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本編
芽吹
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「気にしないでいいですよ。」
パーティ会場に向かいながら、クリス様のお兄様は言いました。
「あなたは立派な女性だ。恐ろしい思いをしながら、友人の子とはいえ、他人の子を守ったのだから。誇っていい。俺は、クリスたちが傍にいないと思って、あんなひどいことを言う彼女たちの方が好きになれないな。」
「…でも、事実ですから。」
「相手に原因があったのかもしれないし。もし本当にそうでも気にすることはない。あなたくらい素敵な女性なら、あなたさえいればいいという男だっているだろう。大体、クリスだって子どもをもてたのだから、子が欲しいなら頑張ればどうにかなるんじゃないかな。まあ、子どもだけがすべてではないと思うが。」
「そう、思ってくださる方もいるんですね…。そういえば、仕事で遅れたとか。クリス様ものすごく綺麗でしたよ。ちょっともったいなかったですね。」
「そうそう、それなんだよ。俺の領地は鉱山があるんだけど、ずっと開発をほったらかしててさ。最近人を雇って、詳しく地質を調べてもらって、今、武器とか工芸品とかに加工しているんだ。それで、卸先を開拓したりしているわけ。なんせ…
「お兄さま、キャサリン!」
私たちの姿を見て、クリス様がこちらへ駆けてきます。
「もう、お兄様は来ないと思ったよ。」
「可愛い弟の結婚式だから来たかったんだけどな。ほら、事業を始めたはいいんだけど、人手が足りなくてさ。卸先候補の人がどうしても今日しか会えないっていうもんだから…。」
「人手が足りないの? それなら丁度、ものすごく優秀な人が仕事を探してるんだけど。ねぇ、キャサリン?」
「えっ!」
「俺の実家なら、絶対に悪いようにはならないし、いつでも会えるし、安心かなって!」
ね、そうしなよ。
クリス様に言われて、私は、アッシュフォード男爵家で働くことになりました。
私の仕事は、書類の整理や契約関係の事務処理です。
交渉事は、女性だと威圧的になる方も残念ながらいるらしく、キリス様が付き添ってくださいます。
住み込みで、身の回りも男爵家の侍女さんがやってくれますし、これでいいのかしら?と思うけれど、毎日が充実しています。
弟に恥ずかしくないようにしたいからと、頑張ってらっしゃるキリス様を見て、私も支えていきたいと思うようになりました。
まだまだそれどころじゃない。
そう言って、婚約者さえいないキリス様。
でも、きっと、そう遠くないうちに、このお屋敷には奥様がいらっしゃるでしょう。
この方の奥様ならきっと幸せね…。
でも、そうしたら、私は出ていかなければ。
だって、つらいんだもの。
パーティ会場に向かいながら、クリス様のお兄様は言いました。
「あなたは立派な女性だ。恐ろしい思いをしながら、友人の子とはいえ、他人の子を守ったのだから。誇っていい。俺は、クリスたちが傍にいないと思って、あんなひどいことを言う彼女たちの方が好きになれないな。」
「…でも、事実ですから。」
「相手に原因があったのかもしれないし。もし本当にそうでも気にすることはない。あなたくらい素敵な女性なら、あなたさえいればいいという男だっているだろう。大体、クリスだって子どもをもてたのだから、子が欲しいなら頑張ればどうにかなるんじゃないかな。まあ、子どもだけがすべてではないと思うが。」
「そう、思ってくださる方もいるんですね…。そういえば、仕事で遅れたとか。クリス様ものすごく綺麗でしたよ。ちょっともったいなかったですね。」
「そうそう、それなんだよ。俺の領地は鉱山があるんだけど、ずっと開発をほったらかしててさ。最近人を雇って、詳しく地質を調べてもらって、今、武器とか工芸品とかに加工しているんだ。それで、卸先を開拓したりしているわけ。なんせ…
「お兄さま、キャサリン!」
私たちの姿を見て、クリス様がこちらへ駆けてきます。
「もう、お兄様は来ないと思ったよ。」
「可愛い弟の結婚式だから来たかったんだけどな。ほら、事業を始めたはいいんだけど、人手が足りなくてさ。卸先候補の人がどうしても今日しか会えないっていうもんだから…。」
「人手が足りないの? それなら丁度、ものすごく優秀な人が仕事を探してるんだけど。ねぇ、キャサリン?」
「えっ!」
「俺の実家なら、絶対に悪いようにはならないし、いつでも会えるし、安心かなって!」
ね、そうしなよ。
クリス様に言われて、私は、アッシュフォード男爵家で働くことになりました。
私の仕事は、書類の整理や契約関係の事務処理です。
交渉事は、女性だと威圧的になる方も残念ながらいるらしく、キリス様が付き添ってくださいます。
住み込みで、身の回りも男爵家の侍女さんがやってくれますし、これでいいのかしら?と思うけれど、毎日が充実しています。
弟に恥ずかしくないようにしたいからと、頑張ってらっしゃるキリス様を見て、私も支えていきたいと思うようになりました。
まだまだそれどころじゃない。
そう言って、婚約者さえいないキリス様。
でも、きっと、そう遠くないうちに、このお屋敷には奥様がいらっしゃるでしょう。
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でも、そうしたら、私は出ていかなければ。
だって、つらいんだもの。
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