16 / 37
第一章 始まりの章
16 オウル亜人国へ
しおりを挟む
娯楽ができ町に活気が出てきた。店はもうカインとクレア二人をいれば回せる。次の店を考えようとしていたオウルだったが魔王と弱者に対する意見が食い違ったため妙なわだかまりを覚えていた。
そこでオウルは他の国の王はどう考えているのか知りたくなり、魔王と店に書き置き一つ残し一人南へと向かった。
「なんか違うんだよな。いくら人間が嫌いだって言っても中にはカインやクレア先輩みたいに善い人だっている。ここに送られてくる人達は皆人間に裏切られ捨てられた人達だ。よっと」
《ガァァァァッ!!》
街道が通り魔獣は近付かないのだが、オウルはあえて街道を外れ森の中を歩いていた。
「俺はまだまだ弱い。この機会にもっと強くなろう。それにやはり俺の思った通りだ」
オウルは倒したワイバーンの身体に手を触れた。
「よし、きた! スキル【飛行】をコピーできたぞ」
魔獣の中にもスキルを持つ者がいるのではと考えたオウルは遭遇した魔獣に片っ端から触れスキルをコピーしていった。レベルアップと並行しスキルも増える。オウルはメキメキと力を増やしていった。
「魔獣は儀式を受けていないのにどうやってスキルを得たんだろ。生まれた時から持ってるのかな」
オウルの想像は的を得ていた。魔獣は生まれた時から種族スキルを持ち、生きた年数だけスキルレベルが増す生物だ。長寿の魔獣が強い理由がここにある。
「しかしまぁ……なんだこの大陸! 魔獣が桁違いに多い! ゆっくり休む暇もないぞ!」
一体倒し数歩歩くとまた別の魔獣が飛び出してくる。
「セヴァンスさん達よくあの短期間で街道通したよな。腕が良いのか……ってそうか、弱体化したのセヴァンスさんだけだったっけ」
セヴァンスだけ執事スキルをコピーするために魔王シリルが魔王眼でレベルドレインしていた。そしてオウルが付与した百名のレベルはそのままだった。
「あの抜け目ないセヴァンスさんだから部隊の人達は高レベル、それが百人もいたら……なんかズルい」
危なくなったら街道に出れば良い。そう考えつつオウルはひたすら魔獣と戦闘を繰り返し、亜人の国が見えたのは出発から一ヶ月程経った頃だった。
「あれが……国??」
ようやく見えた亜人の国は国と呼ぶには見すぼらしいものだった。城もなく建物はあばら屋、国を囲む柵は朽ち果て気味の木の柵だ。
「嘘だろ……? 周りは魔獣の出る森だぞ? 亜人はよほど強いのか? 少し気を引き締めていくか」
一ヶ月の激戦でオウルのレベルは魔王シリルを超えた。魔獣のスキルも身に付け強さには申し分ない。オウルは慢心を捨て亜人国の入口へと向かった。
「に、人間!? 止まれっ! なぜ人間がここにいる!!」
「近付いたら攻撃するぞ!!」
入口に武装した門番が二人槍を構え立っていた。種族はリザードマンだ。オウルは両手を上げ敵意がない事を示す。
「いきなりの訪問で申し訳ありません。俺は魔王シリル様が配下、オウルと申します。亜人国の王と面会したく参りました」
「魔王様の配下? オウル……ってあの錬金術師の!?」
「えっと、はい。錬金術師もしてます」
門番二人が顔を見合わせ槍を捨てた。
「おぉぉぉっ! 我ら魔大陸に暮らす者達の救世主殿ではないか! 失礼いたしました!」
「い、いえ」
「亜人の国へようこそ! ささ、中へ。私が姫の下まで案内いたしましょう!」
「あ、ありがとうございます。お世話になります」
亜人は人間が嫌いだからと警戒していたが思いの外フレンドリーでオウルは少し拍子抜けしていた。だが門番の案内で亜人の町に入るとなんとも言えない感情がオウルを包みこんだ。
「これは……なんというか……」
「驚きましたでしょう。私共の国は魔族の国に比べ貧しくて」
「皆さん活気がないですね」
「最近になってようやく食糧が手に入るようになりましたがね、それでもまだ数を増やすのには足りんのですわ」
亜人はかなり数を減らしていた。食糧は魔獣の肉しかなかったため生きていくのにも苦労していた。
「こちらが我らが王である吸血姫エレナ・ブラッド様のおわす建物になります。参りましょう」
「あ、はい」
「失礼いたす! 魔族国より錬金術師オウル殿が参られました! エレナ様にお目通り願いたい!」
すると建物の中から二人の亜人が出てきた。出てきた二人は小柄で顔を布で隠しているため種族は不明だ。
「おぉ! オウル殿、あの二人はエレナ様の側近で右が【ネメア】殿、左が【サリア】殿です」
「は、始めまして。魔族国からきましたオウルと申します」
オウルが挨拶すると二人がすっとオウルの前に立った。
「エレナ様がお待ちです。一ヶ月も何を?」
「え?」
「魔族国から伝令が届いておりました。まさか街道を通らなかったのでしょうか?」
「え、えっと……はい。森で修行しながらきました」
「お一人で……ですか?」
「はい」
すると二人が声を合わせ言った。
「「なんと無謀な! よく生きて辿り着けましたね!?」」
「え?」
二人がオウルに詰め寄る。
「あの森は深く奥には私達ですら知らない魔獣がいるのですよ!?」
「魔獣は倒しても倒しても魔素溜まりから湧き出します! お一人でなど無茶の極みなのですよ」
「い、いやっ。あの、街道の近くだったから大丈夫かなって」
「大丈夫なわけないでしょう!? いくら街道に魔獣除けが施されていてもそれを物ともしない魔獣はいるんですよ? あなたが死んでいたら私達は魔王様に顔向けできなかったのですよ?」
「そ、それは申し訳ない……というか近いです」
二人の身体がオウルに密着している。二人とも小柄ではあるがシリルよりは出るとこは出ていた。そんな二人がオウルの両腕にしがみつき門番に言った。
「案内ご苦労様。あとは私達が」
「参りましょう。エレナ様が心労で倒れる前に」
「ちょっ、自分で歩けるからっ」
「「逃がしませんよ」」
門番は引きずられていくオウルを見て呟いた。
「あの双子……相変わらず厳しいなぁ。さて、警備に戻りますかね」
こうしてオウルは出発から一ヶ月後、目的地である亜人国に到着したのだった。
そこでオウルは他の国の王はどう考えているのか知りたくなり、魔王と店に書き置き一つ残し一人南へと向かった。
「なんか違うんだよな。いくら人間が嫌いだって言っても中にはカインやクレア先輩みたいに善い人だっている。ここに送られてくる人達は皆人間に裏切られ捨てられた人達だ。よっと」
《ガァァァァッ!!》
街道が通り魔獣は近付かないのだが、オウルはあえて街道を外れ森の中を歩いていた。
「俺はまだまだ弱い。この機会にもっと強くなろう。それにやはり俺の思った通りだ」
オウルは倒したワイバーンの身体に手を触れた。
「よし、きた! スキル【飛行】をコピーできたぞ」
魔獣の中にもスキルを持つ者がいるのではと考えたオウルは遭遇した魔獣に片っ端から触れスキルをコピーしていった。レベルアップと並行しスキルも増える。オウルはメキメキと力を増やしていった。
「魔獣は儀式を受けていないのにどうやってスキルを得たんだろ。生まれた時から持ってるのかな」
オウルの想像は的を得ていた。魔獣は生まれた時から種族スキルを持ち、生きた年数だけスキルレベルが増す生物だ。長寿の魔獣が強い理由がここにある。
「しかしまぁ……なんだこの大陸! 魔獣が桁違いに多い! ゆっくり休む暇もないぞ!」
一体倒し数歩歩くとまた別の魔獣が飛び出してくる。
「セヴァンスさん達よくあの短期間で街道通したよな。腕が良いのか……ってそうか、弱体化したのセヴァンスさんだけだったっけ」
セヴァンスだけ執事スキルをコピーするために魔王シリルが魔王眼でレベルドレインしていた。そしてオウルが付与した百名のレベルはそのままだった。
「あの抜け目ないセヴァンスさんだから部隊の人達は高レベル、それが百人もいたら……なんかズルい」
危なくなったら街道に出れば良い。そう考えつつオウルはひたすら魔獣と戦闘を繰り返し、亜人の国が見えたのは出発から一ヶ月程経った頃だった。
「あれが……国??」
ようやく見えた亜人の国は国と呼ぶには見すぼらしいものだった。城もなく建物はあばら屋、国を囲む柵は朽ち果て気味の木の柵だ。
「嘘だろ……? 周りは魔獣の出る森だぞ? 亜人はよほど強いのか? 少し気を引き締めていくか」
一ヶ月の激戦でオウルのレベルは魔王シリルを超えた。魔獣のスキルも身に付け強さには申し分ない。オウルは慢心を捨て亜人国の入口へと向かった。
「に、人間!? 止まれっ! なぜ人間がここにいる!!」
「近付いたら攻撃するぞ!!」
入口に武装した門番が二人槍を構え立っていた。種族はリザードマンだ。オウルは両手を上げ敵意がない事を示す。
「いきなりの訪問で申し訳ありません。俺は魔王シリル様が配下、オウルと申します。亜人国の王と面会したく参りました」
「魔王様の配下? オウル……ってあの錬金術師の!?」
「えっと、はい。錬金術師もしてます」
門番二人が顔を見合わせ槍を捨てた。
「おぉぉぉっ! 我ら魔大陸に暮らす者達の救世主殿ではないか! 失礼いたしました!」
「い、いえ」
「亜人の国へようこそ! ささ、中へ。私が姫の下まで案内いたしましょう!」
「あ、ありがとうございます。お世話になります」
亜人は人間が嫌いだからと警戒していたが思いの外フレンドリーでオウルは少し拍子抜けしていた。だが門番の案内で亜人の町に入るとなんとも言えない感情がオウルを包みこんだ。
「これは……なんというか……」
「驚きましたでしょう。私共の国は魔族の国に比べ貧しくて」
「皆さん活気がないですね」
「最近になってようやく食糧が手に入るようになりましたがね、それでもまだ数を増やすのには足りんのですわ」
亜人はかなり数を減らしていた。食糧は魔獣の肉しかなかったため生きていくのにも苦労していた。
「こちらが我らが王である吸血姫エレナ・ブラッド様のおわす建物になります。参りましょう」
「あ、はい」
「失礼いたす! 魔族国より錬金術師オウル殿が参られました! エレナ様にお目通り願いたい!」
すると建物の中から二人の亜人が出てきた。出てきた二人は小柄で顔を布で隠しているため種族は不明だ。
「おぉ! オウル殿、あの二人はエレナ様の側近で右が【ネメア】殿、左が【サリア】殿です」
「は、始めまして。魔族国からきましたオウルと申します」
オウルが挨拶すると二人がすっとオウルの前に立った。
「エレナ様がお待ちです。一ヶ月も何を?」
「え?」
「魔族国から伝令が届いておりました。まさか街道を通らなかったのでしょうか?」
「え、えっと……はい。森で修行しながらきました」
「お一人で……ですか?」
「はい」
すると二人が声を合わせ言った。
「「なんと無謀な! よく生きて辿り着けましたね!?」」
「え?」
二人がオウルに詰め寄る。
「あの森は深く奥には私達ですら知らない魔獣がいるのですよ!?」
「魔獣は倒しても倒しても魔素溜まりから湧き出します! お一人でなど無茶の極みなのですよ」
「い、いやっ。あの、街道の近くだったから大丈夫かなって」
「大丈夫なわけないでしょう!? いくら街道に魔獣除けが施されていてもそれを物ともしない魔獣はいるんですよ? あなたが死んでいたら私達は魔王様に顔向けできなかったのですよ?」
「そ、それは申し訳ない……というか近いです」
二人の身体がオウルに密着している。二人とも小柄ではあるがシリルよりは出るとこは出ていた。そんな二人がオウルの両腕にしがみつき門番に言った。
「案内ご苦労様。あとは私達が」
「参りましょう。エレナ様が心労で倒れる前に」
「ちょっ、自分で歩けるからっ」
「「逃がしませんよ」」
門番は引きずられていくオウルを見て呟いた。
「あの双子……相変わらず厳しいなぁ。さて、警備に戻りますかね」
こうしてオウルは出発から一ヶ月後、目的地である亜人国に到着したのだった。
11
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる