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八百七十八話 冗談では、ない
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SIDE スティーム
「ん~~~……多分、悪気はないよね、あれ」
「だと思うよ~~。全然平常運転だと思う」
開始場所へと向かうアラッドを見て、スティームは何とも複雑そうな顔を浮かべていた。
「すいません、フローレンスさん」
「謝る必要はありませんよ、スティームさん」
フローレンスは、同僚の騎士や魔術師たちが、何故苛立っているのかは当然解る。
ただ……逆にアラッドが何故、当然だろといった態度で、一対三という変則試合を申し出たのも解る。
「アラッドは……私たちが行ったような、熱い戦いをしたいと言いました」
「そうですね」
「おそらく、求めてるラインは……数体のBランクモンスターとの戦闘、といったところでしょうか」
アラッドは何度もソロでBランクモンスターを討伐した経験があり、Aランクモンスターをソロで討伐した経験もある。
クロという頼りになり過ぎる相棒がいるが、ここまでアラッドが成長出来たのはクロという怪物が傍にいたからではない。
「多分、そんなところかと」
「……アラッドってこの前、ソルとルーナの二人と戦った時、存分に糸を使って戦ったよね。もしかしたら、今回も同じように戦うのかな」
苦い記憶を思い出し、表情が歪む二人だが…………自分たちが言えることではないと解ってはいるが、それでも我慢できずに口を開いた。
「あの人たちを、私たちと同じだと思ってるなら、甘い。ていうか、嘗め過ぎだ」
「ソルの言う通りですね。あの人が操る糸という武器の恐ろしさは理解していますが、それでも……一対三という状況であれば、尚更不適切な対応かと」
二人の言葉に対し、フローレンスはアラッド贔屓……をすることなく、首を縦に動かした。
「そうですね。アラッドの糸には苦い思い出がありますが、それでも彼らは糸だけでどうにか出来るほど甘い相手ではありません」
二人が言い出した事でもあり、フローレンスは容赦なく二人をディスりながら語った。
(あれは……私の確認ミスでした。咄嗟に精霊同化が成功したことを考えると、そこまで意識が回らないのも仕方ないかもしれませんが)
半分だけ精霊同化を成功させ、試合を終わらせようと動いたタイミングで、自分の腕が顔面にグーパンを叩きこむという、世にも珍しい体験をフローレンスは忘れていなかった。
「…………どうやら、糸だけで戦うつもりではないようですね」
「でもさ~、あれって多分嘗められてるって感じるんじゃない?」
「かもしれない、というか……絶対にそうだね」
軽い準備運動を行うアラッド。
その手には、普段使用しているロングソードが握られていない。
「ふぅーーー、よし! それじゃあ、戦りましょうか」
「……武器は、持たないのか」
「はい。一応、素手でも戦えるので」
そう言いながらアラッドは左脚を前に出し、慣れた様子で構えた。
(ッ、冗談ではない……みたいだな)
騎士の中には珍しくはあるが、体技をメインに戦う者もいる。
そのため、槍使いの男はアラッドが素手の状態で構えた瞬間、冗談を言っている訳ではないと……自分たちを嘗めているから、素手で戦おうとしてる訳ではないのだと解った。
「開始の合図は?」
「好きに戦りましょう」
「…………そうか」
アラッド対、槍使いと戦斧使い、そして魔術師。
一対三という変則試合の開幕の狼煙は……槍使いの鋭い突き。
「っ、シッ!」
(ッ!! 随分と、器用なことをするな)
ファーストアタックを軽々と躱すと、全力で振らず、コンパクトに脚を振るい、魔力による斬撃刃を放った。
「うぉらッ!!!!」
その隙を狙い、戦斧使いが力の入った一撃を振り下ろすが、
アラッドはリスクを顧みず、慣れた様子で冷静に刃の側面を捉え、切傷を負うことなく受け流した。
「すぅーーー……喝ぁああああつ!!!!!!!!」
「っ!!?? …………嘘、でしょ」
後衛からアラッドが下がったナイスタイミングで複数のファイヤーボールとファイーランスが放たれた。
軌道もばっちりである、前衛二人の邪魔をすることなくアラッドに着弾する筈だったが……腹の底から出された一喝により、霧散。
「? どうしました。まだ、試合を始まったばかりでしょう。先程試合を行った二人の様に……俺たちも、熱い試合をしましょう!!!!」
いたって真面目な表情でそう告げ、今度はアラッドから迫った。
「まっ、やっぱりあんな真似して負けるなんてダサいことはしないよね~」
「だね……でも、本人が望んでた通り、多分……熱い戦いが出来たんじゃないかな」
戦闘が始まってから約二分は、アラッドだけではなく黒狼騎士団の面子たちも含めてウォーミングアップであった。
そこからスキル、属性魔力を使い始め、更に試合は激化した。
スティームから見て、アラッドたちの戦いも本当に試合の範疇で収まるのか心配だった。
「う、ぐっ」
「はぁ、はぁ……っ!!!」
「げほっ! ごほっ!!」
「はぁーーーー……ありがとうございました。お陰で、熱くなれました」
最終的に三人はアラッドの腹パン、ショートアッパーなどによって撃沈。
一対三という変則試合の勝者は、終始楽しそうに拳を振るっていたアラッドだった。
「ん~~~……多分、悪気はないよね、あれ」
「だと思うよ~~。全然平常運転だと思う」
開始場所へと向かうアラッドを見て、スティームは何とも複雑そうな顔を浮かべていた。
「すいません、フローレンスさん」
「謝る必要はありませんよ、スティームさん」
フローレンスは、同僚の騎士や魔術師たちが、何故苛立っているのかは当然解る。
ただ……逆にアラッドが何故、当然だろといった態度で、一対三という変則試合を申し出たのも解る。
「アラッドは……私たちが行ったような、熱い戦いをしたいと言いました」
「そうですね」
「おそらく、求めてるラインは……数体のBランクモンスターとの戦闘、といったところでしょうか」
アラッドは何度もソロでBランクモンスターを討伐した経験があり、Aランクモンスターをソロで討伐した経験もある。
クロという頼りになり過ぎる相棒がいるが、ここまでアラッドが成長出来たのはクロという怪物が傍にいたからではない。
「多分、そんなところかと」
「……アラッドってこの前、ソルとルーナの二人と戦った時、存分に糸を使って戦ったよね。もしかしたら、今回も同じように戦うのかな」
苦い記憶を思い出し、表情が歪む二人だが…………自分たちが言えることではないと解ってはいるが、それでも我慢できずに口を開いた。
「あの人たちを、私たちと同じだと思ってるなら、甘い。ていうか、嘗め過ぎだ」
「ソルの言う通りですね。あの人が操る糸という武器の恐ろしさは理解していますが、それでも……一対三という状況であれば、尚更不適切な対応かと」
二人の言葉に対し、フローレンスはアラッド贔屓……をすることなく、首を縦に動かした。
「そうですね。アラッドの糸には苦い思い出がありますが、それでも彼らは糸だけでどうにか出来るほど甘い相手ではありません」
二人が言い出した事でもあり、フローレンスは容赦なく二人をディスりながら語った。
(あれは……私の確認ミスでした。咄嗟に精霊同化が成功したことを考えると、そこまで意識が回らないのも仕方ないかもしれませんが)
半分だけ精霊同化を成功させ、試合を終わらせようと動いたタイミングで、自分の腕が顔面にグーパンを叩きこむという、世にも珍しい体験をフローレンスは忘れていなかった。
「…………どうやら、糸だけで戦うつもりではないようですね」
「でもさ~、あれって多分嘗められてるって感じるんじゃない?」
「かもしれない、というか……絶対にそうだね」
軽い準備運動を行うアラッド。
その手には、普段使用しているロングソードが握られていない。
「ふぅーーー、よし! それじゃあ、戦りましょうか」
「……武器は、持たないのか」
「はい。一応、素手でも戦えるので」
そう言いながらアラッドは左脚を前に出し、慣れた様子で構えた。
(ッ、冗談ではない……みたいだな)
騎士の中には珍しくはあるが、体技をメインに戦う者もいる。
そのため、槍使いの男はアラッドが素手の状態で構えた瞬間、冗談を言っている訳ではないと……自分たちを嘗めているから、素手で戦おうとしてる訳ではないのだと解った。
「開始の合図は?」
「好きに戦りましょう」
「…………そうか」
アラッド対、槍使いと戦斧使い、そして魔術師。
一対三という変則試合の開幕の狼煙は……槍使いの鋭い突き。
「っ、シッ!」
(ッ!! 随分と、器用なことをするな)
ファーストアタックを軽々と躱すと、全力で振らず、コンパクトに脚を振るい、魔力による斬撃刃を放った。
「うぉらッ!!!!」
その隙を狙い、戦斧使いが力の入った一撃を振り下ろすが、
アラッドはリスクを顧みず、慣れた様子で冷静に刃の側面を捉え、切傷を負うことなく受け流した。
「すぅーーー……喝ぁああああつ!!!!!!!!」
「っ!!?? …………嘘、でしょ」
後衛からアラッドが下がったナイスタイミングで複数のファイヤーボールとファイーランスが放たれた。
軌道もばっちりである、前衛二人の邪魔をすることなくアラッドに着弾する筈だったが……腹の底から出された一喝により、霧散。
「? どうしました。まだ、試合を始まったばかりでしょう。先程試合を行った二人の様に……俺たちも、熱い試合をしましょう!!!!」
いたって真面目な表情でそう告げ、今度はアラッドから迫った。
「まっ、やっぱりあんな真似して負けるなんてダサいことはしないよね~」
「だね……でも、本人が望んでた通り、多分……熱い戦いが出来たんじゃないかな」
戦闘が始まってから約二分は、アラッドだけではなく黒狼騎士団の面子たちも含めてウォーミングアップであった。
そこからスキル、属性魔力を使い始め、更に試合は激化した。
スティームから見て、アラッドたちの戦いも本当に試合の範疇で収まるのか心配だった。
「う、ぐっ」
「はぁ、はぁ……っ!!!」
「げほっ! ごほっ!!」
「はぁーーーー……ありがとうございました。お陰で、熱くなれました」
最終的に三人はアラッドの腹パン、ショートアッパーなどによって撃沈。
一対三という変則試合の勝者は、終始楽しそうに拳を振るっていたアラッドだった。
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