スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
459 / 1,045

四百五十九話 もし全面戦争になったら……

しおりを挟む
(う、うちの弟……カルロスト公爵家から攻撃されたりしない、よな?)

以前まで将来の道は騎士一択だったフローレンス。

しかし、アラッドというもう一人の怪物と出会い……その怪物は恐れ多くも、女王の異名を持つ彼女に説教を行った。

フローレンスが愛があっても前に進めない子供たちの為に、自分の力で現状を変えようと努力する。
それに関してはカルロスト公爵家としても、特に文句を言うことはない。

ただ……その目標のために騎士という道ではなく、冒険者の道に進もうとすれば……それはちょっと待ってくれという話になる。

フローレンスは冒険者という道に進んだとしても、結果として多くの人々を助けていくだろう。
それを考えれば、別に騎士とやってる事はあまり変わりないのでは? と思う者は少なからずいる。
しかし、突っ込んだ話になると、そういう簡単な話ではないのだ。

騎士団としても……カルロスト公爵家としても、フローレンスには是非とも騎士の道に進んで欲しい。
そう願われている彼女が今現在……出会ってしまった自分以外の怪物からの説教により、別の道を歩もうとしている。
本当に……万が一、億が一……フローレンスが冒険者の道に進もうものなら、カルロスト公爵家はアラッドに色々と申し上げたい事がある。

(アラッドがロウレット公爵家に狙われたりしないよな……しないよな?)

本来であればパーシブル侯爵家を通してアラッドに文句を言うべきところだが、爵位が一つ下とはいえ、物理的な戦闘力に関しては冗談抜きでトップクラス。

そしてアラッドが製作したマジックアイテム、キャバリオンに関しては多くのファンがいる。
つまり、パーシブル侯爵家て敵対すれば、それらのファンすら敵に回す可能性が高い。

製作者であるアラッド本人と敵対するのも同じでは? と思うかもしれないが、フローレンスが騎士ではなく冒険者の道に進もうとしている……かもしれないとなれば、それはそれで貴族界では非常に大問題。

とはいえ……仮に、もしもカルロスト公爵家がアラッド個人と敵対するのであれば……カルロスト公爵家が甚大なダメージを被るのは間違いない。
個人間との戦闘ともなれば、フローレンスとの決勝戦で使用しなかった……色々と戦力差を覆してしまう切り札を使用する。

その結果、アラッドが敗北したとしても、カルロスト公爵家の戦力は壊滅に近い状態に追い込まれる。
そして……アラッドが潰された場合、今度は数年前と逆のことが起こってもおかしくない。

「フローレンスさん、貧しい子供たちを支え、背中を押す方法は他にある筈です」

「そうでしょうか? 良ければ、その方法について教えて頂いてもよろしいでしょうか」

全く考えていなかった。
どうすれば冒険者として活動する以上に稼げるのか、そう簡単に思い付かないのだが……ここでギーラスは今一度弟であるアラッドの凄さを思い返し……一つの結論に至った。

「フローレンスさん自身のブランド力を使う。それが一番のかと」

「私自身のブランド力、ですか」

「その通りです。アラッドは幾つものボードゲームを生み出していましたが、やはりアラッド自身が試作した物は高値で取引されています」

それだけの説明で、子供たちの為にどう頑張れば良いのか……ぼんやりとだが、浮かび始めた。


「ギーラスさん、本日は多くの質問に答えて頂き、誠にありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ楽しい時間を過ごすことが出来ました」

二度死にかけたが、色々と貴重な大剣であることに変わりはなかった。

(多分……多分だけど、さっきの説明で冒険者という道に進むという選択肢は消えただろう。アラッドとカルロスト公爵家の全面戦争とか……ゾッとする)

アラッドが個人で戦うとはいえ、従魔であるクロは確実に参戦する。
そしてクロが……デルドウルフという絶対的な力、牙を持つAランクモンスターが他の同系統のモンスターたちを従えれば……一個人が破れるとは考えられない。

(いや、カルロスト公爵家としては責任を取って娘と、フローレンスさんと結婚してもらう方向に話を進めるか? 個人的にはそっちの方が有難いというか……余計な心配が生まれないというか)

何はともあれ、もう王都に留まる必要はない。
いつまでも仕事場を空けておくわけにはいかない。

宿に戻ってぐっすりと寝て、明日に備えよう……と思っていると、一難去ってまた一難という嫌な現実を……身をもって体験することになる。

「ドラゴンスレイヤー、ギーラス・パーシブルさん、ですよね」

「あぁ、まぁ……一応そうだね。君は確か……ジャン・セイバー君、だったかな」

「覚えて頂いてるとは、とても光栄です」

ギーラスが泊っている宿の前で待っていた人物は、アラッドと準決勝で戦い、フローレンスに借りを返すことが出来なかった三年生、ジャン・セイバー。

驚きびっくりはもうお腹一杯状態ではあるが、ギーラスは目の前の若者の眼を見て……要件は明日でも良いかな、とは言えなかった。

「何か悩みがあるみたいだね。力になれるかは解らないけど、俺で良かったら聞くよ」

「ありがとうございます」
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...