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ジャムサンドはイチゴ味
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「ねえ真ちゃん、キツネ達の食べっぷり見てたらさ、なんだか私も小腹が空いちゃった」
「うん、ああ……そうだな、そろそろ昼時か」
メニューウィンドウの端にある時計を見ると、もう午後二時近かった。
「一度、ログアウトして昼飯食ってくるか?」
「ぶーー病院のご飯の味を知らない人はいいよね」
そう言うと瑠璃子は頬を膨らませてすねた。
「ごめんごめん、じゃあVRフードにするか」
「うん」
言うまでもなく瑠璃子は真司とご飯が食べたかったのだ。
ダイブギアには完全栄養食の流動食が備え付けられている。
VR空間内で食事をとるととったカロリー分の流動食が身体に供給されるのだ。
つまり、VR空間内の食事は現実の食事と等価なのだ。
登場当初、このVRフードはもてはやされ、高級レストランで食事ができるゲームやグルメ漫画の再現ゲームなんかが流行したことがあった。
一部の人間はこのVRフードを未来の荒廃した合成食の様な言い方もするせいで、悪い印象を持つ人も少なからずいたのだが。
あまり外に出歩けない瑠璃子にとって、外食と言えばVRフードだった。
「実はここストロベリアムの食堂はかなりイケてるらしくてさ、夜にはルリちゃんを誘おうと思ってたんだ」
「あっそうだったんだ。じゃあお昼は軽めにしようね」
「確か、農園の方にクレープがあったかな」
「よし、農園にレッツゴー」
瑠璃子は鼻歌を歌いながらのしのしと歩いて行った。
☆
農園の前で、二人は立ちどまった。ある人物が目についたからである。
その人物はキャンプ用のクッカーの様な調理器具をこれまたキャンプ用のストーブの様なものに乗せ(燃料は魔法の様だったが)うんうんうなりながらイチゴを煮ていた。
青に近い黒髪をポニーテールにして、テールの先端は腰の中ほどまで達していた。結構なロングヘアだ。
目が大きくて、顔に少しそばかすがあり、八重歯が可愛い女の子だった。
コック帽に白いエプロン、冒険者らしく革の鎧を着ていた。たぶんクラスはシェフだろう。
「じゅるり……凄く良い香りがするんですけど」
「ああ……美味そうなイチゴジャムだな」
「オネエサン、コンニチハッ!」
瑠璃子が大声で挨拶すると、お姉さんはぎょっとして顔を上げた。
「わっ……びっくりした」
「夢中になって煮てるそれ、美味しそうですね」
「ああ……うん、ジャムでシェフレべルを上げてたのよ」
「それ、食べられますか?」
「あ、うん、良いわよ、お店じゃないから簡単なものしか作れないけど、農園のNPCよりは品質良いの出せるわよ」
お姉さんはストレージのカバンから、フライパンや小麦粉、パンなんかを取りだす。
「クレープとサンドイッチ……あとはヨーグルトジャムくらいかしら?」
「うわ、どれも美味しそう」
瑠璃子の目がキラキラと輝きだす。可愛いものと甘いものには目がない女の子なのだ。
「迷ったんならサンドイッチがお勧め、ウチ、アレフィンバラでベーカリーやっててさ、パンはガチの手作り、天然酵母のオリジナルパンをブルーオーシャンの施設でスキャンしたのよ」
ブルーオーシャンとはSEXOの開発運営をしている会社で、その支店の中には料理を分子スキャンしてVRデータ化するサービスを行っている所もある。
「ホントにこのパンふかふかで良い匂い」
「待ってな、今サンドイッチにしてあげる」
そう言うとお姉さんは慣れた手つきでパンをナイフで切り分けてくれた。
「バターはスノーブランドのチューブバターで勘弁ね。お店では北海道のバターを使っているけど今は無いからさ」
「お気遣いなく、それで十分美味しそうですよ」
真司も食指が動いたらしい。いかにも美味そうなサンドイッチに目を細めた。
手際よくお姉さんがサンドイッチを作り、まずは瑠璃子に渡した。
「うわぁ……凄く美味しいよ。コレ」
サンドイッチを食べる瑠璃子の姿はどこか小動物を思わせた。
「おお、甘さと酸味のバランスが絶妙だな。これは美味い」
続いて食べた真司も感嘆の声を上げた。
「ストロベリアムのイチゴは栃木県のとちおとめだからね。ここは栃木とのコラボ村だから」
「ここの宿、イチゴの庭亭ってリアルの有名店から料理を集めているんですよね」
「そうそう、だからハズレはないよ。そこらのチェーン店の味よりずっといい」
「まあ、その分値段が張るけどね」
「初期村無料食事券があるんで」
「あはは、パッケについてるやつか、アレ良いよね」
お姉さんは口直しにヨーグルトジャムを作ってくれた。それもとても美味しかった。
「お代はいくらですか?」
と真司が聞くと、お姉さんは手を振って笑った。
「いいって、いいって、初心者からお金は取れないし、ウチのパン食べてくれたからさ、いくぶんかリアルマネー入るし」
バーチャルフードの流動食は売り上げの一部が、VR空間内でとった食事の素データの権利者に支払われる仕組みになっているのだ。
だから大手の食品メーカーなんかはこぞって自社の食品をデータ化してVRゲームやVRデートクラブ内などで積極的に販売している。
「どう? このゲームは楽しめそう?」
「ええ、凄い完成度に驚いてますよ」
真司は今までのゲームプレイについてざっと話した。
「あははは、キツネ退治しなかったんだ」
「ルリちゃんがいじめちゃダメって言うもんで」
「わかるわかる、で生産系の方法でクリアしたんだ。大変だったでしょ?」
「あれって生産系のクリア方法だったんだ」
瑠璃子が目を丸くして、直後嬉しそうに笑った。
「まあ、レベル1のシェフでも殴って倒せるから、そっちのやり方でクリアする人滅多にいないけどね」
「クエストのクリア方法も一つじゃなかったのか」
「うんうん、ドワーフとエルフの王国の和平のクエってのがあってね。そっちは最終クエを料理でクリアする方が簡単だからけっこうシェフが呼ばれたりするよ」
「う~ん、シェフも楽しそうだな~私もそっちにすれば良かったかなぁ」
瑠璃子が羨ましそうにお姉さんの装備を見つめた。
「シェフは自分専用のフードバフね。まあ強化料理ね……を食べないと、耐久も火力もクソだからね。戦闘でも効率悪くはないけど戦うたびにお金かかるのよ」
「初心者が始めるには向かないですか?」
真司が尋ねると、お姉さんは笑いながら答えた。
「レベル三十くらいまではひたすら畑で収穫して料理料理、レベル上がってもお金が余らないと狩りには行かないよ」
「でも、収穫も楽しそうだねぇ~、私モンスターいじめるよりそっちの方が良いかも」
「採集クエは序盤は結構良い金策になるよ。この村でも戦闘系のクエを一通りやったら、イチゴ狩って装備買うのが普通だよ」
「イチゴ狩っ! たのしそぉ~」
瑠璃子はモンスター狩りよりイチゴを狩りたいのだった。だってそっちの方が美味しそうだから。
「採集道具あげるわよ。初心者用のやつだと効率悪いから」
「いえ、そこまでは」
真司が遠慮すると、お姉さんは野菜をくれる田舎の農家のおばさんの様に採集道具を瑠璃子に押し付けてきた。
結局ありがたく道具は頂くことにした。
その後ギルドメンバーから呼び出しがあったらしく、別れの挨拶を告げ、お姉さんは転移門の方へ歩いて行った。
瑠璃子はお姉さんの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
「よし、お腹も膨れたし、イチゴを狩って装備を買うかな、ね、ルリちゃん」
「イチゴ狩楽しみ~」
瑠璃子はルンルンとスキップをしながら、ジェフおじさんと名前が付いた農園のNPCの元へ向かった。
「うん、ああ……そうだな、そろそろ昼時か」
メニューウィンドウの端にある時計を見ると、もう午後二時近かった。
「一度、ログアウトして昼飯食ってくるか?」
「ぶーー病院のご飯の味を知らない人はいいよね」
そう言うと瑠璃子は頬を膨らませてすねた。
「ごめんごめん、じゃあVRフードにするか」
「うん」
言うまでもなく瑠璃子は真司とご飯が食べたかったのだ。
ダイブギアには完全栄養食の流動食が備え付けられている。
VR空間内で食事をとるととったカロリー分の流動食が身体に供給されるのだ。
つまり、VR空間内の食事は現実の食事と等価なのだ。
登場当初、このVRフードはもてはやされ、高級レストランで食事ができるゲームやグルメ漫画の再現ゲームなんかが流行したことがあった。
一部の人間はこのVRフードを未来の荒廃した合成食の様な言い方もするせいで、悪い印象を持つ人も少なからずいたのだが。
あまり外に出歩けない瑠璃子にとって、外食と言えばVRフードだった。
「実はここストロベリアムの食堂はかなりイケてるらしくてさ、夜にはルリちゃんを誘おうと思ってたんだ」
「あっそうだったんだ。じゃあお昼は軽めにしようね」
「確か、農園の方にクレープがあったかな」
「よし、農園にレッツゴー」
瑠璃子は鼻歌を歌いながらのしのしと歩いて行った。
☆
農園の前で、二人は立ちどまった。ある人物が目についたからである。
その人物はキャンプ用のクッカーの様な調理器具をこれまたキャンプ用のストーブの様なものに乗せ(燃料は魔法の様だったが)うんうんうなりながらイチゴを煮ていた。
青に近い黒髪をポニーテールにして、テールの先端は腰の中ほどまで達していた。結構なロングヘアだ。
目が大きくて、顔に少しそばかすがあり、八重歯が可愛い女の子だった。
コック帽に白いエプロン、冒険者らしく革の鎧を着ていた。たぶんクラスはシェフだろう。
「じゅるり……凄く良い香りがするんですけど」
「ああ……美味そうなイチゴジャムだな」
「オネエサン、コンニチハッ!」
瑠璃子が大声で挨拶すると、お姉さんはぎょっとして顔を上げた。
「わっ……びっくりした」
「夢中になって煮てるそれ、美味しそうですね」
「ああ……うん、ジャムでシェフレべルを上げてたのよ」
「それ、食べられますか?」
「あ、うん、良いわよ、お店じゃないから簡単なものしか作れないけど、農園のNPCよりは品質良いの出せるわよ」
お姉さんはストレージのカバンから、フライパンや小麦粉、パンなんかを取りだす。
「クレープとサンドイッチ……あとはヨーグルトジャムくらいかしら?」
「うわ、どれも美味しそう」
瑠璃子の目がキラキラと輝きだす。可愛いものと甘いものには目がない女の子なのだ。
「迷ったんならサンドイッチがお勧め、ウチ、アレフィンバラでベーカリーやっててさ、パンはガチの手作り、天然酵母のオリジナルパンをブルーオーシャンの施設でスキャンしたのよ」
ブルーオーシャンとはSEXOの開発運営をしている会社で、その支店の中には料理を分子スキャンしてVRデータ化するサービスを行っている所もある。
「ホントにこのパンふかふかで良い匂い」
「待ってな、今サンドイッチにしてあげる」
そう言うとお姉さんは慣れた手つきでパンをナイフで切り分けてくれた。
「バターはスノーブランドのチューブバターで勘弁ね。お店では北海道のバターを使っているけど今は無いからさ」
「お気遣いなく、それで十分美味しそうですよ」
真司も食指が動いたらしい。いかにも美味そうなサンドイッチに目を細めた。
手際よくお姉さんがサンドイッチを作り、まずは瑠璃子に渡した。
「うわぁ……凄く美味しいよ。コレ」
サンドイッチを食べる瑠璃子の姿はどこか小動物を思わせた。
「おお、甘さと酸味のバランスが絶妙だな。これは美味い」
続いて食べた真司も感嘆の声を上げた。
「ストロベリアムのイチゴは栃木県のとちおとめだからね。ここは栃木とのコラボ村だから」
「ここの宿、イチゴの庭亭ってリアルの有名店から料理を集めているんですよね」
「そうそう、だからハズレはないよ。そこらのチェーン店の味よりずっといい」
「まあ、その分値段が張るけどね」
「初期村無料食事券があるんで」
「あはは、パッケについてるやつか、アレ良いよね」
お姉さんは口直しにヨーグルトジャムを作ってくれた。それもとても美味しかった。
「お代はいくらですか?」
と真司が聞くと、お姉さんは手を振って笑った。
「いいって、いいって、初心者からお金は取れないし、ウチのパン食べてくれたからさ、いくぶんかリアルマネー入るし」
バーチャルフードの流動食は売り上げの一部が、VR空間内でとった食事の素データの権利者に支払われる仕組みになっているのだ。
だから大手の食品メーカーなんかはこぞって自社の食品をデータ化してVRゲームやVRデートクラブ内などで積極的に販売している。
「どう? このゲームは楽しめそう?」
「ええ、凄い完成度に驚いてますよ」
真司は今までのゲームプレイについてざっと話した。
「あははは、キツネ退治しなかったんだ」
「ルリちゃんがいじめちゃダメって言うもんで」
「わかるわかる、で生産系の方法でクリアしたんだ。大変だったでしょ?」
「あれって生産系のクリア方法だったんだ」
瑠璃子が目を丸くして、直後嬉しそうに笑った。
「まあ、レベル1のシェフでも殴って倒せるから、そっちのやり方でクリアする人滅多にいないけどね」
「クエストのクリア方法も一つじゃなかったのか」
「うんうん、ドワーフとエルフの王国の和平のクエってのがあってね。そっちは最終クエを料理でクリアする方が簡単だからけっこうシェフが呼ばれたりするよ」
「う~ん、シェフも楽しそうだな~私もそっちにすれば良かったかなぁ」
瑠璃子が羨ましそうにお姉さんの装備を見つめた。
「シェフは自分専用のフードバフね。まあ強化料理ね……を食べないと、耐久も火力もクソだからね。戦闘でも効率悪くはないけど戦うたびにお金かかるのよ」
「初心者が始めるには向かないですか?」
真司が尋ねると、お姉さんは笑いながら答えた。
「レベル三十くらいまではひたすら畑で収穫して料理料理、レベル上がってもお金が余らないと狩りには行かないよ」
「でも、収穫も楽しそうだねぇ~、私モンスターいじめるよりそっちの方が良いかも」
「採集クエは序盤は結構良い金策になるよ。この村でも戦闘系のクエを一通りやったら、イチゴ狩って装備買うのが普通だよ」
「イチゴ狩っ! たのしそぉ~」
瑠璃子はモンスター狩りよりイチゴを狩りたいのだった。だってそっちの方が美味しそうだから。
「採集道具あげるわよ。初心者用のやつだと効率悪いから」
「いえ、そこまでは」
真司が遠慮すると、お姉さんは野菜をくれる田舎の農家のおばさんの様に採集道具を瑠璃子に押し付けてきた。
結局ありがたく道具は頂くことにした。
その後ギルドメンバーから呼び出しがあったらしく、別れの挨拶を告げ、お姉さんは転移門の方へ歩いて行った。
瑠璃子はお姉さんの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
「よし、お腹も膨れたし、イチゴを狩って装備を買うかな、ね、ルリちゃん」
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