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番外編

麗しい子爵令息とよからぬ噂

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荘厳な学び舎の門をくぐると、中は広くて、国中から貴族の子女が集まっているのだと思うと、胸が高鳴った。


「それではマリーンお坊ちゃま。荷物は寮の部屋の方へ届けておきますので。」

「ありがとう。」

「これから寂しくなりますね。長期休暇などで領地へ帰られるときはご連絡ください。いつでもお迎えにあがります。」


馬車を見送って、一歩、地面を踏む。


薄いピンク色の花びらが、美しく風に舞う。


「新入生はこちらでーす。」

呼ばれて、受付に行く。


「お名前は?」

「マリーン=ナスです。」


「まあ、すごい。1位入学者の方ね!新入生あいさつもするのでしょう?」

「はい。」

「じゃあ、案内するわね。挨拶がある方は別のところで待機するの。」


生徒会の方たちなのだろう。
上級生のお姉さまに連れられて、ステージの近くの席に座った。

すると、反対側に見覚えのある方がいて、小さく手を振ってくださる。


そうか。クローヴ殿下は3年生だったのだ。

あちらに座られているということは、私たちへの上級生挨拶は、きっと殿下なのだろう。

愛しいグリーンは殿下と入れ違いの入学だから、寂しいんだろうな。

1年生には今年、シナモン、アリーと、シュガー。
2年生にセイロンがいるんだっけ。

学校も広いし、爵位も違うからあんまり話しかけるのもよくないかもしれないな。
下位貴族が上位貴族に話しかけるのは失礼だし。

現に、一緒に入学したはずの3人は見当たらない。





今年の新入生にすごいのがいる。

学園では噂になっていた。

父親は爵位こそ子爵だが、アニス=スパイシー公爵の次に文官職ではえらくて、領地経営の天才と言われており、貴族の中でも有数の資産家だ。

母親は文武両道、元は異国の王に仕える側近だったらしく、その両親に育てられたその1年生は、剣や弓も、勉学も、全てにおいて隙がなく、さらに、母親似の見目麗しい黒髪の君であるという。


入学式の前から色めきだっている中、ヨーグル伯爵令息は面白くなかった。



自分よりカッコよくて、自分より頭がよくて、自分よりもお金持ち。


許せない。






僕は、お前の秘密を知っているんだぞ。

お父様から聞いたんだ。







お前は、ナス家の子じゃない。
父親は、異国の犯罪者だ。この国で処刑されたんだ。


母親はうまくやった。

未婚のお人よしを捕まえて、まんまと腹の子にこの国の貴族の地位を与えることに成功したんだから。


どうやって苦しめてやろう。



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