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俺の王子様
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「泣いている顔もかわいいよ、ベネ。」
覆い被さる男が怖くて、はらはらと涙が溢れる。
優しいレイ。
お調子者で明るくて。
魔に強く魅入られてこうなったのか。
否。
きっと、これも彼の本心。
「 」
目を閉じ、重さが消え、開けると。
「大丈夫ですか!?」
大好きな大翔の声と顔。
「はると。」
はると、はると!
レイが!!
「クッ………。お前どこから! そうか、影か。お前には鍵も関係なかったか。」
あたまをおさえて床に転がっていたレイが立ち上がる。
「ベネディクト様。冷静に。貴方なら彼を元に戻せるはず。呼んで。彼を。彼への気持ちを!」
大翔はダガーナイフより刃の大きい小ぶりの剣を構える。
「退けえッ!!!!」
騎士団長の本気の剣が勢いよく大翔に向う。
大翔は、ステップを踏みながら、衝撃を反らし、時間を稼いだ。
「ごめんなさい、レイ。俺はレイがすき。だけど、レイと同じ好きじゃない。」
小さい頃から知っている。
明るくて優しいお兄さん。
俺が醜くても、変わらずかわいがってくれた。
それがどんなに嬉しかったか。
レイとは家族みたいで、恋人にもなれないけど。
でも、俺はレイを失いたくない。
いつまでもみんなで笑っていたいよ。
「レイお兄ちゃん。戻ってきて!」
幼かったころのように、彼の名を呼ぶ。
祈りが光り、レイを包んだ。
「むこうは何とかなっているかな。」
地下牢では、数十人の兵士とグレイスとグリーンが応戦している。
炎の剣がゆらめき、熱を伴って兵を斬り裂く。
風のナイフが兵の足元を刈る。
「グワああッ!!」
「何故、死んだはずの王子がッ!」
動けない程度に致命傷は避けて、兵士を転がした。
全員退けた。
先ほどグリーンと共闘するために壊した檻から、グリーンの家族が出てくる。
「ありがとうございます。王子!」
国務大臣の父親は恭しく頭を下げた。
家族は全員無事だ。
「脱出したいが、他の者も逃げられるなら逃したいな。」
グレイスはあたりを見渡した。
あまりに弱った者を連れて逃げるのは厳しい。
「……みなで逃げるのなら、まずは私を出してください……。」
暗い、向かいの牢からか細い声が聞こえる。
一番古くから閉じこめられているのかもしれない。
薄汚れて、生地もかなり傷んでいるが、白かったであろう装束には、見覚えがある。
そして、ぼさぼさで伸ばしっぱなしの髪の色もよく見れば、見覚えがあった。
「お前は…。」
牢を炎の剣で斬り裂き、不浄な中へ進む。
悪臭と、無残な姿に言葉が詰まる。
彼は、国の祭事を束ねる中央教会の司教じゃないか。
まだ30代半ばと若い司教で、虹色に輝く銀髪と陶磁のような肌や青い瞳が神秘的に美しい、誰もがうっとりと眺めていた美貌の人だったのに。
その顔は、原形をとどめないほどズタズタに痛めつけられている。
「大丈夫です、この檻からさえ出していただければ…。私は回復魔法が使えますから。」
骨もあちこち折れて、曲がっている。
その彼をグリーンと2人でゆっくりと外へ出してやる。
『癒しの光。』
ふわっと光が瞬き、司教の体をみるみる癒していく。そして、それは檻の中の者たちをも癒していく。
「さすがですね。」
「聖女様のように浄化や退魔はできませんが、癒すことならお任せください。」
元通りの美しい顔で、司教 ホワイト=スターチャイルドがほほ笑む。
あそこまで執拗に顔を痛めつけるなんて、敵はよほど美しい男が憎いらしい。
ハルトのように美しい男を娼婦落ちにさせたがるのも、憎いからなのだろうか。
それに、司教が捕らえられているということは、中央教会はどうなっている?
グリーンの頭の中では、ぐるぐる巡っていた。
「グリーン、まずは檻を壊すぞ。みんな元気になったから、一斉に逃げよう。力を合わせれば脱出できるはずだ。」
愛しのグレイスの声ではっとなる。
脱出の手伝いを手分けしながら、考える。
そういえば、以前、レイが王は司祭の息子と会っていたと言っていた。
もしかしたら、教会がーーーーーーー。
覆い被さる男が怖くて、はらはらと涙が溢れる。
優しいレイ。
お調子者で明るくて。
魔に強く魅入られてこうなったのか。
否。
きっと、これも彼の本心。
「 」
目を閉じ、重さが消え、開けると。
「大丈夫ですか!?」
大好きな大翔の声と顔。
「はると。」
はると、はると!
レイが!!
「クッ………。お前どこから! そうか、影か。お前には鍵も関係なかったか。」
あたまをおさえて床に転がっていたレイが立ち上がる。
「ベネディクト様。冷静に。貴方なら彼を元に戻せるはず。呼んで。彼を。彼への気持ちを!」
大翔はダガーナイフより刃の大きい小ぶりの剣を構える。
「退けえッ!!!!」
騎士団長の本気の剣が勢いよく大翔に向う。
大翔は、ステップを踏みながら、衝撃を反らし、時間を稼いだ。
「ごめんなさい、レイ。俺はレイがすき。だけど、レイと同じ好きじゃない。」
小さい頃から知っている。
明るくて優しいお兄さん。
俺が醜くても、変わらずかわいがってくれた。
それがどんなに嬉しかったか。
レイとは家族みたいで、恋人にもなれないけど。
でも、俺はレイを失いたくない。
いつまでもみんなで笑っていたいよ。
「レイお兄ちゃん。戻ってきて!」
幼かったころのように、彼の名を呼ぶ。
祈りが光り、レイを包んだ。
「むこうは何とかなっているかな。」
地下牢では、数十人の兵士とグレイスとグリーンが応戦している。
炎の剣がゆらめき、熱を伴って兵を斬り裂く。
風のナイフが兵の足元を刈る。
「グワああッ!!」
「何故、死んだはずの王子がッ!」
動けない程度に致命傷は避けて、兵士を転がした。
全員退けた。
先ほどグリーンと共闘するために壊した檻から、グリーンの家族が出てくる。
「ありがとうございます。王子!」
国務大臣の父親は恭しく頭を下げた。
家族は全員無事だ。
「脱出したいが、他の者も逃げられるなら逃したいな。」
グレイスはあたりを見渡した。
あまりに弱った者を連れて逃げるのは厳しい。
「……みなで逃げるのなら、まずは私を出してください……。」
暗い、向かいの牢からか細い声が聞こえる。
一番古くから閉じこめられているのかもしれない。
薄汚れて、生地もかなり傷んでいるが、白かったであろう装束には、見覚えがある。
そして、ぼさぼさで伸ばしっぱなしの髪の色もよく見れば、見覚えがあった。
「お前は…。」
牢を炎の剣で斬り裂き、不浄な中へ進む。
悪臭と、無残な姿に言葉が詰まる。
彼は、国の祭事を束ねる中央教会の司教じゃないか。
まだ30代半ばと若い司教で、虹色に輝く銀髪と陶磁のような肌や青い瞳が神秘的に美しい、誰もがうっとりと眺めていた美貌の人だったのに。
その顔は、原形をとどめないほどズタズタに痛めつけられている。
「大丈夫です、この檻からさえ出していただければ…。私は回復魔法が使えますから。」
骨もあちこち折れて、曲がっている。
その彼をグリーンと2人でゆっくりと外へ出してやる。
『癒しの光。』
ふわっと光が瞬き、司教の体をみるみる癒していく。そして、それは檻の中の者たちをも癒していく。
「さすがですね。」
「聖女様のように浄化や退魔はできませんが、癒すことならお任せください。」
元通りの美しい顔で、司教 ホワイト=スターチャイルドがほほ笑む。
あそこまで執拗に顔を痛めつけるなんて、敵はよほど美しい男が憎いらしい。
ハルトのように美しい男を娼婦落ちにさせたがるのも、憎いからなのだろうか。
それに、司教が捕らえられているということは、中央教会はどうなっている?
グリーンの頭の中では、ぐるぐる巡っていた。
「グリーン、まずは檻を壊すぞ。みんな元気になったから、一斉に逃げよう。力を合わせれば脱出できるはずだ。」
愛しのグレイスの声ではっとなる。
脱出の手伝いを手分けしながら、考える。
そういえば、以前、レイが王は司祭の息子と会っていたと言っていた。
もしかしたら、教会がーーーーーーー。
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