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第3章 国づくり

第24話 砦を作ろう

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 フランと別れ数ヶ月、アースは二十一歳になっていた。あれから集落に戻り、アースは魔王リリスにも今後の計画を伝えた。リリスは計画を快諾し、アースに全てを任せた。

 アースは先ず海に沿って大地を復活させ、海岸に強固な砦と外壁を打ち立てた。外壁の下は海、砂浜は消し、海底は深く掘った。これで船は接岸しようにも出来なく、デモン大陸に上陸することは敵わない。外壁は死の大地の全て囲うように作られた。この外壁もただの外壁ではない。内部にはダンジョンで入手した鉱石から作り出した鉄骨を含み、並の魔法や砲撃ではびくともしない。そして外壁の上部には魔力で鉄球を電磁加速させ撃ち出せる魔導砲を発明し、設置した。核には増幅石を据え、少ない魔力でも一発で船を沈められる威力の攻撃を放てるようにした。これで守りはぬかりない。

 次に、外壁内の大地を全て復活させた。これにはさらに半年費やした。復活した大地は緑を取り戻し、まさに楽園と言わんばかりに陽の光を受け輝いている。

 そこからアースによる街づくりが始まった。魔族の住む家は現代知識を生かし、死の大地の砂を混ぜこんで作った鉄筋コンクリート製のマンションにした。死の大地の砂には思わぬ使い道があったのである。もう少し吸収しておけば良かったと少しだけ後悔したほどだ。

 さらに半年経ってアース二十二歳。ようやく街の土台が完成し、アースはそこに魔族を移した。魔族は街を見て腰を抜かしていたが、それが自分たちのためであると知り、アースに涙を流しながら感謝した。

 環境が整うと後は早かった。魔族は本来繁殖力が高い種族であり、その数を爆発的に増やした。外壁内は安全な土地であり、農業、畜産なども魔物に邪魔される事なく進められる。さらに、アースの知識でハウス栽培にまで着手し、死の大地は一転し生の大地へと大変貌を遂げたのである。

 かつて人間の傲慢により被害を受けた魔族は再び本来の姿を取り戻したのである。

「アースよ、そろそろ良いではないか! 妾と子作りしようぞ~!」
「だめだっての! フランともまだなのにリリスと先に子作りなんてしたら俺殺されちゃうよ!」
「しかしのう……。同胞らが毎日毎晩イチャコライチャコラ……対して妾は未だ純血ぞ? 王たる妾が率先して魔族を増やさんでどうする!」
「知らんがなっ!? 誰か他の魔族に頼めよ!?」
「い~や~じゃ! 妾はアース以外とはする気はないっ!」

 魔族の窮地を救ったアースに魔王は操を捧げていた。 

 フランと行動を別にしてからというもの、リリスのアタックが日増しに激しくなってきていた。だが神に誓って手は出していない。

「むぅぅぅ……そんなにあのエルフ娘が良いのか! 体型もそんなに違わんじゃろ!」
「諦めろよ、俺は身持ちが固いの! それより、頼んであった硬貨は?」
「はいはい。これじゃろ?」

 リリスは懐からコインを取り出しテーブルに並べた。

「うん、これこれ。いつまでも物々交換じゃ原始的だからね。貨幣導入は弊害も多いけど平等な取引には欠かせない制度だからさ。これがあれば真面目に働けば裕福な暮らしを送れるし、怠ければ苦しい生活が待っている。さらに商も興るし、労働に対する対価としてもわかりやすくなる。ありがとう、リリス」
「うむ。人間のような制度じゃが皆が平等になるなら文句はない」
「じゃあ来春からこれを使う事にしようか。それまでは準備期間だ。量産を頼めるかな?」
「わかったのじゃ。代わりにと言ってはなんじゃが今から子作りを……」
「だからしないっての!?」

 隙あらば貞操を狙ってくるリリスにアースは気を緩める暇もなかった。

 そして同日、ここは獣人の追いやられた地、ゴーデス大陸。

「陛下……もう限界ですっ! 度重なる侵略で我ら獣人はこのままでは!」
「……わかっておる。このままでは獣人に未来はない事もな……」
「どうされますか? いっそ獣人全員で人間を……」
「ならぬ。それでは本当に絶滅してしまう」
「ではどうすれば!」
「俺に良い案があるぜ? 獣王さんよ」
「む?」

 そこに火竜、水竜、風竜が姿を見せた。

「おお、バーン様! それにアクア様にヴァン様まで……! どうされましたか?」

 火竜が獣王に話し掛ける。

「実はよ、お袋から連絡が入ってな。俺んとこの末っ子が死の大地のあるデモン大陸を復活させちまったみたいでよ?」
「死の大地を復活? ま、まさか!?」

 水竜が瓶を傾けながらそれに続く。

「なんか末っ子は地の竜みたいでさ~、しかもすっごい才能あるらしいのよ~……ぐびぐび……」
「は、はぁ……」

 風竜も続く。

「僕達が護衛するからさ、デモン大陸に逃げない? ここはもうもちそうにないよ、獣王さん」
「……逃げる……ですか……」

 渋る獣王に火竜が言った。

「末っ子がよ、デモン大陸に楽園を作っちまったらしいんだわ。お袋がそれを空から見てよ、驚いてたぜ。あのお袋がだ。デモン大陸はこの大陸の三倍はある。どうよ、ここはいったん撤退して再起を図るとしねぇか?」
「……魔族は……そなたらの末っ子とやらは我らを受け入れてくれるだろうか?」

 それに火竜が拳を合わせニカッと口を三日月型に変える。 

「なぁに、受け入れさせてやんよ。竜の世界は力が全てだ。受け入れねぇってんなら力で押し通すのみよ!」
「……それだと恨まれてしまうのでは……」
「構いやしねぇよ。それで恨まれんのは俺だけだからな。さあ、どうする獣王。今回は凌いだがもう後はねぇぞ。今すぐ決めろ」

 獣王は悩みに悩み、決断を下した。 

「……わかった。守護者たる貴殿らの意思に従おう。我ら獣人は明日デモン大陸へと旅立つ」
「オッケーだ。道中は俺らに任せな。水竜がいれば潮の流れは操れるし、風竜がいれば帆船は前に進めねぇ。それでも近付く船は俺が焼き尽くしてやんよ。さあ、すぐに触れを出せ。こっからは時間との勝負だぜ?」
「うむ……。大臣!」
「はっ!」

 獣王は大臣を前にこう宣言した。

「これより我らはデモン大陸へと一時退却する! そこで守護者殿の家族の力を借り再起を図る! 全ての民を北の港へと急ぎ向かわせよ!」
「畏まりました!」

 こうして世界はゆっくりと動き始めるのであった。 
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