309 / 1,390
三百九話 胡散臭い誘惑
しおりを挟む
「初めまして、ドラングさん」
目の前に現れた男は、どう見ても胡散臭い顔をした男。
「…………」
ドラングはその男を無視し、素通りしようとした。
「おっとっと、話ぐらいは聞いてくださいよ」
「っ……」
素通りした筈が、瞬時に目の前に現れた。
駆け足で追ってきた、という訳ではない。
目の前の胡散臭い男が一般人ではないと感じ取り、警戒心を高める。
「そんな警戒しないでください。私は……ドラングさんの目標を手助けするだけですから」
「どういう意味だ」
男の意図が解らない。
即刻拘束した方が良いのかと思いつつも、怪我は治っているが、魔力やスタミナまでは回復していない。
得体が知れない以上、自分から手を出すのは得策ではないと判断。
「言葉通りですよ、ドラングさん。私はあなたの目標を手助けするために、これを差し上げようと思いまして」
胡散臭い野郎が差し出した物は、一つの錠剤型の薬。
「こちらを服用すれば、あなたは目障りな兄を一蹴出来るようになるでしょう」
「……ふざけるな。詐欺をしたいなら、もう少しまともな嘘を付け」
再度立ち去ろうとするドラングに、再度言葉を掛ける胡散臭い男。
「あれは正真正銘の化け物ですね。稀代の天才、鬼才、傑物。どんな言葉も彼の実力には相応しくないでしょう。まさに、言葉では言い表せない強者」
ドラングやアラッドより下。
要はそう言いたいのだと瞬時に理解し、怒りのボルテージが急激に上昇。
「何が言いたい」
後ろを振り返るドラングに、男はニヤッと笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「あなたのポテンシャル、ステータスは決して低くない。この薬を飲めば、足りない部分を埋めることが出来る。あの男を捻じ伏せることが出来るのです」
男が持つ錠剤は、以前学園でアラッドを襲った生徒が服用していた薬を、更に強化したバージョン。
服用すれば、飛躍的に身体能力を向上させることが出来る。
他に効果があり、まさに限界を超えた状態になる。
「潰したいでしょう。あの憎い憎い兄を」
「……」
男は裏の人間を使い、ドラングの情報は既に収集済。
ドラングが兄であるアラッドに対して、強い負の感情を持っていると知っている。
「この薬を使用すれば、必ず潰せます。邪魔な存在を、この世から消し去れます」
「…………」
男の言葉に、ドラングの思考が揺らぐ。
「薬は卑怯? そんなことはありません。強くなる為に、手段は選ばない。それは立派な戦略です。本気で勝ちたいなら、潰したい相手がいるなら、どんな手でも使う。それが本当の努力です」
それらしい言葉を並べるが……どれも不正を言い訳する内容でしかない。
しかし、ドラングの思考が……心が乱れる。
胡散臭い男は精神に作用するマジックアイテムを使用しており、ドラングの意志を揺らしていた。
相手の意志を完全にコントロール出来るほど高性能ではないが、相手が元々負の感情を持っていれば、そちらに揺らして着火させることは難しくない。
「何も恥じることはありませんよ。無理に感情を抑え込んだところで、良いことなどありません。今抱えている問題を解決してから、ようやくドラングさんの人生が始まります。この薬は、その始まりへ踏み出す第一歩です」
「…………」
目の前には、自分に強大な力を与えるらしい、薬がある。
男の言葉に、ドラングは大きく揺れ……だんだんと薬に意識が向き始めた。
(あの薬を飲めば、俺はアラッドに勝てる)
だんだんと男の言葉が頭を埋め尽くし、残った考えがアラッドに勝つ事だけになっていく。
アラッドに対する今までの感情が溢れ、目の前の薬に手が動こうとした。
「……ふざけるな」
しかし、ドラングは動こうとした手をギュッと握りしめ、男の誘惑から逃れた。
「俺はフール・パーシバルの息子だ」
アラッドと同様、ドラングはそこに強い想いを持っている。
男は、ドラングの感情を理解している気になっていただけで、心の奥底は理解出来ていなかった。
目の前に現れた男は、どう見ても胡散臭い顔をした男。
「…………」
ドラングはその男を無視し、素通りしようとした。
「おっとっと、話ぐらいは聞いてくださいよ」
「っ……」
素通りした筈が、瞬時に目の前に現れた。
駆け足で追ってきた、という訳ではない。
目の前の胡散臭い男が一般人ではないと感じ取り、警戒心を高める。
「そんな警戒しないでください。私は……ドラングさんの目標を手助けするだけですから」
「どういう意味だ」
男の意図が解らない。
即刻拘束した方が良いのかと思いつつも、怪我は治っているが、魔力やスタミナまでは回復していない。
得体が知れない以上、自分から手を出すのは得策ではないと判断。
「言葉通りですよ、ドラングさん。私はあなたの目標を手助けするために、これを差し上げようと思いまして」
胡散臭い野郎が差し出した物は、一つの錠剤型の薬。
「こちらを服用すれば、あなたは目障りな兄を一蹴出来るようになるでしょう」
「……ふざけるな。詐欺をしたいなら、もう少しまともな嘘を付け」
再度立ち去ろうとするドラングに、再度言葉を掛ける胡散臭い男。
「あれは正真正銘の化け物ですね。稀代の天才、鬼才、傑物。どんな言葉も彼の実力には相応しくないでしょう。まさに、言葉では言い表せない強者」
ドラングやアラッドより下。
要はそう言いたいのだと瞬時に理解し、怒りのボルテージが急激に上昇。
「何が言いたい」
後ろを振り返るドラングに、男はニヤッと笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「あなたのポテンシャル、ステータスは決して低くない。この薬を飲めば、足りない部分を埋めることが出来る。あの男を捻じ伏せることが出来るのです」
男が持つ錠剤は、以前学園でアラッドを襲った生徒が服用していた薬を、更に強化したバージョン。
服用すれば、飛躍的に身体能力を向上させることが出来る。
他に効果があり、まさに限界を超えた状態になる。
「潰したいでしょう。あの憎い憎い兄を」
「……」
男は裏の人間を使い、ドラングの情報は既に収集済。
ドラングが兄であるアラッドに対して、強い負の感情を持っていると知っている。
「この薬を使用すれば、必ず潰せます。邪魔な存在を、この世から消し去れます」
「…………」
男の言葉に、ドラングの思考が揺らぐ。
「薬は卑怯? そんなことはありません。強くなる為に、手段は選ばない。それは立派な戦略です。本気で勝ちたいなら、潰したい相手がいるなら、どんな手でも使う。それが本当の努力です」
それらしい言葉を並べるが……どれも不正を言い訳する内容でしかない。
しかし、ドラングの思考が……心が乱れる。
胡散臭い男は精神に作用するマジックアイテムを使用しており、ドラングの意志を揺らしていた。
相手の意志を完全にコントロール出来るほど高性能ではないが、相手が元々負の感情を持っていれば、そちらに揺らして着火させることは難しくない。
「何も恥じることはありませんよ。無理に感情を抑え込んだところで、良いことなどありません。今抱えている問題を解決してから、ようやくドラングさんの人生が始まります。この薬は、その始まりへ踏み出す第一歩です」
「…………」
目の前には、自分に強大な力を与えるらしい、薬がある。
男の言葉に、ドラングは大きく揺れ……だんだんと薬に意識が向き始めた。
(あの薬を飲めば、俺はアラッドに勝てる)
だんだんと男の言葉が頭を埋め尽くし、残った考えがアラッドに勝つ事だけになっていく。
アラッドに対する今までの感情が溢れ、目の前の薬に手が動こうとした。
「……ふざけるな」
しかし、ドラングは動こうとした手をギュッと握りしめ、男の誘惑から逃れた。
「俺はフール・パーシバルの息子だ」
アラッドと同様、ドラングはそこに強い想いを持っている。
男は、ドラングの感情を理解している気になっていただけで、心の奥底は理解出来ていなかった。
366
あなたにおすすめの小説
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです
今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。
が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。
アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。
だが、レイチェルは知らなかった。
ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。
※短め。
行き遅れ令嬢の婚約者は王子様!?案の定、妹が寄越せと言ってきました。はあ?(゚Д゚)
リオール
恋愛
父の代わりに公爵家の影となって支え続けてるアデラは、恋愛をしてる暇もなかった。その結果、18歳になっても未だ結婚の「け」の字もなく。婚約者さえも居ない日々を送っていた。
そんなある日。参加した夜会にて彼と出会ったのだ。
運命の出会い。初恋。
そんな彼が、実は王子様だと分かって──!?
え、私と婚約!?行き遅れ同士仲良くしようって……えええ、本気ですか!?
──と驚いたけど、なんやかんやで溺愛されてます。
そうして幸せな日々を送ってたら、やって来ましたよ妹が。父親に甘やかされ、好き放題我が儘し放題で生きてきた妹は私に言うのだった。
婚約者を譲れ?可愛い自分の方がお似合いだ?
・・・はああああ!?(゚Д゚)
===========
全37話、執筆済み。
五万字越えてしまったのですが、1話1話は短いので短編としておきます。
最初はギャグ多め。だんだんシリアスです。
18歳で行き遅れ?と思われるかも知れませんが、そういう世界観なので。深く考えないでください(^_^;)
感想欄はオープンにしてますが、多忙につきお返事できません。ご容赦ください<(_ _)>
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる