零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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急接近

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「ちょ、おい、なんで起きないんだよ…!」

シャツ越しに、日下部の胸ら辺がドクドクいってるのが分かる…いや僕の方がドクドクいってるのかも…

そりゃ、こんなぴったり密着してたら…!

「…ごめん」

「え?」

「…きっと、僕は風音君に寄りかかっちゃってるだけだよね」

ギシ…

日下部は耳元でそう呟いて、僕の上からゆっくり退いた。熱を持ってた体が離れて、スゥーッとシャツがしんやりする。

「寄りかかる…?ってなんのことだよ」

「なんでもない、練習しよ」

「……っ」

「忘れて」

こいつ、僕が何聞いても、こうやってなんでもないって笑って…そんな顔されたら気になるに決まってるだろ!!

「うわっ…」

「いや気になるんだよ!何かあるのかって…何考えてるのかって、そんな顔されたら気になってしょうがない!!教室で抱きしめてきた時も、今も!
それでこっちがモヤモヤしちゃうんだから、話せよ!」

プチッと何かが切れて、僕は日下部に掴みかかった。

なんで怒れてくるんだ、こんなに。
こいつが何も話してくれないから?

僕は雪菜さんのことが好きなのに?
なんで、ここまでこいつで頭いっぱいなの。


「…なんで、そんなこと」

「雪菜さんとのことだって!なんかあるだろもっと!あの時は追求しなかったけど…やっぱり気になるわ!」

「それは、別に雪菜と付き合えるなら僕の事情なんて、なんでもいいでしょ?」

「よくない!!」

「…え?」

「お前がそうやって苦しそうな顔するたびに、引っかかるんだよ!あんな風に本気で笑えるのに、いつも無理して笑ってるのも…気になってしょうがないんだ!こっちは!」

あれ、もう何言ってんだ僕は…。
さっきはしどろもどろだったのに、今はこんなに思ってることが口から出てくるのは何で?

「……そっか、風音くんは優しいんだね。ほんとに」

「は、話逸らすな…!!」

「だって僕のこと好きじゃないのにそんな気にしてくれるんでしょ?」

「は?そ、それは…」

「僕は…みんなが思ってるようなニコニコしてて優しい奴じゃないよ。好きな人以外は基本どうでもいい」

ドキ…ッ。

なに、その目…。

前髪の隙間から見える目が、真っ黒で動かなくて逸らせない…。

「風音くんの、その純粋な所も、優しい所も…健気な所も。いいなって思ってるよいつも。僕はそんな風音くんに寄りかかりたいだけなんだろうね」

「どういう、ことだよ…」

「雪菜と離れるために君を利用してるのに…僕のこと心配してくれてる。きっと僕はそこに甘えてるだけだと思う」

「…別に、利用されてるとか思ってな」

「雪菜と風音くんが上手くいくために手助けして、そうしたら僕も別れられる…と思って始めたことなのに、いつの間にか風音くんを心の拠り所にしてたんだよ」

「…っ日下部」


「僕ね、小学生の頃から好きな人がいたんだ。だから雪菜と付き合ったのは…」


ピンポーーーン

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