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ずれてゆくこわれてゆく-優紀の章-
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「…合格だよ、おめでとう…君をボクの玩具にしてあげる」
保は楽しそうに手を叩く。
僕はその声をバスルームの床に倒れたまま聞いていた。
「嬉しい?」
保の問いに、僕は顔に笑みを貼り付けたまま、コクコクと頷く。
何度も気を失いそうになりながらも、ギリギリで踏みとどまった。
まだ、気を失う訳にはいかない。
保に話がある。
保の玩具になってしまう前に……………。
それだけは…どうしても……。
(頼まないと………)
僕が壊れる前に……………。
軋む腕を動かして保の足首を掴む。
「……お願………」
あちこち軋んで悲鳴を上げている上半身をなんとか起こして床に座り込み、カラカラに渇いた喉から声を絞り出した。
「ボクにお願い?…玩具になったばかりのくせして生意気だよ」
保は足首を掴んだ僕の手を振り落とすと、僕の手の甲を素足で踏んだ。
「…ぅあ……っ!!」
保は僕の手の甲を踏みつけたまま、僕を見下ろした。
「…ま、いいや…聞くだけ聞いてあげる。言ってみて」
僕は乾いた唇を舌で舐めて何度も湿らしてから口を開いた。
「…僕は…眞司に…捨てられるまでは…眞司のペットで…だから…それまでは眞司と一緒に暮らしたい…」
パンッ!!
「……あ………っ!!」
保に左頬を叩かれ、疲れ切っていた僕の身体は簡単にバスルームの床に倒れ込んだ。
「玩具がボクにそんな頼み事なんか……許されると思っているの?」
保は僕を見下ろし冷たくそう言って、バスルームを出て行く。
「…お願い…します…っ…そんなに…長くは待たせない…眞司は……眞司には好きな人が…いる…いるから…だから…眞司から……眞司の口から…最後の言葉を……聞いて…終わらせたいんだ……っ…だから……っ!!」
僕は床を這うようにして、必死で保の後を追いかけ叫ぶ。
「…そんなに大きな声を出さなくても聞こえるよ…フン…なる程…お前が眞司が部屋を出た後もその部屋にいたのは、眞司から別れを告げてもらうためか………分かった…いいよ、待ってあげても」
上着を羽織りながら何か考えていた保は、少ししていい事を思い出したとでもいうようにニヤリと笑う。
思ったよりも簡単に了承をもらった僕はホッとしたが、その笑いを見て、嫌な予感がする。
保が僕を見詰める。
楽しそうに。
「ただし………確約が欲しいな」
(……確……約……)
「だって君の気が変わって逃げられても困るしさ、眞司が君にほだされて手に手を取って…なんて事も考えられるわけじゃん。だから、口約束なんかじゃ信じる事はできないね。キチンとした確約が欲しいんだよね…だから、はい」
戸惑う僕の目の前に安全ピン。
「これでその可愛い乳首に穴を開けて。ピアス、付けるから」
(………え……?)
「とりあえず眞司に付けようと思っていたピアスがあるから、それ付けて。大丈夫、君がボクの元へ来たら君に似合うピアスを選んであげるから…そのピアス、GPSがついているから逃げる事ができないだろ?丁度いいと思ってね…消毒はすんでいるから、心配いらないよ」
目の前にある安全ピンを震える指で取ろうとして…保にひょいと避けられた。
「最初はボクが見本を見せてあげる」
ニッコリと笑いながらも保は僕の左胸の乳首を引っ張り、躊躇う事なく針の先を勢いよく乳首に………。
「≒℃ρη$≅€ζл∅§∽¢τ⇔∝∀φ∵ℵξжэ‡∀∂ыーッ!!…∽φℵ∀эーっ!!」
疲れ切っていた身体のどこにこんなの力が余っていたのだろうと自分でも思うほどの凄い力で保を突き飛ばし、獣のような咆哮を喉から迸らせ、床をのたうち回った。
「…アハハ…何、言ってんのか分かんないよ」
保が僕を見て、笑う。
(…痛い……っ…痛い……っ…痛いよ……っ!!)
僕が床を転げ回り喚いている姿を笑いながら見ている保の手にはもうひとつ、安全ピンが握られている。
「…どうする?…止める?」
「……………それ……付けたら………本当に……?」
「ああ、眞司がお前を捨てるまで待ってもいいよ…眞司に手を出す事もしない」
その言葉に、僕はヨロヨロと立ち上がる。
まだ安全ピンが刺さったままの左胸はズッキンズッキンと痛むけど。
その痛みは全身に広がっていくけど。
震える指で僕は保から安全ピンを受け取り、自分の右胸の乳首に当てる。
先程、身体中を貫いた痛みを思い出す。
言葉にできない程の痛みだった。
その痛さを思い出しただけで、身体中を冷や汗が流れる。
(…でも…これで眞司は自由になれる……眞司が僕を捨てる日まで…その少しの間でも…眞司と一緒にいる事ができる………)
僕は眞司の顔を思い浮かべ…安全ピンを握った手に力を込め、心の中で眞司の名前を叫んだ。
(………………眞司…………………っ!!)
保は楽しそうに手を叩く。
僕はその声をバスルームの床に倒れたまま聞いていた。
「嬉しい?」
保の問いに、僕は顔に笑みを貼り付けたまま、コクコクと頷く。
何度も気を失いそうになりながらも、ギリギリで踏みとどまった。
まだ、気を失う訳にはいかない。
保に話がある。
保の玩具になってしまう前に……………。
それだけは…どうしても……。
(頼まないと………)
僕が壊れる前に……………。
軋む腕を動かして保の足首を掴む。
「……お願………」
あちこち軋んで悲鳴を上げている上半身をなんとか起こして床に座り込み、カラカラに渇いた喉から声を絞り出した。
「ボクにお願い?…玩具になったばかりのくせして生意気だよ」
保は足首を掴んだ僕の手を振り落とすと、僕の手の甲を素足で踏んだ。
「…ぅあ……っ!!」
保は僕の手の甲を踏みつけたまま、僕を見下ろした。
「…ま、いいや…聞くだけ聞いてあげる。言ってみて」
僕は乾いた唇を舌で舐めて何度も湿らしてから口を開いた。
「…僕は…眞司に…捨てられるまでは…眞司のペットで…だから…それまでは眞司と一緒に暮らしたい…」
パンッ!!
「……あ………っ!!」
保に左頬を叩かれ、疲れ切っていた僕の身体は簡単にバスルームの床に倒れ込んだ。
「玩具がボクにそんな頼み事なんか……許されると思っているの?」
保は僕を見下ろし冷たくそう言って、バスルームを出て行く。
「…お願い…します…っ…そんなに…長くは待たせない…眞司は……眞司には好きな人が…いる…いるから…だから…眞司から……眞司の口から…最後の言葉を……聞いて…終わらせたいんだ……っ…だから……っ!!」
僕は床を這うようにして、必死で保の後を追いかけ叫ぶ。
「…そんなに大きな声を出さなくても聞こえるよ…フン…なる程…お前が眞司が部屋を出た後もその部屋にいたのは、眞司から別れを告げてもらうためか………分かった…いいよ、待ってあげても」
上着を羽織りながら何か考えていた保は、少ししていい事を思い出したとでもいうようにニヤリと笑う。
思ったよりも簡単に了承をもらった僕はホッとしたが、その笑いを見て、嫌な予感がする。
保が僕を見詰める。
楽しそうに。
「ただし………確約が欲しいな」
(……確……約……)
「だって君の気が変わって逃げられても困るしさ、眞司が君にほだされて手に手を取って…なんて事も考えられるわけじゃん。だから、口約束なんかじゃ信じる事はできないね。キチンとした確約が欲しいんだよね…だから、はい」
戸惑う僕の目の前に安全ピン。
「これでその可愛い乳首に穴を開けて。ピアス、付けるから」
(………え……?)
「とりあえず眞司に付けようと思っていたピアスがあるから、それ付けて。大丈夫、君がボクの元へ来たら君に似合うピアスを選んであげるから…そのピアス、GPSがついているから逃げる事ができないだろ?丁度いいと思ってね…消毒はすんでいるから、心配いらないよ」
目の前にある安全ピンを震える指で取ろうとして…保にひょいと避けられた。
「最初はボクが見本を見せてあげる」
ニッコリと笑いながらも保は僕の左胸の乳首を引っ張り、躊躇う事なく針の先を勢いよく乳首に………。
「≒℃ρη$≅€ζл∅§∽¢τ⇔∝∀φ∵ℵξжэ‡∀∂ыーッ!!…∽φℵ∀эーっ!!」
疲れ切っていた身体のどこにこんなの力が余っていたのだろうと自分でも思うほどの凄い力で保を突き飛ばし、獣のような咆哮を喉から迸らせ、床をのたうち回った。
「…アハハ…何、言ってんのか分かんないよ」
保が僕を見て、笑う。
(…痛い……っ…痛い……っ…痛いよ……っ!!)
僕が床を転げ回り喚いている姿を笑いながら見ている保の手にはもうひとつ、安全ピンが握られている。
「…どうする?…止める?」
「……………それ……付けたら………本当に……?」
「ああ、眞司がお前を捨てるまで待ってもいいよ…眞司に手を出す事もしない」
その言葉に、僕はヨロヨロと立ち上がる。
まだ安全ピンが刺さったままの左胸はズッキンズッキンと痛むけど。
その痛みは全身に広がっていくけど。
震える指で僕は保から安全ピンを受け取り、自分の右胸の乳首に当てる。
先程、身体中を貫いた痛みを思い出す。
言葉にできない程の痛みだった。
その痛さを思い出しただけで、身体中を冷や汗が流れる。
(…でも…これで眞司は自由になれる……眞司が僕を捨てる日まで…その少しの間でも…眞司と一緒にいる事ができる………)
僕は眞司の顔を思い浮かべ…安全ピンを握った手に力を込め、心の中で眞司の名前を叫んだ。
(………………眞司…………………っ!!)
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