【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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合同企画スタート(3)

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講演会で颯爽と現れて助けてくれた時はかっこいいな、なんて思ったのにその気持ちを返して欲しい。
きっと今は隣に華乃子ちゃんもいるし安心して見守ってくれていたんだろう。


一通りみんなと会話した私たちは会議をするためにそれぞれの席に着いた。
スケジュール感や今後の日程などが説明されていく。


どうやらevolveのチームリーダーは横山さんのようだ。
わざわざ統括チームのリーダーが出てくるなんて、それほど力を入れた企画なのか、それとも横山くんへの当てつけなのかは定かではない。


会議では今後一緒に仕事を行っていくevolveのチームメンバーも発表された。
そのメンバーが発表されたと同時に一気に私や横山くんに視線が集まる。


それもそうだろう、このメンツが揃えばこちらの会社の社員はみんなそういう顔をせざるを得ない。
私と横山くんと同じチームには安井さん、そしてもう1人男性のエンジニアとして吉岡晃よしおかあきらさんという方が一緒だ。


安井さんも見た目は整っていてとても人当たりの良さそうな雰囲気をまとっているが、吉岡さんも負けていない。
黒髪は目に少しかかるくらいの長さでしっかり整えられており、爽やかに微笑むその姿はとても優しそうだ。


それを横山くんも感じ取ったのか少しだけホッとしたように私の隣で息を吐いたのが分かる。
この場面だけ切り取れば仕事はやりやすそうに見えるが、実際はそうではない。


「はじめまして吉岡です。お2人とも、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。百瀬です」

「横山です」


ニコッと微笑むその姿はまさに紳士、という言葉が相応しいように感じた。
安井さんはというと、表情は崩さずに微笑みながら私たちを見つめている。


「横山さんはうちの統括リーダーの息子さんだと伺いました」

「あ、はい⋯そうです」

「やりずらいですよね。父親が一緒の企画なんて」


そう言って笑う吉岡さんに釣られるように横山くんもほんの少しだけ微笑んだ。
悪気のない会話だとは思うが、横山くんにとってお父さんの話はあまりしたくないだろう。


それをなんとなく察した私は話を変えようと、早速このチームのスケジュール感の調整などを持ちかけた。
しっかりと話を詰めて、滞りなく仕事を進められるように打ち合わせていく。


システムエンジニアにとってコミュニケーションはとても大切なため、2人と密に会話を繰り返した。
次に会うのは1週間後の今日ということに決まる。


今日はどのチームも顔合わせがメインのため、次に会うスケジュールを設定し、それぞれお開きとなった。
華乃子ちゃんもプログラマーチームで打ち合わせを終えたようで、私の元へやってくる。


「陽葵おつかれ。横山くんもおつかれ~」

「華乃子ちゃんもお疲れ様」

「お疲れ様です。百瀬さん、僕先に行ってますね」


気を利かせて横山くんが先に会議室を出ていくその背中を見送った。
理玖くんと笠井さんもevolveのリーダーである横山さんと何やら話をしている。


「何事もなく終えられた?」

「うん。チームには安井さんだけじゃなくて吉岡さんっていうエンジニアもいるから、穏やかだったよ」


そんなことを話していると私の元に吉岡さんがやって来た。
スケジュールのことで確認したいことがあるとのことだったので、華乃子ちゃんには少し席を外してもらう。


「えと、スケジュールでしたっけ?」

「はい。と、言いたいところなんですが、それは口実でして、少しお話したいことが⋯⋯」

「なんでしょうか⋯?」

「安井のことです」


彼女の名前が出た瞬間に思わず目を見開いてしまい、私と彼女の間に何かあることを安易にバラしてしまう形になった。
しかし吉岡さんは私の表情は想定通りとでも言いたげに、驚いた様子はなくただ真っ直ぐ私を見つめてくる。


会議室内ではチーム毎にまだ話している人たちもいるため、私たちがこうして2人で話していたとしても違和感はない。
私はその話を聞くために吉岡さんに向き直る。


「失礼ながら百瀬さんと安井は知り合いでしたか?」

「いえ、以前講演会に参加した際にお会いしたんです」

「そうでしたか。それならよかった」

「どうかしました?」

「いえ。親しい間柄だとしたらこれから言うことはお節介かなと思いまして」


どんな話の内容なのか全く検討もつかなかった。
親しい間柄だった場合は伝える必要のない内容とはどんなことなのだろうか。


言葉の続きを待っていると少しだけ距離を詰めてきた吉岡さんが小声で囁く。
しっかりと聞き取るために私も自然と彼の口元に近づくように耳を傾けた。


「安井は以前も別の会社と合同で企画をした時、その相手の会社の社員の方と一悶着ありまして」

「そうだったんですか?」

「はい。会社内でも少し目立つ存在なんです⋯⋯」

「目立つ⋯⋯」

「はい⋯まぁ主に、男性関係で、ですね⋯⋯」


その言葉を聞いた瞬間、私は思わず吉岡さんの顔を見つめてしまう。
近づいていたため思ったよりも近距離に彼の顔があり、驚いた私は1歩後ずさった。


私を見つめる瞳は真っ直ぐ覗き込んでいて私を捉えて離さない。
その瞳の奥は読み取ることが出来ず、吉岡さんの真意は分からなかった。


「ですので、俺も目は光らせておきますが、何かあったら遠慮なく言ってくださいね」

「あ、はい⋯分かりました」


人当たりのいい優しげな笑顔を浮かべる吉岡さんに思わず気を許してしまう。
この人とならしっかりと仕事が出来そうだとそう思った。


だけどそんな私たちの様子を理玖くんが眉間に皺を寄せて見つめていたなんて、私は気づかなかった。
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