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悩ましいボイス①
しおりを挟むあなたはエロアニメを見たことがあるだろうか?
R18で例えば、童顔巨乳の女の子が大胆なHをしたり、CG美女が生々しくレイプされたりするアニメーションである。
僕は正直いって、まったく見たことがなかった。テレビゲーム版の通称「エロゲー」というのも存在すら知らなかった。そういった二次元の女の子より、実物の女性の方がはるかに魅力的だから、と言えば、不遜に聞こえるだろうか。
別にカッコをつけているわけじゃない。これは性的志向の単なる違い。好みは人それぞれである。僕は童顔巨乳の二次元キャラに興味がなく、生身の女性を相手にするのが好きなだけだ。
「そうですか、シュウさんは見たことがないですか。残念ですね。私の出ている〈エルドラド〉シリーズは“抜ける”って、業界じゃ有名なんですよ。それも“かなり抜ける”って」
僕たちのいるのがカラオケボックスの個室で、まったく人目がないとしても、ルナさんは際どいワードをあっけらかんと言ってのける。それも、いかにも声優さんらしい、とてもキュートな声で。
「定番の〈美少女レイプ〉物ですけど、生々しさが売りなんです。シチュエーションと表情の変化には凝っていて。そうだ、今度DVDに焼いて進呈しますから、感想を聞かせてくださいよ」眼をクリクリさせて、朗らかに語りかけてくる。
ルナさんは童顔だけど、おそらく20代後半だろう。身体は成熟していて、スプリングコートの襟の合わせ目からのぞく、真っ白な胸元がまぶしい。脚もスラリと長く、モデルさんのようである。
二次元キャラっぽい声だけど、間違いなく生身の女性であり、とても魅力的なレディである。ココナさんによると、ルナさんはエロアニメ業界のカリスマらしい。一般の知名度は薄いのは、まったく顔出しをしていないせいだとか。
門外漢の僕にはピンとこないのだけど、昨今の声優はアイドル並みのルックスと歌唱力、パフォーマンスに秀でている。なのに顔出しをしないのは、今時の声優界では稀有なことらしい。
「ルナさん、最初に確認しておきますね。今日はお話をするだけ、と事務所から聞いているんですが、それでいいんですよね」
「ええ、もちろん、私個人の取材としてお話を聞くだけです。ぶっちゃけると、新作を模索するため。ああ、もちろん、シュウさんの名前が出ることはないし、写真も一切撮りません。あくまで個人的にお願いをしているだけです」
〈個人的〉という言葉を強調した。少しだけ、違和感を覚える。
「声優さんって役作りのために、そこまでするんですか?」
「いえ、この取材は声優としてではなく、プロデューサーとしてコールボーイに興味があったからです」
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