零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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抱きしめられた

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窓の向こう側。校庭の方から野球部の音が聞こえてくる。
朝早く、こんな誰もいない教室で…

なんで僕はハグされているのか分からない。

「ちょ、お、おい!もう練習はいいから…っ誰か来たらやばい…」

日下部の方が体が大きいし、力も強いのか、肩をバシバシ叩いて剥がそうとしてもビクともしない。

僕だけじゃなくて、こいつの体も熱くなってるのがシャツ越しに伝わってくる!!

「なんだよ、日下部…!おい!」

「ごめん。大丈夫?」

「だっ大丈夫じゃないんだって!!」

やっと離してくれた…ていうか、急になんなんだ!!

「練習する、流れじゃないだろ!!今の、急に何すんだよ…」

「…うん。今は僕がしたかったから、しただけ」

「は…?」

「なんか急にハグしたくなったから。ごめんね」

はぁぁぁーーー!?意味分からないんだけど!?
どうかしてるんじゃないのか!?こいつ!?

「…風音くん?ほら、立てる?」

「なっ、別に立てる…!」

「顔真っ赤だよ、耳まで」

「!!!!」

僕はこんな動揺してるのに、なんでこいつは平然な顔してこんな顔近づけてくるんだよ。

それよりも…!

「もしかして、初めてのハグで緊張した?」

「ばっ…誰でも急に抱きしめられたらこうなるわ!!」

「相手、雪菜じゃなくてもそうなっちゃうの?」

え。確かに。

なんでそもそも、僕はこんな動揺してるんだよ。ただのクラスメイトでしかも男に。

相手が好きな子ならまだしも。
どうかしてるのは僕の方なんだけど。

「ちょっ、トイレ行ってくる!!!」

「あっ走ったら危ないよ」

だめだ、今はとりあえずこの赤面を治めないとやばい。

「「うわーーー!?」」

「ビビった!風音おはよぉ!今日早いな!」

「玉木…っびっくりした、急に現れんなよ!」

「いや現れるだろ」

扉開けて出ようとしたら、玉木と鉢合わせた。

あっぶない!!!タイミングぎりぎり!
もう少し長くハグされてたら、さっきの見られるとこだった!!

「あれ?風音、なんか顔赤…」

「僕はトイレだから!!!」

「は?お前はトイレじゃねーだろ…あ!おい」

手で顔を隠してたけど、玉木にもバレてしまう…早く落ち着かせないと。

トイレまで走る!!

「じゃ!!行ってくる!」

「なんだ?あいつ」

「あ、おはよう。玉木くん」

「おー、零くんおはよ!風音が今走って出てったけどなんかあったの?」

「あー、なんか急にお腹痛くなったみたいだよ」

「なんだーそっか!朝飯食いすぎたんかな」

「…風音くんってさ、すごくピュアだよね」

「うぇ!?なに急に!?まあ、でも確かに!ピュアってゆーか、シャイっていうか?あの見た目で純朴な少年っていうのもギャップだよなー」

「…ふっ、そうだね」

「お、零くん今笑っ…」

ヴーーヴーー

「あれ?零くんの携帯鳴ってない?」

「あー…うん」

「出なくていいの?」

「…うん、大丈夫。知らない番号」

トイレ着いた。

「はぁはぁ。あー苦しい…」

勢いよく個室に入り、扉を閉める。
走ったせいで余計に暑いし、顔も熱い。

パタパタとシャツに風を入れながら、ふと考える。

「僕の慣れてなさって、やばくない…?てかそもそも、あいつ!なんで急に抱きしめてくるんだよ!」

あの話のタイミングで…練習って言ってたけど、そうだとしても流れがおかしい!!!

話を逸らしたかったとか?

さっきの話のこと…彼女のお兄さんの話してるだけで、なんであんな顔するのか意味分からなかったから聞こうとしたのに…

そのタイミングでされたから、やっぱ話逸らしたかった?

でも、そのためにハグってなるかな、普通…。

「あれ、ていうか…」

そういえば、思い返せば玉木もよく僕に抱きついてくるし…ふざけて肩組んだりとかもよくあるし…

え、その時は何ともないのに。

なんで日下部の時は、こんな緊張してるんだ?

「…なんでだよ」

冷静になったら、余計に頭混乱してきた。

多分アレだ。日下部とは色々あるから…秘密共有者だし。だから友達とはちょっと違うのかも。


「あー!もう!!よし、落ち着いた。顔も普通の色…」

とりあえずトイレに長く篭ってるのよくないし、そろそろ出よう。

個室から出て手を洗っていたら、外から聞こえる生徒たちの声が多くなってきた。
そろそろ、みんなが登校してくる時間か。

平常心、平常心…。

あー、落ち着いたけど、日下部と顔合わせるのちょっと気まずいな…

ドンッッ!!!


「わっ!!」
「きゃっ!」

そんな考え事していたからか、トイレから出てすぐの曲がり角で、向こうから来た誰かと体がぶつかってしまった。

「ご!ごめんなさい…!」

やばい、しかも女の子とぶつかった…!
どうしよう…


え!!!!?

「あ、私もごめんなさい…」

うそ!?雪菜さん!!?

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