983 / 984
九百八十一話 どちらに向くか
しおりを挟む
『虎竜に子供がいたんすか?』
『まだ確定じゃないみたいだけど、その可能性があるかもしれないんだって』
アラッドたちの会話を聞きながら、クロたちはワゥワゥ、ウキャウキャ話し始めた。
『まだ虎竜と会ってすらいないすけど、超ヤバい感じじゃないっすか』
『そうですね……ポテンシャルは、クロに匹敵するでしょうか』
自分たちの中で一番強いのはクロだと、それはファルとヴァジュラも認めている。
自分たちどころか、自分たちの主とタッグを組んで挑んでも……と思う程、クロの戦闘力はずば抜けている。
『そいつはぁ……あれっすね……へへ、戦れるなら戦りたいっすね』
『一応虎竜とは僕が戦う予定だけど、その気持ちは解る』
『……私としても、自分を高めるという意味では、是非とも手合せしたい相手ではありますね』
ヴァジュラとクロは主人であるガルーレとアラッドと似て非常に好戦的であり、ファルに関しても……主人であるスティームと同じく、ザ・好戦的なタイプではないが、高い向上心を有している。
『でも、あれっすよね。今アラッドさんたちの話を聞いてると、えっと……この前アラッドさんが戦ったディーナ? って冒険者がそれを知ったら、不味いって話をしてるんすよね』
『その様ですね』
『普通、復讐相手? の子供とか、復讐したい奴からしたら、関係無いんじゃないんすか?』
『…………人間と、私たちモンスターとでの親子関係は、かなり違うのでしょう』
ファルも、そこまで深く知っている訳ではない。
それでも、これまでスティームと共に冒険してきた中で、人間たちは自分たちモンスターよりも自身の子に深く愛情を注ぐのだと……その期間がモンスターよりも長いというを知った。
『ヴァジュラは……親ではありませんでしたが、それでも群れのリーダーだったのでしょう。同族たちが殺られて、ほんの少しは私たちやスティームさんたちに怒りを感じたでしょう』
『ん~~~~~? あいつらはあいつらで満足のいく戦いが出来た筈だから、別に怒りを感じたり恨んだりしなかったっすよ』
『……そうでしたか』
聞く相手を間違えたと思ったファル。
『ともかく、これは私の憶測ですが、復讐相手に子供がいると知れば、ディーナという冒険者はその虎竜の子に、かつての自分を重ねてしまうのでしょう』
『…………親を殺された自分を、だよね』
『えぇ、そうです。スティームさんたちの話を聞いている限り、殺し合いの域に達する戦いではないとはいえ、アラッドさんに一矢報いた実力を考えれば、相当な腕を持った冒険者なのは間違いないでしょう』
『だよな~~~。俺も戦れるなら戦ってみたいっすよ~~~』
『……とにかく、それだけの実力があれば、並大抵のモンスターには負けないでしょうが、虎竜も話を聞く限り並大抵のモンスターではない。となれば、戦いの際に起こる油断や気の緩み一つで、ディーナという冒険者が殺されてもおかしくありません』
本当に、まだ出会ったことすらない。
だが、三体ともアラッドたちの会話から、いかに虎竜というモンスターがイレギュラーな存在で、どれだけの戦闘力を秘めているか、ある程度予想は出来ていた。
『アラッドさんたちは、そうなってほしくないって思ってるから、伝えない方がいっかって話してるのか~』
『そういう事です。まぁ、私たちが先に見つければ、戦うのはクロになるので、問題はありません。それに……一応ですが、虎竜が身籠っている。もしくは子供が生まれたかもしれないというのは、まだ確定ではありません』
必要以上に、それを考えることはない……と思っているファルだが、それでもガルーレが思い付いた内容に関して、モンスターとしての本能的に完全否定出来ないところがあった。
『……そういえばさ、仮にっすよ。仮にっすけど、クロさんかディーナって冒険者が虎竜をぶっ倒して、虎竜の子がどこからか現れたとするじゃないっすか。そしたら、その子はどうするんすかね』
『それは…………解りませんね。少なくとも、私たちがどうこう出来る話ではない』
自分たちにどうこう出来る話ではないと語るファルだが、人間のた立場になって物事を考えられるファルからすれば……現在子供であったとしても、討伐すべきだと考えられる。
クロか……それともディーナが討伐し、クロは主人であるアラッドに許可を取り、ディーナは思うところがあって逃がした場合、それはそれで一つの選択肢ではある。
ただ、問題は親を殺された虎竜の子が怒りの矛先をどこに向けるか。
クロか、それともディーナだけに向けるのであれば、一応問題無いと言える。
クロもディーナも、いずれ虎竜の子が自身に戦いを挑むのは、自然の……感情の摂理だと理解しているから。
だが、そこで怒りの矛先がクロやディーナ個人ではなく、人間全体に向けられてしまうと……とんでもない大事件、大虐殺が引き起こされる可能性が高い。
『因みに、クロは仮に虎竜に子がいた場合、どのような判断を下しますか』
『僕は…………』
ファルの問いに、クロは直ぐには応えられなかった。
『まだ確定じゃないみたいだけど、その可能性があるかもしれないんだって』
アラッドたちの会話を聞きながら、クロたちはワゥワゥ、ウキャウキャ話し始めた。
『まだ虎竜と会ってすらいないすけど、超ヤバい感じじゃないっすか』
『そうですね……ポテンシャルは、クロに匹敵するでしょうか』
自分たちの中で一番強いのはクロだと、それはファルとヴァジュラも認めている。
自分たちどころか、自分たちの主とタッグを組んで挑んでも……と思う程、クロの戦闘力はずば抜けている。
『そいつはぁ……あれっすね……へへ、戦れるなら戦りたいっすね』
『一応虎竜とは僕が戦う予定だけど、その気持ちは解る』
『……私としても、自分を高めるという意味では、是非とも手合せしたい相手ではありますね』
ヴァジュラとクロは主人であるガルーレとアラッドと似て非常に好戦的であり、ファルに関しても……主人であるスティームと同じく、ザ・好戦的なタイプではないが、高い向上心を有している。
『でも、あれっすよね。今アラッドさんたちの話を聞いてると、えっと……この前アラッドさんが戦ったディーナ? って冒険者がそれを知ったら、不味いって話をしてるんすよね』
『その様ですね』
『普通、復讐相手? の子供とか、復讐したい奴からしたら、関係無いんじゃないんすか?』
『…………人間と、私たちモンスターとでの親子関係は、かなり違うのでしょう』
ファルも、そこまで深く知っている訳ではない。
それでも、これまでスティームと共に冒険してきた中で、人間たちは自分たちモンスターよりも自身の子に深く愛情を注ぐのだと……その期間がモンスターよりも長いというを知った。
『ヴァジュラは……親ではありませんでしたが、それでも群れのリーダーだったのでしょう。同族たちが殺られて、ほんの少しは私たちやスティームさんたちに怒りを感じたでしょう』
『ん~~~~~? あいつらはあいつらで満足のいく戦いが出来た筈だから、別に怒りを感じたり恨んだりしなかったっすよ』
『……そうでしたか』
聞く相手を間違えたと思ったファル。
『ともかく、これは私の憶測ですが、復讐相手に子供がいると知れば、ディーナという冒険者はその虎竜の子に、かつての自分を重ねてしまうのでしょう』
『…………親を殺された自分を、だよね』
『えぇ、そうです。スティームさんたちの話を聞いている限り、殺し合いの域に達する戦いではないとはいえ、アラッドさんに一矢報いた実力を考えれば、相当な腕を持った冒険者なのは間違いないでしょう』
『だよな~~~。俺も戦れるなら戦ってみたいっすよ~~~』
『……とにかく、それだけの実力があれば、並大抵のモンスターには負けないでしょうが、虎竜も話を聞く限り並大抵のモンスターではない。となれば、戦いの際に起こる油断や気の緩み一つで、ディーナという冒険者が殺されてもおかしくありません』
本当に、まだ出会ったことすらない。
だが、三体ともアラッドたちの会話から、いかに虎竜というモンスターがイレギュラーな存在で、どれだけの戦闘力を秘めているか、ある程度予想は出来ていた。
『アラッドさんたちは、そうなってほしくないって思ってるから、伝えない方がいっかって話してるのか~』
『そういう事です。まぁ、私たちが先に見つければ、戦うのはクロになるので、問題はありません。それに……一応ですが、虎竜が身籠っている。もしくは子供が生まれたかもしれないというのは、まだ確定ではありません』
必要以上に、それを考えることはない……と思っているファルだが、それでもガルーレが思い付いた内容に関して、モンスターとしての本能的に完全否定出来ないところがあった。
『……そういえばさ、仮にっすよ。仮にっすけど、クロさんかディーナって冒険者が虎竜をぶっ倒して、虎竜の子がどこからか現れたとするじゃないっすか。そしたら、その子はどうするんすかね』
『それは…………解りませんね。少なくとも、私たちがどうこう出来る話ではない』
自分たちにどうこう出来る話ではないと語るファルだが、人間のた立場になって物事を考えられるファルからすれば……現在子供であったとしても、討伐すべきだと考えられる。
クロか……それともディーナが討伐し、クロは主人であるアラッドに許可を取り、ディーナは思うところがあって逃がした場合、それはそれで一つの選択肢ではある。
ただ、問題は親を殺された虎竜の子が怒りの矛先をどこに向けるか。
クロか、それともディーナだけに向けるのであれば、一応問題無いと言える。
クロもディーナも、いずれ虎竜の子が自身に戦いを挑むのは、自然の……感情の摂理だと理解しているから。
だが、そこで怒りの矛先がクロやディーナ個人ではなく、人間全体に向けられてしまうと……とんでもない大事件、大虐殺が引き起こされる可能性が高い。
『因みに、クロは仮に虎竜に子がいた場合、どのような判断を下しますか』
『僕は…………』
ファルの問いに、クロは直ぐには応えられなかった。
247
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる