙を破ったのは公爵様だった。
「体調はどうですか?」
「え、ええ。特に異常はなく医者も暫くは安静にしておくようにとのことでした。」
「そうですか、それは良かった」
会話がまた途切れてしまうかと思ったが意外にも話しは続いた。公爵様が行った公務の話やフリーレンの様子、ノースジブル領の冬支度など興味深い話題で私も先程の雰囲気は忘れて、楽しい夕食を過ごしていた。
「…アリス嬢、この後少しよろしいですか?」
夕食も終わりに差し掛かった頃、公爵様は私誘ってきた。私は頬に熱を感じながらも「喜んで」とだけ返した。
公爵様に連れられたのは公爵邸のホールだった。あまりヴェンガルデン公爵家で舞踏会を行うのは聞いたことがないが、ここはそういった
際に開かれる場所だろう。
「どうぞお手を」
公爵様は私に手を差し伸べると私はその手に自身の手を重ねた。公爵様と2人だけしかいないホールへと足を踏み入れるとあまりの広さに驚いた。アンリゼット侯爵邸にもホールはあるが、これほどまでの規模ではない。公爵様の声で我に帰った。
「良ければ踊りませんか?」
目の前には普段はあまり見ることがない公爵様の微笑んだ顔が目の前にあった。
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