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五百三十話 最強ではないんだよ
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「ギリギリ気付いて動いたときには、更に大きい雷獣が現れたんだ」
仮に向こうが仕留める気だったら……という仮定の話をするのはやや無駄ではあるが、考えると寒気がする。
そこからはアラッドも全力中の本気を出した。
しかし、ミノタウロスやドラゴンゾンビなどの強者との激闘を越えてきたにかかわらず、何度もその動きに、強さに驚いてしまった。
それでも何とか致命傷を受けずに戦闘を続け、決定的な隙をクロとファル、アラッドで生み出し……最後は赤雷の拳閃が雷獣を貫き、倒すことが出来た。
「なんだかんだで、僕は美味しいところを貰っただけだったけどね。雷獣を貫いた拳もぐちゃぐちゃになっちゃったし」
美味しいところだけを持っていったと聞けば、まだ幼い子供たちは笑うだろう。
だが、それに続く言葉を……拳がぐちゃぐちゃになったと聞けば、喉から出かけた笑いも引っ込んでしまう。
「その戦いで痛感したな。俺はまだまだ父さんみたいにソロでAランクのモンスターを倒せるほど強くないってな」
「で、でもアラッドさんなら一人で倒せたかもしれませんよね」
「どうだろうな。個人的には倒せる言いたいところだが、ドラゴンゾンビと二体目の雷獣では明らかに経験値や思考力が違っていた。世界は広いから雷獣より強いドラゴンゾンビはいるかもしれないが、それでもあの雷獣は間違いなく俺が戦ったドラゴンゾンビよりも強かった」
アラッドの信者という訳ではないが、その強さを信頼している子供たちにとっては、素直に受け止められない事実だった。
「俺の冒険譚はこんなところだ……おいおい、最後の最後にそんな落ち込むなよ。そりゃ俺は同年代の奴らと比べれば二回りか三回りぐらい強いが、別に最強って訳じゃないんだ。一人じゃ倒せない敵と遭遇することは珍しくないだろ」
「そんな事言いながら、本当は七割ぐらいソロでも勝てると思ってるんじゃないの?」
「思ってないっての。仮に勝てたとしても、またドラゴンゾンビの時みたいにクロの声がなかったら戻ってこれない筈だ」
スティームが軽くアラッドをからかったことで、場の雰囲気はやや柔らかくなった。
「でも、アラッドさんでも勝てない敵はいるんですね」
「……さっきも言った通り世の中は広いからな。あぁ~~~……あれだ、まだこういう事を言う歳じゃないってのは解ってるけども……お前らはまだ若いんだ。俺と同じ道を辿ろうと思ってるなら、今から悔いを残さないように努力を積み重ねていけよ」
「「「「「「「「「「はい!!!!!」」」」」」」」」」
ボスの言葉に子供たちは真剣な表情で応え、大人組は「いや、本当にその通りだよ。いったい中身何歳なんだよ」とツッコんだ。
話し終えたタイミングで丁度良い時間となり、就寝。
「では、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
翌日、朝食と準備運動を終えると早速ガルシアとスティームの模擬戦が行われた。
他のメンバーに指導を受けている子供たちもこの時だけは授業を受けず、二人の戦いをがっつり観ていた。
ただ……結果はガルシアの勝利であり、子供たちが思っていたほどスティームが善戦することはなかった。
(確かに並ではない。歳は十八だったか? それを考えれば世間一般で言うところの天才に当てはまるとは思うが、この程度の実力でアラッド様の隣に立つというのは……)
実際に手合わせを行い、スティームが並の戦闘者ではないことは確認出来た。
戦況は終始ガルシアが押してはいたものの、スティームは何も出来なかったわけではない。
とはいえ、見物人たちからすれば少々がっかりな結果ではあった。
(……昨日、ちょっとよいしょし過ぎたか? 別にそんなつもりはなかったんだが……うん、ちょっと空気を変えないと不味いな)
不穏な空気を察したアラッドはスティームにある提案をした。
「スティーム、次はあれを使ってみようか」
「あれって……じ、実戦じゃないのに良いのかい?」
「多分大丈夫だろ。時間は……レベルアップしてると思うけど、四秒ぐらいが妥当かな」
「……分かった」
昨日の冒険譚での説明で、あれが何を指すのか……ある程度の者たちは解っていた。
(うん、あれだな。ちょっと受け身になり過ぎてたというか、さっきの心構え? はあまり良くなかった。ここは……あの舞台以上に、僕がアラッドの隣に立つ男として相応しいと証明しなければならない舞台なんだ)
言葉にせずとも、
今しがた手合わせをしたガルシアやエリナたちが何を考えてるのか解かる。
「ガルシア、あんまり油断するのよ」
「かしこまりました」
再度、ガルシアとスティームの模擬戦が開始。
スティームは様子見など一切せず、速攻で赤雷を全身に纏い、突貫。
「ッ!!!!!」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
観戦しているエリナたち、対戦相手であるガルシアも含めて顔に驚愕の色が浮かぶ。
(ったく、あんまり油断するなって言ったのによ)
結果……四秒手前でガルシアの貫手が放たれるよりも前に、スティームの赤雷を纏った手刀が首元で止まり、二回目の模擬戦は終った。
仮に向こうが仕留める気だったら……という仮定の話をするのはやや無駄ではあるが、考えると寒気がする。
そこからはアラッドも全力中の本気を出した。
しかし、ミノタウロスやドラゴンゾンビなどの強者との激闘を越えてきたにかかわらず、何度もその動きに、強さに驚いてしまった。
それでも何とか致命傷を受けずに戦闘を続け、決定的な隙をクロとファル、アラッドで生み出し……最後は赤雷の拳閃が雷獣を貫き、倒すことが出来た。
「なんだかんだで、僕は美味しいところを貰っただけだったけどね。雷獣を貫いた拳もぐちゃぐちゃになっちゃったし」
美味しいところだけを持っていったと聞けば、まだ幼い子供たちは笑うだろう。
だが、それに続く言葉を……拳がぐちゃぐちゃになったと聞けば、喉から出かけた笑いも引っ込んでしまう。
「その戦いで痛感したな。俺はまだまだ父さんみたいにソロでAランクのモンスターを倒せるほど強くないってな」
「で、でもアラッドさんなら一人で倒せたかもしれませんよね」
「どうだろうな。個人的には倒せる言いたいところだが、ドラゴンゾンビと二体目の雷獣では明らかに経験値や思考力が違っていた。世界は広いから雷獣より強いドラゴンゾンビはいるかもしれないが、それでもあの雷獣は間違いなく俺が戦ったドラゴンゾンビよりも強かった」
アラッドの信者という訳ではないが、その強さを信頼している子供たちにとっては、素直に受け止められない事実だった。
「俺の冒険譚はこんなところだ……おいおい、最後の最後にそんな落ち込むなよ。そりゃ俺は同年代の奴らと比べれば二回りか三回りぐらい強いが、別に最強って訳じゃないんだ。一人じゃ倒せない敵と遭遇することは珍しくないだろ」
「そんな事言いながら、本当は七割ぐらいソロでも勝てると思ってるんじゃないの?」
「思ってないっての。仮に勝てたとしても、またドラゴンゾンビの時みたいにクロの声がなかったら戻ってこれない筈だ」
スティームが軽くアラッドをからかったことで、場の雰囲気はやや柔らかくなった。
「でも、アラッドさんでも勝てない敵はいるんですね」
「……さっきも言った通り世の中は広いからな。あぁ~~~……あれだ、まだこういう事を言う歳じゃないってのは解ってるけども……お前らはまだ若いんだ。俺と同じ道を辿ろうと思ってるなら、今から悔いを残さないように努力を積み重ねていけよ」
「「「「「「「「「「はい!!!!!」」」」」」」」」」
ボスの言葉に子供たちは真剣な表情で応え、大人組は「いや、本当にその通りだよ。いったい中身何歳なんだよ」とツッコんだ。
話し終えたタイミングで丁度良い時間となり、就寝。
「では、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
翌日、朝食と準備運動を終えると早速ガルシアとスティームの模擬戦が行われた。
他のメンバーに指導を受けている子供たちもこの時だけは授業を受けず、二人の戦いをがっつり観ていた。
ただ……結果はガルシアの勝利であり、子供たちが思っていたほどスティームが善戦することはなかった。
(確かに並ではない。歳は十八だったか? それを考えれば世間一般で言うところの天才に当てはまるとは思うが、この程度の実力でアラッド様の隣に立つというのは……)
実際に手合わせを行い、スティームが並の戦闘者ではないことは確認出来た。
戦況は終始ガルシアが押してはいたものの、スティームは何も出来なかったわけではない。
とはいえ、見物人たちからすれば少々がっかりな結果ではあった。
(……昨日、ちょっとよいしょし過ぎたか? 別にそんなつもりはなかったんだが……うん、ちょっと空気を変えないと不味いな)
不穏な空気を察したアラッドはスティームにある提案をした。
「スティーム、次はあれを使ってみようか」
「あれって……じ、実戦じゃないのに良いのかい?」
「多分大丈夫だろ。時間は……レベルアップしてると思うけど、四秒ぐらいが妥当かな」
「……分かった」
昨日の冒険譚での説明で、あれが何を指すのか……ある程度の者たちは解っていた。
(うん、あれだな。ちょっと受け身になり過ぎてたというか、さっきの心構え? はあまり良くなかった。ここは……あの舞台以上に、僕がアラッドの隣に立つ男として相応しいと証明しなければならない舞台なんだ)
言葉にせずとも、
今しがた手合わせをしたガルシアやエリナたちが何を考えてるのか解かる。
「ガルシア、あんまり油断するのよ」
「かしこまりました」
再度、ガルシアとスティームの模擬戦が開始。
スティームは様子見など一切せず、速攻で赤雷を全身に纏い、突貫。
「ッ!!!!!」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
観戦しているエリナたち、対戦相手であるガルシアも含めて顔に驚愕の色が浮かぶ。
(ったく、あんまり油断するなって言ったのによ)
結果……四秒手前でガルシアの貫手が放たれるよりも前に、スティームの赤雷を纏った手刀が首元で止まり、二回目の模擬戦は終った。
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