冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［９４８］まかない？

「さて、後半戦のスタートだな」

休息を挟み、海鮮丼を食べて英気は十分に養われた。

後半戦が終われば、長かった海鮮丼作りも終わる。

「おかわりをする方は、ちゃんとウェイトレスたちに伝えてくださいよ！！！！」

依頼者たち全員が頷く。

午前と同じ様に多くの権力者、金を持っている冒険者たちが椅子に座っている。

彼らの中にはそれなりにプライドが高い者もいるのだが……ゼルート・アドレイブという人間がここにいる。
それだけでこの場のルールは彼だと、嫌でも認識させられてしまう。

とはいえ……海鮮丼という美味な料理を食べられるのであれば、ちんけなプライドなと取るに足らず、全員が行儀よく食べ続ける。

（ったく、昨日の時点で米を創っといて良かったぜ）

海鮮丼であるため、まず米がなければ話にならない。
絶対に途中で米がなくなってしまうという危機を避けるため、ゼルートは先日の夜に大量に用意。

刺身に関しては大量に狩ったモンスターの素材が残っているので、そちらは全く心配いらない。

そして夕食開始時から数時間後……ようやく最後の客が海鮮丼を食べ終わり、指名依頼は無事達成となった。

「はぁ～～～～～……ここ最近の中で、一番疲れた」

「うむ、あまり体験しないタイプの疲れだな」

ゼルートと同じく、アレナもこのまま地面に寝転びたいほど疲れていた。

とはいえ、寝転がってだらける訳にはいかない。
ゼルートは気合で体を動かし、一人で料理を作り始めた。

「ぜ、ゼルートさん？　もうお客は居ませんよ」

腕が立つ若いシェフの戸惑いに、アレナが答える。

「ゼルートは昨日から今日の依頼が終わったら、私たち全員にご馳走を振舞うって考えてたらしいわよ」

「「「「「「「「えっ！！！？？？」」」」」」」」

当然、驚かない訳がない。
料理をご馳走するのは調理を手伝ってくれた料理人たちだけではなく、配膳係としてせわしなく歩き続けてくれたウェイトレスたちにも振舞われる。

「それは、その……非常に嬉しいんですけど、ゼルートさん一人に任せるというのは……」

「ゼルートがあなた達に今日のお礼として振舞いたいんだから、あなた達が手伝ってしまったら意味無いでしょ」

「た、確かにそうですね」

「それに……あれだけ素早く作れるんだから、ゆっくり体を休めている間に完成する筈よ」

料理人、ウェイトレスの視線の先には……超高速で料理を勧める冒険者がいた。

単純に素早く正確に斬るなどの作業に限っては、超圧倒的な速度であり、料理人たちが真似しようとしても……到底真似出来ない芸当。

体を休める時間とはいっても、料理人やウェイトレスたちは、終始ゼルートの料理光景に釘付けとなっていた。

「お待たせしました。おかわりもあるんで、心ゆくまで食べてください」

テーブルの上には……まず海鮮丼。
しかし、海鮮丼に使われているモンスターの身は、さすがに値段と釣り合わないといった理由で使用しなかったBランクモ以上の刺身などがふんだんに使われている。

その他にもサラダや同じくBランクの魔物、もしくはそれ以上の超高価な肉が使用された料理がずらりと並んでいる。

「ゲイルたちも、今日はお疲れ様。存分に食べてくれ」

「うむ……それでは、いただきます」

その言葉が合図となり、ゲイルやアレナたちは一斉に食べ始めた。

ゼルートの仲間たちが一斉に食べ始めたのを見て、料理人たちも恐る恐る食べ始め……次第に食事の手が早まる。
どれだけ料理の腕が高くとも、やはりその食材でしか引き出せない味という物がある。

普通に料理人として働いてるだけでは巡り合えない高級食材も多く、料理人たちの中にはその美味さに涙をこぼす者もいた。

（うん、美味い。偶には本気で料理を作るのも悪くないな）

心の中で自画自賛しながら、ゼルートも食欲を満たすため、やや料理に減り具合を気にし……足りないなと思えば、直ぐに追加を行う。

その結果、アレナたちも含めて満腹になる頃には、ちょっと動けなくなっていた。