27 / 63
第3章 国づくり
第25話 獣人
しおりを挟む
守りと生活基盤を整え数ヶ月、魔族は順調にその数を増やしていた。そして見張り役をかって出る魔族や、 争い事がないわけではないので治安維持活動に従事する魔族、そして貨幣ができた事から商売を始める魔族などが現れ、壁の内部は大いに賑わっていた。
そんなある日、エルフの住む区画を作っていたアースの下に見張り役の魔族が大慌てで駆け込んできた。
「アースさまぁぁぁぁっ! た、大変ですっ!」
「ん~? どうしたの?」
「ふ、船です! 船団が海に!!」
「な、なんだって!? わかった、すぐ行く!!」
アースはその姿を竜へと戻し、急ぎ外壁の上へと向かった。そして外壁に立ったアースは先頭に並ぶ三つの船の船首にありえないものを目にする。
「……ん~? んん? いや、まさか……! あ、あれって……!?」
そう驚いていると、船首の者たちも外壁に立つアースに気付いたのか、同時に翼を広げ船から空へと浮かび上がった。
「俺は火竜バーン!」
「私は水竜アクア!」
「僕は風竜ヴァン!」
「えぇぇぇぇぇ……」
アースは兄達がゴーデス大陸にいると聞いていた。だがその兄達が今まさに目の前に浮かんでいる。
「お前が地竜だろ? 初めましてだな?」
「あ、あぁ。俺が地竜のアースだ」
「アースか。ならアースよ」
火竜はアースに頭を下げた。
「な、なに!?」
「頼むっ! あの船にいる獣人らをデモン大陸で面倒見ちゃくれねぇか!」
「……え? じ、獣人? あの船には獣人が乗ってるの? 確か獣人ってゴーデス大陸にいるんじゃ……」
水竜がアースに言った。
「ゴーデス大陸はもうダメなのよ。三大陸の人間連合軍が毎日のように攻めてきててね……。いくら私達竜が三体いても物量には敵わなかったのよ」
風竜が半ば怒りながらアースに愚痴をこぼす。
「本当にさぁっ! 奴らゴキブリみたく次々沸いてくるんだもんっ! 休む暇もなくてさぁっ!」
「……そう言うわけでな、俺たちは獣人の生き残りを引き連れて撤退してきたんだよ。頼むアース。助けちゃくれねぇか?」
三体の言葉を受け、アースが口を開いた。
「引き取るのは構わないよ。でも……絶対に争わないって誓える? 今ようやく魔族が落ち着いてその数を増やし始めたんだ。それに、近々エルフも呼ぶつもりだし。もし獣人が争いを起こすなら引き取る事は出来ない」
「ああ、争いなんてさせねぇよ。獣人は俺らが責任をもって監督する。だから土地だけなんとか貸してくれ」
「わかった。あれを見て」
「ん?」
アースは三体に外壁で囲った大地を指差して見せる。
「ありゃあ……街か?」
「そう。あの外壁の内部、海に近い南側を魔族が。そして森に近い西側をエルフが使う予定なんだ。残ってるのは東側だけなんだけど……あそこで大丈夫かな?」
「ああ。あんだけありゃ十分だ。獣人もあの十隻の船、各船に百人しか乗ってねぇ。総勢千名しか残っちゃいねぇからな」
「わかった。じゃああの東側の外壁まで船を誘導してくれるかな? 俺は外壁の上で待ってるからさ」
「ん? ああ」
そう言い、アースは東側の外壁へと移動した。三体の竜はそれぞれの船に戻る。
「火竜殿、どうなりましたか?」
「ああ、受け入れてくれるってよ」
「おぉっ! ありがたいっ!」
「ただし、壁の中には魔族とエルフが住む事になっている。そいつらには絶対に手を出すな。もし出したら俺がお前らを消し炭にしなきゃならなくなった」
「……我らは受け入れてられる身。どうして手を出せましょうか」
「その言葉、忘れんなよ?」
「はっ!」
そうして船団はアースの待つ東側へと移動し、崖の前で制止した。
「アース! 来たぞ~! どうすんだ~?」
「今開けるから待ってて!」
アースが何やらカチャカチャと外壁の一部を弄りスイッチを押す。すると船の前にある岸壁がゴゴゴゴと音をたてヅレていった。
「「「……は? な、なんだこれ!?」」」
中は船が余裕で通れる広さの洞窟になっていた。
「そこから入ってきて! 奥にドッグがあるから船はそこに! 全部入ったら入り口を戻して下に行くから待ってて!」
「お、おうっ! よし、行くぞ!」
十隻の船が並び洞窟に入る。全部入ったのを見届けたアースは再びスイッチを押し、入り口を閉じる。閉じると岸壁は入り口など無いかのようにピタリと閉じた。そして中は暗いかと思ったが、天井に光源が並び、まるで外のように明るい。
「こ、こりゃいったいなんなんだ?」
「凄いわねぇ……。誰がどうやって作ったのかしら?」
「まさかアース? まさかねぇ~」
道なりに進むと、奥には接岸出来る岸と造船ドッグが並んでいた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「あ、きた。お~い!」
アースが階段から降りて行くと丁度船が到着していた。
「船は適当につけちゃって!」
そこに先に竜達が降りアースを囲んだ。
「ア、アース。こりゃいったいなんだ!? あの鉄の塊はいったい……」
「ああ、あれは新しい船だよ。魔道船って言ってね。風がなくても走れる船なんだよ」
「は、はぁ?」
「アース? 天井の光は?」
「あれは魔道ライト。魔光石を使った魔道具だよ」
「アース? まさかこれ君が?」
「ん? うん。全部俺の作品だよ。魔族達がようやく落ち着いたからさ、俺も本業に戻ろうかってね」
「本業??」
「うん」
アースは三体の竜に向かってこう言った。
「俺は地竜アース。職業は魔道具技師だよ。よろしくね、兄さん、姉さん?」
三体の竜はポカーンとしつつ、アースを見るのであった。
そんなある日、エルフの住む区画を作っていたアースの下に見張り役の魔族が大慌てで駆け込んできた。
「アースさまぁぁぁぁっ! た、大変ですっ!」
「ん~? どうしたの?」
「ふ、船です! 船団が海に!!」
「な、なんだって!? わかった、すぐ行く!!」
アースはその姿を竜へと戻し、急ぎ外壁の上へと向かった。そして外壁に立ったアースは先頭に並ぶ三つの船の船首にありえないものを目にする。
「……ん~? んん? いや、まさか……! あ、あれって……!?」
そう驚いていると、船首の者たちも外壁に立つアースに気付いたのか、同時に翼を広げ船から空へと浮かび上がった。
「俺は火竜バーン!」
「私は水竜アクア!」
「僕は風竜ヴァン!」
「えぇぇぇぇぇ……」
アースは兄達がゴーデス大陸にいると聞いていた。だがその兄達が今まさに目の前に浮かんでいる。
「お前が地竜だろ? 初めましてだな?」
「あ、あぁ。俺が地竜のアースだ」
「アースか。ならアースよ」
火竜はアースに頭を下げた。
「な、なに!?」
「頼むっ! あの船にいる獣人らをデモン大陸で面倒見ちゃくれねぇか!」
「……え? じ、獣人? あの船には獣人が乗ってるの? 確か獣人ってゴーデス大陸にいるんじゃ……」
水竜がアースに言った。
「ゴーデス大陸はもうダメなのよ。三大陸の人間連合軍が毎日のように攻めてきててね……。いくら私達竜が三体いても物量には敵わなかったのよ」
風竜が半ば怒りながらアースに愚痴をこぼす。
「本当にさぁっ! 奴らゴキブリみたく次々沸いてくるんだもんっ! 休む暇もなくてさぁっ!」
「……そう言うわけでな、俺たちは獣人の生き残りを引き連れて撤退してきたんだよ。頼むアース。助けちゃくれねぇか?」
三体の言葉を受け、アースが口を開いた。
「引き取るのは構わないよ。でも……絶対に争わないって誓える? 今ようやく魔族が落ち着いてその数を増やし始めたんだ。それに、近々エルフも呼ぶつもりだし。もし獣人が争いを起こすなら引き取る事は出来ない」
「ああ、争いなんてさせねぇよ。獣人は俺らが責任をもって監督する。だから土地だけなんとか貸してくれ」
「わかった。あれを見て」
「ん?」
アースは三体に外壁で囲った大地を指差して見せる。
「ありゃあ……街か?」
「そう。あの外壁の内部、海に近い南側を魔族が。そして森に近い西側をエルフが使う予定なんだ。残ってるのは東側だけなんだけど……あそこで大丈夫かな?」
「ああ。あんだけありゃ十分だ。獣人もあの十隻の船、各船に百人しか乗ってねぇ。総勢千名しか残っちゃいねぇからな」
「わかった。じゃああの東側の外壁まで船を誘導してくれるかな? 俺は外壁の上で待ってるからさ」
「ん? ああ」
そう言い、アースは東側の外壁へと移動した。三体の竜はそれぞれの船に戻る。
「火竜殿、どうなりましたか?」
「ああ、受け入れてくれるってよ」
「おぉっ! ありがたいっ!」
「ただし、壁の中には魔族とエルフが住む事になっている。そいつらには絶対に手を出すな。もし出したら俺がお前らを消し炭にしなきゃならなくなった」
「……我らは受け入れてられる身。どうして手を出せましょうか」
「その言葉、忘れんなよ?」
「はっ!」
そうして船団はアースの待つ東側へと移動し、崖の前で制止した。
「アース! 来たぞ~! どうすんだ~?」
「今開けるから待ってて!」
アースが何やらカチャカチャと外壁の一部を弄りスイッチを押す。すると船の前にある岸壁がゴゴゴゴと音をたてヅレていった。
「「「……は? な、なんだこれ!?」」」
中は船が余裕で通れる広さの洞窟になっていた。
「そこから入ってきて! 奥にドッグがあるから船はそこに! 全部入ったら入り口を戻して下に行くから待ってて!」
「お、おうっ! よし、行くぞ!」
十隻の船が並び洞窟に入る。全部入ったのを見届けたアースは再びスイッチを押し、入り口を閉じる。閉じると岸壁は入り口など無いかのようにピタリと閉じた。そして中は暗いかと思ったが、天井に光源が並び、まるで外のように明るい。
「こ、こりゃいったいなんなんだ?」
「凄いわねぇ……。誰がどうやって作ったのかしら?」
「まさかアース? まさかねぇ~」
道なりに進むと、奥には接岸出来る岸と造船ドッグが並んでいた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「あ、きた。お~い!」
アースが階段から降りて行くと丁度船が到着していた。
「船は適当につけちゃって!」
そこに先に竜達が降りアースを囲んだ。
「ア、アース。こりゃいったいなんだ!? あの鉄の塊はいったい……」
「ああ、あれは新しい船だよ。魔道船って言ってね。風がなくても走れる船なんだよ」
「は、はぁ?」
「アース? 天井の光は?」
「あれは魔道ライト。魔光石を使った魔道具だよ」
「アース? まさかこれ君が?」
「ん? うん。全部俺の作品だよ。魔族達がようやく落ち着いたからさ、俺も本業に戻ろうかってね」
「本業??」
「うん」
アースは三体の竜に向かってこう言った。
「俺は地竜アース。職業は魔道具技師だよ。よろしくね、兄さん、姉さん?」
三体の竜はポカーンとしつつ、アースを見るのであった。
2
お気に入りに追加
1,200
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる