僕が玩具になった理由

Me-ya

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止まない雨-眞司の章-

~エピローグ~

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「……………じゃ」

俺が話し終わると同時に、優紀は横に置いてあった鞄を掴んで立ち上がる。

それを見て、俺は慌てた。

「…本当に今日、出て行くのか?…雨も降っているし、荷物も…」

その俺の言葉に、優紀は荷物はこれだけだからと掴んだ鞄を掲げてみせる。

優紀の言葉に、俺は改めて部屋の中を見回す。

多いとはいえないが、確かにあったはずの優紀の荷物が確かに無くなっている。

(いつの間に……………)

その事に今更ながら気付き、愕然とする。

俺に黙って私物を処分した事にショックを受けたわけじゃない。

優紀に言われるまでその事に気付きもしなかった自分にショックを受けていた。

いくら自分の事で頭が一杯だったとはいえ………。

優紀が立ち去ろうとするのを阻止するように行く当てはあるのかと聞くと、優紀は友人のところにしばらく泊まらせてもらうと言う。

優紀にそんな友人がいるなんて初耳だ。

(どんな友人なんだ)

そう聞こうとして…聞く権利がない事に気付く。

聞いても俺にはどうしようもない。

優紀は出て行くのだから。

(もしかして、和巳のところだろうか)

-結局、あの後、和巳には絶好を言い渡された。

和巳なら優紀に惚れているし、優紀を大切にしてくれるだろう。

俺が雅樹のところへ行って部屋を出た時、部屋から出ずに食事もなくなった優紀を心配して、あれこれと世話を焼いていたと聞く。

(和巳となら、優紀は幸せになるだろう)

思い出したくない記憶には蓋をして、希望的観測で考える。

自分勝手としりながらも。

優紀の幸せを。

「……………じゃ」

そう言われて思わず、無意識に優紀の手首を掴み……何を言おうか考えて…優紀に言わなければならない言葉を思い出した。


「…今まで…その……悪かった」

そんな言葉しか出てこない自分に、俺は内心で舌打ちした。

違う。

本当は…キチンと謝りたいのに、言葉が出てこない。

だが…俺が謝った事によほど吃驚したのか、優紀は一瞬、マジマジと俺を凝視したが、すぐにニッコリと笑う。

その笑顔にドキリとした。

「………さよなら」

優紀のその言葉に一瞬、引き止めたい思いに駆られるが、もう俺に言う言葉は何もない。

(だいたい、引き止めて何を言うつもりなんだ)

俺から別れを告げたのに。

雨の中、1度も振り返らずに歩いて行く優紀の後ろ姿を俺はただ、黙って見詰めていた。

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