謎スキルを与えられた貴族の英雄譚

夜夢

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第一章 始まりの章

15 大繁盛

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 クレア他数名を雇入れ城の料理人からスキル【料理(極)】、そしてカインからスキル【調理(極)】をコピーし全員に付与した。それから訓練に一日費やしカフェをオープンした。

「申し訳ありません! ただいま満席となっておりま~す!」
「最後尾はこちらです! 並んでお待ち下さい!」

 オープンから閉店まで人が途切れず席は全て埋まった。この事態を受けオウルは閉店後急ぎ全員を集めミーティングを開いた。

「まさかこんなに客が入るなんて思わなかった」
「やばいぜオウル。並んでる客の中には待ちきれなくて帰った客もいたぞ」
「ゲームが原因でしょう。四人掛けの卓だけなかなか空きませんでした」

 オウルは調理スタッフに問題はなかったか尋ねる。

「調理は問題なかったです。配膳も特には」
「そうなると卓が足りないのか。カイン、目算で飲食目当てとゲーム目当て、どっちが多かった?」
「そうだな。女はカフェ、男はゲームかな。カフェの客はゲームの盛り上がりをちょっとうるさそうにしてた気がする」

 この意見を受けたオウルは悩んだ末隣の建物も使う事にした。

「建物を目的別で分けよう。それからテイクアウトもできるようにしよっか。今いる人はそのまま調理担当で配膳係を追加雇用だ。カイン、クレア先輩と酒場に行ってお客さんの中で働きたい人がいないか探してきてくれる?」
「わかった」
「調理担当の皆さんは今日はもう上がりで構いません。明日もよろしくお願いします」
「「「「お疲れ様でした~」」」」

 全員を帰したオウルはすぐさま隣の建物を改修し現在の店舗と接続した。現在の店舗をカフェ専用スペースとし、新店舗をゲーム専用スペースにした。

「こ、これで大丈夫かな。やってみなきゃわからない事だらけだ。さて、あとは売上計算か……今日寝れるかな」

 翌朝、カインとクレアが連れてきた人を雇用し、オープン二日目。店舗を分けた効果とテイクアウトの効果は絶大で、初日に比べ客を待たせる事なくなった。

「はぁ~、疲れた! この町のやつら全員来てるんじゃねぇかってくらい集まったな」
「嬉しい悲鳴だよ。ひとまず今日感じで営業して行こうか。一週間営業してみてまた問題がでたら対処していきます。皆さん、本日もお疲れ様でした」
「「「「お疲れ様でした~」」」」

 オープン二日目のよる、オウルはカインとクレアを連れて酒場に向かった。

「スリーカード!」
「はっ、フルハウスだ!」
「ぐあぁぁっ!?」

 酒場の客もゲームで大盛り上がりだった。カインの姿を見たオーナーは笑いながらカインの背中を叩いている。

「い、痛いっすよオーナー!」
「がはははっ、お前の持ち込んだゲームのお陰で連日大繁盛だ! あいつらゲームしながら酒ガバガバ飲むんだわ。料理する手間は減るし売上上がるしで最高だな」
「ならちょっと分け前あってもよくないっすか~?」
「あん? そんならしばらくここの飲食代半額にしたらぁ」
「マジっすか! さすがオーナー! ジョッキ三つ追加で!」
「おうっ」

 オウルの予想通り町に活気が戻ってきた。食糧難が去り娯楽もできた。オウルは二人に問い掛ける。

「さて、ひとまず娯楽も軌道に乗ってきたようだし次に何をするか考えようか」
「次? おいおい、これ以上は流石に手が回らないぜ?」
「はい。今はまだお店で手一杯です」
「いや、店は二人に任せるよ」
「「え?」」

 オウルは驚く二人に言った。

「今回の件は町に活気を取り戻す目的の他に魔大陸送りになった人を救済する目的があったんだよ。有用なスキル持ちは転移魔法陣で送られるけどそうじゃない場合は船で海岸に捨てられるんだろ?」
「ああ。酷い扱いだったぜ。な、クレア?」
「そうですね。道中には魔獣もいましたし私達のように心得がない人は町までも辿り着けないでしょう」
「そこなんだよ。俺はそういう人達を救いたいんだ。けど海岸に町や街道を作ったら怪しまれるし、どうしたものか迷ってるんだ」

 クレアのいうように海岸から魔族の町までは距離がある。辿り着くまでに魔獣と戦うか必死で逃げるしか方法はない。加えて魔族は人間に恨みを持っている。全てとはいわないが辿り着いたとしても暮らしていくにも一苦労だ。

「お前がそこまで考えてやる必要はないんじゃないか? そりゃ捨てられた奴らは可哀想だと思うけどよ」
「私はオウル君がいなかったら今頃野垂れ死んでいたかもしれませんので、その考えは素晴らしいものだとは思います。けれど送られてくる人間全てが善人とは限りません。貴族ともなれば思想から操作されていますので」
「なるべくなら選別はしたくないんだよ。捨てられたスキルも使い方次第で化ける事もあるし」

 結局その場では具体案が出ず解散となった。二人と別れ魔王城に戻ったオウルは魔王シリルに自分の考えを投げかけてみた。

「そうじゃの。妾はそのカインとやらの考えに賛同じゃな。そもそも全てではないが教会には手を回しておる。必要なスキル持ちは転移でこの町に来ているからの」
「けど……」
「確かに犠牲者には酷じゃと思うがの。じゃが忘れるなよオウル。魔族も獣人も亜人もすべからく人間が嫌いじゃ。転移させている人間は全て審査を通った者じゃ。ま、考えるだけ無駄じゃ」
「はい、わかりました」

 魔王シリルにここまで言われたら諦めるしかない。オウルは心にしこりを残しながらも眠りに就いたのだった。
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