上 下
75 / 81

第75話 サタナキア

しおりを挟む
「ディアボロス、俺は何もしてないぞ」

 開口一番、主人公はディアボロスにそう告げた。 

「ええ、田中様は問題ありません。問題があるのはそこの愚妻です。田中様になんて事をしてるんだっ!」

 サタナキアは主人公の上でくるりと回り、ディアボロスに見せつけるように腰を上下に動かす。

「あなたは神界の管理があるからそう何度も異世界へはいけないでしょう? そこで私が彼について行く事にしたの。で、仲が悪かったら話にならないでしょ? だからこうして相性を確認……んっはぁぁぁぁぁぁっ♪」

 話の途中でサタナキアは絶頂を迎えていた。ディアボロスは目頭をつまみ呆れていた。

「だからと言ってセックスはないだろう。田中様の種はこれからあの世界で大事な役割を持つのだ。お前が浪費してどうする」

 主人公は不思議に思っていた。

「なぁ、浮気には何も言わないのか?」
「え? あぁ、特には。神の世界では一夫多妻、一妻多夫は当たり前なので」
「ああ、そう……くぅっ!」
「んっ……あぁぁぁぁぁぁぁっ♪ 凄い凄いっ! 何回射精しても硬いし濃いままだなんてぇぇぇっ♪」

 主人公は夫の目の前で妻に種付けしていた。

「……はぁぁ。田中様、もうそれは好きにして下さい。田中様に差し上げますので」
「はぁ?」
「サタナキアは便利ですよ? これから行く異世界とこの空間を自由に往き来出来ますので。まぁ……タクシー代わりにでも使ってやって下さい」
「運賃は精液ねっ♪」

 サタナキアは再び回転し、主人公に重なった。

「田中様、先ほど解放された四神にはすでに役割を与えておきました」
「役割は?」
「はい。まず……」

 ディアボロスの説明が始まった。

 まず解放した神はアフロディーテ、アルテミス、アテネ、タナトスの四柱だ。

 アフロディーテの役目は産まれる女を全て美しくさせる事らしい。これにより主人公が現地の人間を安定して増やせると考えたそうだ。主人公は別に見た目など気にしないのだが、ディアボロスは未だに主人公の事を深く理解していなかったらしい。

 次にアルテミス。アルテミスの役割は妊娠した女性に加護を与え必ず産ませる事らしい。どうやら異世界の人口は限界ギリギリまで減ってしまっているようだ。このアルテミスの働きが一番重要らしい。

 次はアテネだ。アテネの役割は主人公の守護。これから行く世界はゲームとは違い普通に死ぬ可能性がある。魔法もあればスキルもある世界らしい。そんな場所に主人公を放り出すのは心配だとディアボロスはアテネに主人公を絶対に守れと役目を与えた。

 そして最後はタナトスだ。タナトスの役割は異世界の男性機能の停止だ。これにより孕ませる事が出来るのは主人公だけになる。女性達が主人公の街に集まれるようにと配慮したらしい。つまり、異世界の男は全員種無し機能不全となるようだ。

「……エグいな」
「全部田中様のためですよ。ここまで協力していただいた特典として、田中様にはあの世界の管理権を譲渡させていただきます」
「管理権の譲渡……だと?」
「はい。あの世界で田中様は神となられるのです。そして世界が安定した暁には最後の特典として神界に招待いたします。……女神、好きですよね?」

 主人公はニヤリと笑みを浮かべる。

「別に女神ならゲームから連れていけるんだけどな?」
「はははっ、あれは貴殿方の世界での神です。私達の世界の神はそちらにはいませんので」
「……ほ~う」

 主人公はサタナキアを見る。ディアボロスもそうだが、この二神は地球で呼ばれる所での悪魔だ。もしかすると目の前の神が言っている世界とやらは……。

「ではサタナキア、田中様をよろしくお願いいたしますよ」
「ええ。ではナ~イト♪ 私達の世界に行きましょ♪」
「私達の世界って……。ま、良いや。じゃあな、ディアボロス。次に会うのは異世界を平定した後だ。お前の世界にいる女神、全員集めておけよ?」

 ディアボロスは笑った。

「ははっ、本当に頼もしい。選ばれたのが田中様で良かった。では田中様、いってらっしゃいませ」
「ああ。サタナキア、頼む」
「はぁ~い」

 こうして、主人公は異世界を平定すべく、デジタル世界からリアル世界へと旅立った。

「これで田中様に肉体が戻った。まさかゲームに入ったショックで死ぬとは思わなかったから焦ったよ。どうしようもないクズ九人は殺したけど……、田中様のは事故に近かったから焦りましたよ……。これで地球の神からの報復は防げましたか。やれやれです……」

 ディアボロスは空間を開き、自分の世界へと戻った。

「ルシファー様。ディアボロス、ただいま役目を完遂し帰還いたしました」
「……ご苦労。戦争は回避出来た?」
「ええ。彼方の神から依頼されたクズ九人の魂の洗浄と巻き込まれ事故で命を落としていた者の復活は完了いたしましたので……、彼方の神による報復はないものと」
「……そ。なら良いわ」

 ルシファーは玉座に腰掛けながら足を組み換える。

「田中騎士、本当にやらかしてくれたものだわ。お陰でサタナキアまで行っちゃったし」

 ルシファーの言葉遣いが崩れる。

「そう言えばサタナキアはルシファー様のお気に入りでしたね。サタナキア、田中様と子作りしてましたよ?」
「んなっ!? 私のサタナキアが!? お……おのれ田中騎士っ! どうしてくれようかっ!」
「ルシファー様、田中様を殺してはなりませんぞ! 異世界へと向かわせましたが彼はまだ人間、殺るなら神となり、この世界に呼んでからです! 今殺れば今までの苦労が水の泡に……!」 
「わかってるわよっ! でも許せないのっ! 田中騎士……! 魔界に来たら酷い目にあわせてやるんだからっ!」

 魔界。やはり主人公の思った通り、ディアボロスのいる世界は神界などではなかった。

 ここは魔界。堕天使ルシファーが治める世界であり、大悪魔ディアボロスが秘書官を務める世界である。この世界にいる者は魔神、悪魔、堕天使といったおよそ善と呼ぶには相応しくない者のみである。
 ディアボロスは主人公がゲーム世界で産ませた子の魂を魔界に送っていたのだった。主人公はその事実を知らない。連れ帰る事が出来るのは最初から存在しているキャラのみと思っている。
 しかしこの連れ帰るという行為すらディアボロスの能力により実現させたものだった。悪魔が望みを叶える対価は魂。主人公がゲーム世界で作った魂は膨大な数にのぼっており、魔界の住人は未だかつてないほど豊かに暮らしていた。

「田中様は必ずまたゲーム世界に行くはず。あの世界で産まれた命は田中様がゲームを出た瞬間に魔界へと転送されている。……これを知られたら私達はどうなるか……。怖い怖い……」

 ディアボロスはそう呟きつつ、執務室へと籠るのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...