零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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1.

日下部 零

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あ、これ完全に聞かれてるじゃん。
新学期早々やってしまった。

終わった終わった、どうしよう。

「…そんなこと、ナイナイ!あいつ…玉木と冗談言ってただけで、目の敵にしてるとかないから!!」

いや、こんな時にね?

俺もぉ実は雪菜さんのこと好きなんだよね。
いいか?いずれお前から奪ってやんよ。

的なイケイケなこと言える度胸があったらここまで悔しがってないんだわ!!

僕にはそんな度胸もポテンシャルも皆無です。


「そうなの?よかった」


汗をダラダラかきながら全力で否定すると、そいつは座ってる僕の目線に合わせて屈んだ。


「…へ」


恐る恐る顔の方を見てみると、そこにはなんとも綺麗な顔面が。
中性的な顔立ちなのに目がキリッとしてて、色素薄くて鼻筋も通ってて…茶色い目。

ミルクティーのサラサラな癖毛が目にかかってる。

「1年は違うクラスだったよね?僕は、日下部零くさかべれい。よろしく」


ニコッと柔らかい笑顔を見せる確定イケメン。


「……っ!!」


負けた………。というか、こんなん負けるしかない。


「あ、は、はい…知ってる」

「そっか、名簿見たら分かるよね。気軽に零って呼んで」

「………」


絶対、呼ばない。


「風音くん、だよね?苗字は?」

「…春野はるの

「春野風音くんか。いい名前だね。風音くんって呼んでいい?」

「…ど、どうぞ」


加えてなんだコミュ力の塊…。人懐っこい感じするし、誰とでも仲良くできそうだな。
まあ、とりあえず目の敵にしてるって話はなんとか誤魔化せてよかった。

はい、僕は争いより平穏を取った意気地無しですよ。


「あのさ、風音くんって…」


「「零くーーーーん!!」」


「!!びっくりした…」


日下部が何か言いかけた時、クラスの女子達がわらわらと集まってきた。


「んー?なに?」

「今日さ、うちらのグループでこの後遊ぶんだけど、零くんも来れる!?」


うわー、すごい女子達の期待のこもった目。狙ってるって丸わかりだよ。


「今日か…ごめん、今日はちょっと彼女と用事があって行けない」


「「えーー残念」」


……彼女。


分かってたけど、雪菜さんのことなんだって思うとまだ胸がチクってする。


「………っ」


一瞬、女子達の隙間から見えた日下部と目が合って…分かりやすく逸らしてしまった。


「…ごめんね。また今度誘って?」

「「うん!!」」


はぁ、何この拷問。


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