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これは違う
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【学校終わったら、僕の家に来ない?】
それは、友達同士でよくある家への誘い。
でも、上手く言えないけどなんとなく今までの感覚と違う感じがする。なんだろう。
状況が状況だからか。
「もうすぐ着くよ」
学校が終わって、こいつと一緒に帰ってて、こいつの家へ向かってる。1年前はこんなことになるなんて思ってなかった…。
まあ、これは僕が雪菜さんに好きになってもらうためと…日下部が雪菜さんと離れるためだけど!!
「…お前ん家ってマンションなんだ。でかいな」
「あ、それは違うよ。僕の家はこっち」
「いや同じようなもんじゃん!こっちより少し小さいだけで!高そうなとこじゃん!」
「ちなみに、そっちのマンションには雪菜が住んでるよ」
「は!?家も近いの!?」
「うん。小学校からの仲だからね」
「小学校!?すごい長いじゃん!!」
知らなかった…そんな長い仲で、同じ敷地内のマンションに住んでるなんて。
しかも2人ともいい家だな、おい。
「え、付き合い始めたのは?」
「中2の時からかな」
「ええ!?中2って…女子と付き合う以前に世間話も話したこともなかったわ」
「あはは、風音くんっぽいね」
「バッ、バカにするな!」
「まあでも…僕と雪菜の場合は小学生の時に親同士が仲良くなって、それで家付き合いもあったからさ。元々よく一緒に遊んでたんだ。それで中学も高校も同じとこになったから、中学までは常に一緒にいたよ」
「へ、へぇ…幼なじみ的な?」
「まあ、軽く言うとそんな感じかな」
そんな話しながら日下部について行くと、でかいエントランスを通り抜けて、綺麗なエレベーターに乗り込んだ。
「すご、ホテルみたいだな…うわ!こっちガラス張りで外見える!高ーい!」
「…風音くんはすごいね」
「へ!?なにが?」
「あ、いや…何とも思わないから、僕は」
「えっ綺麗じゃん!まあずっと住んでると感覚鈍るもんかな?」
「何とも思わないようにしてるんだ。いちいち、こういうことに一喜一憂してたら持たないっていうか…」
ん?なんだそれ…
「日下部…?」
「なんでもない。着いたよ」
今、すごく日下部の素が見えたような気がする。
こいつ…この顔。何回か見てきたこの表情。
冷たく見えてたのは…冷たいっていうより。
もしかして、本当は何か違うのかも…
今の言葉、どういう意味だよ。なんか引っかかる…
べ、別に僕が気にすることじゃないけど…!
「どうぞ入って」
「お、お邪魔します…」
綺麗な家…!?玄関広い!!
しかも、ここ何階だ?10階以上だったような…
「あれ、親は?」
「2人とも仕事でいないよ。だから楽にして」
「そっか…兄弟いないんだっけ?」
「うん、僕はひとりっ子。だからいつも1人で留守番」
「…そう、なんだ」
まあ僕ん家には母さんがよくいるし…むしろ留守番なんて自由で嬉しかったけど。
日下部は、寂しいのかな…。
「ここだよ、適当に座ってて」
奥に進んでいって、日下部の部屋に入った。
綺麗に整頓されてて、黒のベッドに、白い机と白い壁…かっこいい男の部屋って感じ。
漫画だらけの僕の部屋とは大違い…!
「飲み物とってくる。何がいい?ジュースとか基本的に置いてあるけど…」
「えっ、ありがと!じゃあコーラ!!」
「ふふ、分かった」
スンスンッ
ていうか、なんかこの部屋…日下部の匂いがす…
は!?
いや!だからスンスンってなんだ!?嗅ぐな!!埋めるぞ自分!!
「はぁーーー…あ?」
あれ、なんだろう。机に置いてあるこの写真…幼くて可愛い。
制服の男の子と女の子が3人で映ってる。
「これって…もしかして日下部?と」
「あ、それ。僕と雪菜と、雪菜のお兄さんだよ」
「うわ!!びっくりした!ご、ごめん!勝手に見て」
「別に大丈夫。その写真、僕たちが中1の時かな。お兄さんは高校生で、制服でみんなで記念に撮ったんだ」
「へぇ…3人とも仲良かったんだ」
日下部はコーラのペットボトルとグラスを2つ持ってきて、机に置いた。
「まあ、そうだね。3人でもよく遊んでたし。お兄さんも優しくて、僕のこと弟みたいに可愛がってくれてた」
「そうなんだ…」
「まあこんな話はいいとして、まずは雪菜にハンカチ返す時に連絡先聞いて、誘えるかどうかだったね」
「いきなりその話!?数学は!?」
「数学はあとでね」
とりあえず注いでくれたコーラを飲む。日下部は口に手を当てて、誘い方を真面目に考えてる。
やっぱり、異様だな…
「風音くん、今日普通に喋れたんなら、よかったら連絡先教えてって自然な感じで言える?」
「へ!?い、言えないかも…今日も雪菜さんがほとんど話しかけてくれたし…」
「うーん、でも自然に言えば、教えると思うよ。僕達、別に誰かと連絡先交換するの何も制限してないし。でも僕から教えちゃうよりは、風音くんが直接聞いた方が印象いいかなって」
「でも…考えただけで緊張して口から何か出そう…今まで女子に連絡先なんて聞いたことないし…」
でも待て。こんな自信も度胸もないんじゃダメだよな…
好きになってもらうには、日下部に教えてもらってばっかりじゃなくて僕も変わらないと…
「で!でも頑張る!だから、この前みたいに練習してくれ!」
「えっ…」
「弱気なこと言ったけど…!僕もこんなヘタレのままじゃダメだと思って…日下部も協力してくれてるんだから、自分も勇気を出して頑張りたいって思ったんだ!」
「…そっか、分かった。練習しよう」
日下部は僕から少し離れると、いいよ?って感じで合図をしてきた。
「よ、よし!!じゃあまずはハンカチ届けに行ったとして…ゆ、雪菜さん!!」
「あ、風音くん、どうしたの?」
「あの、この前ぶつかった時にハンカチ落としてました!と、届けにきました!」
「わぁ、失くしたと思ってたんだ。ありがとう、届けてくれて」
「はい!それで、あの…ちょっとお願いがあるんですけど…」
「なにー?」
「えっと…あの、れ…」
いい感じに、自然な感じに…!
あれ。どうやって言ったら不自然じゃないんだ…!?
「あ、えっと…!」
「風音くん?目見て、肩の力抜いて」
「う、うん…」
「風音くんの言葉でいいんだよ。相手の目を見て、自分の気持ちを真っ直ぐ伝えてみて」
日下部は、僕の顔を両手で包んで上を向かせる。そして肩をトントンッと撫でた。
「緊張したら、深呼吸してから落ち着いて…」
「すぅーーーーーーはーー」
よし、言える!
「あのっ!あなたの、ことが好きです!!!!」
「……え」
「……ん?」
あれ?あれ?僕、今なんて言った…?
「わーーーー!!!ごめん!間違えた!」
「……」
「順番すっ飛ばして間違えた!まだ早かった!ごめん日下部!!びっくりしたよな…」
え、あれ。
なんで下向いて黙ったままなの…!?
練習とはいえ、急に男にそんなこと言われて嫌だったか!?
「ちょ、あの、日下部!今のは勢い余ってっていうか…!!練習でも嫌だよな!ごめ…うわ!?」
「えっ…ちょ!」
やば!!ずっと固まって座ってたから、足痺れてた…!
急に立ったから、倒れ…ー!!
ドサッ!!!
「いた…た…」
えっ。
な、なんで。
「…っあ、あの、風音くん?」
なんで、こんな至近距離に…真上に日下部の顔が?
「ご、ごめん。倒れる時に服掴まれたから…僕もバランス崩して倒れちゃって…」
あっ!!!
僕がさっき咄嗟に服掴んじゃったからか!!
って、自分の手!思い切り今も掴んでる!!?
しかも、ベッドに倒れちゃったし!
こんなの、お、お、押し倒されてるみたいになって…
「ごごごめん!!足痺れてつい…!道連れにしちゃったな!?ごめん、まじで…」
え。
「…ちょ、お、起きれないんだけど」
「……」
日下部は、起き上がろうとしない。動かない。
それどころか…
「…!?え、おい!なにしてんの!?」
倒れた体勢のまま、覆い被さったまま。
それは、友達同士でよくある家への誘い。
でも、上手く言えないけどなんとなく今までの感覚と違う感じがする。なんだろう。
状況が状況だからか。
「もうすぐ着くよ」
学校が終わって、こいつと一緒に帰ってて、こいつの家へ向かってる。1年前はこんなことになるなんて思ってなかった…。
まあ、これは僕が雪菜さんに好きになってもらうためと…日下部が雪菜さんと離れるためだけど!!
「…お前ん家ってマンションなんだ。でかいな」
「あ、それは違うよ。僕の家はこっち」
「いや同じようなもんじゃん!こっちより少し小さいだけで!高そうなとこじゃん!」
「ちなみに、そっちのマンションには雪菜が住んでるよ」
「は!?家も近いの!?」
「うん。小学校からの仲だからね」
「小学校!?すごい長いじゃん!!」
知らなかった…そんな長い仲で、同じ敷地内のマンションに住んでるなんて。
しかも2人ともいい家だな、おい。
「え、付き合い始めたのは?」
「中2の時からかな」
「ええ!?中2って…女子と付き合う以前に世間話も話したこともなかったわ」
「あはは、風音くんっぽいね」
「バッ、バカにするな!」
「まあでも…僕と雪菜の場合は小学生の時に親同士が仲良くなって、それで家付き合いもあったからさ。元々よく一緒に遊んでたんだ。それで中学も高校も同じとこになったから、中学までは常に一緒にいたよ」
「へ、へぇ…幼なじみ的な?」
「まあ、軽く言うとそんな感じかな」
そんな話しながら日下部について行くと、でかいエントランスを通り抜けて、綺麗なエレベーターに乗り込んだ。
「すご、ホテルみたいだな…うわ!こっちガラス張りで外見える!高ーい!」
「…風音くんはすごいね」
「へ!?なにが?」
「あ、いや…何とも思わないから、僕は」
「えっ綺麗じゃん!まあずっと住んでると感覚鈍るもんかな?」
「何とも思わないようにしてるんだ。いちいち、こういうことに一喜一憂してたら持たないっていうか…」
ん?なんだそれ…
「日下部…?」
「なんでもない。着いたよ」
今、すごく日下部の素が見えたような気がする。
こいつ…この顔。何回か見てきたこの表情。
冷たく見えてたのは…冷たいっていうより。
もしかして、本当は何か違うのかも…
今の言葉、どういう意味だよ。なんか引っかかる…
べ、別に僕が気にすることじゃないけど…!
「どうぞ入って」
「お、お邪魔します…」
綺麗な家…!?玄関広い!!
しかも、ここ何階だ?10階以上だったような…
「あれ、親は?」
「2人とも仕事でいないよ。だから楽にして」
「そっか…兄弟いないんだっけ?」
「うん、僕はひとりっ子。だからいつも1人で留守番」
「…そう、なんだ」
まあ僕ん家には母さんがよくいるし…むしろ留守番なんて自由で嬉しかったけど。
日下部は、寂しいのかな…。
「ここだよ、適当に座ってて」
奥に進んでいって、日下部の部屋に入った。
綺麗に整頓されてて、黒のベッドに、白い机と白い壁…かっこいい男の部屋って感じ。
漫画だらけの僕の部屋とは大違い…!
「飲み物とってくる。何がいい?ジュースとか基本的に置いてあるけど…」
「えっ、ありがと!じゃあコーラ!!」
「ふふ、分かった」
スンスンッ
ていうか、なんかこの部屋…日下部の匂いがす…
は!?
いや!だからスンスンってなんだ!?嗅ぐな!!埋めるぞ自分!!
「はぁーーー…あ?」
あれ、なんだろう。机に置いてあるこの写真…幼くて可愛い。
制服の男の子と女の子が3人で映ってる。
「これって…もしかして日下部?と」
「あ、それ。僕と雪菜と、雪菜のお兄さんだよ」
「うわ!!びっくりした!ご、ごめん!勝手に見て」
「別に大丈夫。その写真、僕たちが中1の時かな。お兄さんは高校生で、制服でみんなで記念に撮ったんだ」
「へぇ…3人とも仲良かったんだ」
日下部はコーラのペットボトルとグラスを2つ持ってきて、机に置いた。
「まあ、そうだね。3人でもよく遊んでたし。お兄さんも優しくて、僕のこと弟みたいに可愛がってくれてた」
「そうなんだ…」
「まあこんな話はいいとして、まずは雪菜にハンカチ返す時に連絡先聞いて、誘えるかどうかだったね」
「いきなりその話!?数学は!?」
「数学はあとでね」
とりあえず注いでくれたコーラを飲む。日下部は口に手を当てて、誘い方を真面目に考えてる。
やっぱり、異様だな…
「風音くん、今日普通に喋れたんなら、よかったら連絡先教えてって自然な感じで言える?」
「へ!?い、言えないかも…今日も雪菜さんがほとんど話しかけてくれたし…」
「うーん、でも自然に言えば、教えると思うよ。僕達、別に誰かと連絡先交換するの何も制限してないし。でも僕から教えちゃうよりは、風音くんが直接聞いた方が印象いいかなって」
「でも…考えただけで緊張して口から何か出そう…今まで女子に連絡先なんて聞いたことないし…」
でも待て。こんな自信も度胸もないんじゃダメだよな…
好きになってもらうには、日下部に教えてもらってばっかりじゃなくて僕も変わらないと…
「で!でも頑張る!だから、この前みたいに練習してくれ!」
「えっ…」
「弱気なこと言ったけど…!僕もこんなヘタレのままじゃダメだと思って…日下部も協力してくれてるんだから、自分も勇気を出して頑張りたいって思ったんだ!」
「…そっか、分かった。練習しよう」
日下部は僕から少し離れると、いいよ?って感じで合図をしてきた。
「よ、よし!!じゃあまずはハンカチ届けに行ったとして…ゆ、雪菜さん!!」
「あ、風音くん、どうしたの?」
「あの、この前ぶつかった時にハンカチ落としてました!と、届けにきました!」
「わぁ、失くしたと思ってたんだ。ありがとう、届けてくれて」
「はい!それで、あの…ちょっとお願いがあるんですけど…」
「なにー?」
「えっと…あの、れ…」
いい感じに、自然な感じに…!
あれ。どうやって言ったら不自然じゃないんだ…!?
「あ、えっと…!」
「風音くん?目見て、肩の力抜いて」
「う、うん…」
「風音くんの言葉でいいんだよ。相手の目を見て、自分の気持ちを真っ直ぐ伝えてみて」
日下部は、僕の顔を両手で包んで上を向かせる。そして肩をトントンッと撫でた。
「緊張したら、深呼吸してから落ち着いて…」
「すぅーーーーーーはーー」
よし、言える!
「あのっ!あなたの、ことが好きです!!!!」
「……え」
「……ん?」
あれ?あれ?僕、今なんて言った…?
「わーーーー!!!ごめん!間違えた!」
「……」
「順番すっ飛ばして間違えた!まだ早かった!ごめん日下部!!びっくりしたよな…」
え、あれ。
なんで下向いて黙ったままなの…!?
練習とはいえ、急に男にそんなこと言われて嫌だったか!?
「ちょ、あの、日下部!今のは勢い余ってっていうか…!!練習でも嫌だよな!ごめ…うわ!?」
「えっ…ちょ!」
やば!!ずっと固まって座ってたから、足痺れてた…!
急に立ったから、倒れ…ー!!
ドサッ!!!
「いた…た…」
えっ。
な、なんで。
「…っあ、あの、風音くん?」
なんで、こんな至近距離に…真上に日下部の顔が?
「ご、ごめん。倒れる時に服掴まれたから…僕もバランス崩して倒れちゃって…」
あっ!!!
僕がさっき咄嗟に服掴んじゃったからか!!
って、自分の手!思い切り今も掴んでる!!?
しかも、ベッドに倒れちゃったし!
こんなの、お、お、押し倒されてるみたいになって…
「ごごごめん!!足痺れてつい…!道連れにしちゃったな!?ごめん、まじで…」
え。
「…ちょ、お、起きれないんだけど」
「……」
日下部は、起き上がろうとしない。動かない。
それどころか…
「…!?え、おい!なにしてんの!?」
倒れた体勢のまま、覆い被さったまま。
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