スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
377 / 1,058

三百七十七話 黒幕は変態? それとも復讐者?

しおりを挟む
平均より高めの宿に泊まろうとしたアラッドは、ほんの少し店員に驚かれながらも、部屋を確保することに成功。

そして翌日、起きてから直ぐに冒険者ギルドへ向かう。
先日は行わなかった情報収集を行う……もしくは、墓荒しに繋がる依頼を受けたい。

(黒幕が何を思って行動してるのか知らないが、ただ死体を芸術品として見てるのであれば、一応一般市民とか俺たちに害はない……って、最悪の場合貴族が黒幕の可能性があるのか)

世の中には、どうしようもない変態がいる。

個性を否定するのは良くないという思いを持つアラッドでも「いや、それはさすがにちょっと……」とドン引きする趣味を持つ者は確かにいる。
加えて、その趣味を持つ者たちは自分が異常だとは思っていない。

(でも、可能性としては死体を利用して、誰かに復讐しようと考えてる奴が黒幕だよな……悪いイメージしか浮かばないな)

死体を完全言いなりの奴隷に変え、更に強化。
奴隷と奴隷を合体させる強化、なんて最悪の強化をイメージしたアラッドは、思わず顔を歪めた。

(人の努力、執念が極まれば、絶対に出来ないとは言えないよな)

出来れば変な方向にそれらの意志を向けてほしくないと思っている間に、冒険者ギルドに到着。

クロには外で待ってもらい、中へと入る。

(ギルドの外装や内装も、ゴルドスのとは違うというか……気品を感じるな)

冒険者という職業柄、本人の才能なども相まって、割合としては接近戦スタイルで戦う者が多い。

しかし、マジリストンのギルド内にいる冒険者たちは、比較的魔法職が多いと感じたアラッド。

(とりあえず、クエストボードの方に行くか)

初めてマジリストンの冒険者ギルドに訪れたアラッドだが、ゴルドスの時ほど注目されることはなかった。

魔法職の冒険者が比較的多いが、接近戦スタイルの冒険者少ない訳ではない。
アラッドが魔法関連で有名な貴族の令息ではないということもあり、一人で現れた同業者に注目する者は殆どいなかった。

ただ……注目される要因は、全部が全部、本人が理由になるとは限らない。

「ねぇ、少し良い?」

「? えっと……」

クエストボードの前に到着する前に、一人のギルド職員がアラッドに声を掛けてきた。

容姿は顔面偏差値が高い凛々しいタイプの美人だが、青色の髪は非常に短く、ベリーショート。
身長は百七十後半と、女性の中では長身な部類。

(……大きいな)

年頃であるアラッドが、一瞬とはいえ制服の上からでも解かる豊満な胸に目が行くのも、無理はない。

(というか、この人絶対に強いよな)

ゴルドスの冒険者ギルドにも、明らかにただの職員とは思えない強さを持つ者がいた。
しかし、目の前の女性からは、更に強いオーラを本能的に感じ取った。

「私はギルド職員のマジットだ。よろしく」

「アラッドです。よろしくお願いします」

少し緊張しながらも、差し出された手を握る。

ただの握手ではあるが、次の瞬間……アラッドに殆ど意識を向けていなかった同業者たちが、一気に注視し始めた。

(やっぱり、ただの受付嬢じゃないよな)

自身に向けられた視線の種類から、目の前の女性……マジットの強さ、凄さを多くの意味で感じ取ったアラッド。

「敬語はいらない。普通に喋ってくれると嬉しい」

「っ……分かった」

「「「「「「「っ!!!!」」」」」」」

アラッドがマジットに言われた通り、本当に普通に……タメ語で話すと、更に視線が集まる。
そして視線の種類は、殆どが嫉妬や怒りに変わった。

マジットに言われた通り変えただけなのに、アラッドからすれば理不尽極まりなはい反応。

「この後、何か予定はあるか?」

「いや、特にないが」

冒険者といての嗅覚が反応し、咄嗟に予定はないと答えた。

「なら、少し場所を変えようか」
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...