303 / 1,390
三百三話 手放しても自信はある
しおりを挟む
「策士策に溺れる? ってところか」
上級生が取った行動は、決して悪くなかった。
寧ろ最善の一択と思える策だったが、それをレイはある程度読んでいた。
(顔に秘策あり、って思いっきり出てたのかもな)
今大会での戦いっぷりや、中等部時代の戦いっぷりを考えると、レイは超脳筋ガール……という印象を持たれていてもおかしくない。
それだけでも十分に脅威だったため、その戦闘スタイルを馬鹿にする者は現れなかった。
だが、上級生はその重い初撃をなんとか弾き、自分の攻撃をぶち込もうと考えた。
単純かもしれないが、それでも上手くいけば効く内容。
事実として、一般人とは体のできが違い特異体質を持つレイでも、上級生の実力と手甲、脚甲の力を合わせれば大きなダメージを与えられた。
「あの一瞬で判断したのか?」
「どうだろうね。もしかしたら、リングに上がった段階から気付いてたんじゃないかな。ほら、アラッドの校内戦でも似た様なことがあったよね」
「ん? …………そういえば、そんな事あったな」
今大会には出場できず、友人であるドラングの応援に回っているアイガス・ナスト。
彼も同じ策を用いて反撃の糸口を見つけようとしたが、アラッドのヤクザキックを食らい、呆気なく散った。
「上手く隠せてたら、勝負は解らなかったかもな」
「だとしても、大剣を手放すなんて随分と思い切ったことをしましたね」
「……レイ嬢の一番の武器は、大剣の扱いではなく身体強化。その点を考えれば、寧ろ自信を持って手放せたのかもしれない」
「うっかり忘れてましたわ」
大剣の扱いが日に日に上達している為、ヴェーラは素でレイの一番の長所を忘れていた。
「この試合勝った人が、レイ嬢の準々決勝の相手か」
リングに上がった二人は共に最上級生。
互いにそこそこ面識があり、手の内もある程度読める。
だからこそ、試合開始の十数秒は硬直が続いたが、片方が動き出し、それに応える対戦相手。
そこから数分間、先程の試合とは打って変わって激しいバトルが続く。
レイの瞬殺劇も盛り上がるが、現在行われている試合の様に激しい戦いも、勿論観客たちにとっては大好物。
(この試合が終われば、次はあの人の試合か)
アラッドが心の中で呟くあの人とは、フローレンス・カルロスト。
現在行われいる試合は十分盛り上がる試合だが、アラッドは……どちらが上がってこようとも、レイなら勝てると確信していた。
その為、半分ほど意識が別の事に向いていた。
「アラッド、決まったよ」
「そうだな、ルーフ……次の試合は、どうやら消化試合になるかもな」
次の試合とはフローレンス・カルロストが出るものではなく、レイの準々決勝。
今試合を終えた二人の実力は、殆ど拮抗していた。
故に、勝負の差はほんの紙一重。
戦った時間はほんの数分と言えど、二人の最上級生にとっては濃密な数分。
体力も魔力も殆ど消費していた。
(どうやら、レイ嬢がまともに戦う試合は、準決勝だけになりそうだな)
そしてリングにはフローレンス・カルロストと対戦相手が現れ、会場はフローレンスの応援一色となる。
(多分、二年生か三年生だよな。十七か十八とはいえ、この状況下で戦うのはさすがに……って、他人の俺が心配しても無意味か)
結果として、その試合はフローレンスの勝利に終わった。
だが、それでも対戦相手はほぼ孤立していると言っても過言ではない状況下で、最高のベストパフォーマンスを発揮。
フローレンスに負けて悔しいという気持ちがゼロではないが、それでも永遠に記憶に残り続けるような後悔はなかった。
「それじゃ、行ってくる」
「「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」」
次の次に試合を控えるアラッドは、運営から事前に伝えられていた入場口へと向かう。
弟が今でも自分の事を嫌っているのは解る。
ただ、それでもアラッドにとってこれからの一戦は、非常に待ち遠しいものだった。
上級生が取った行動は、決して悪くなかった。
寧ろ最善の一択と思える策だったが、それをレイはある程度読んでいた。
(顔に秘策あり、って思いっきり出てたのかもな)
今大会での戦いっぷりや、中等部時代の戦いっぷりを考えると、レイは超脳筋ガール……という印象を持たれていてもおかしくない。
それだけでも十分に脅威だったため、その戦闘スタイルを馬鹿にする者は現れなかった。
だが、上級生はその重い初撃をなんとか弾き、自分の攻撃をぶち込もうと考えた。
単純かもしれないが、それでも上手くいけば効く内容。
事実として、一般人とは体のできが違い特異体質を持つレイでも、上級生の実力と手甲、脚甲の力を合わせれば大きなダメージを与えられた。
「あの一瞬で判断したのか?」
「どうだろうね。もしかしたら、リングに上がった段階から気付いてたんじゃないかな。ほら、アラッドの校内戦でも似た様なことがあったよね」
「ん? …………そういえば、そんな事あったな」
今大会には出場できず、友人であるドラングの応援に回っているアイガス・ナスト。
彼も同じ策を用いて反撃の糸口を見つけようとしたが、アラッドのヤクザキックを食らい、呆気なく散った。
「上手く隠せてたら、勝負は解らなかったかもな」
「だとしても、大剣を手放すなんて随分と思い切ったことをしましたね」
「……レイ嬢の一番の武器は、大剣の扱いではなく身体強化。その点を考えれば、寧ろ自信を持って手放せたのかもしれない」
「うっかり忘れてましたわ」
大剣の扱いが日に日に上達している為、ヴェーラは素でレイの一番の長所を忘れていた。
「この試合勝った人が、レイ嬢の準々決勝の相手か」
リングに上がった二人は共に最上級生。
互いにそこそこ面識があり、手の内もある程度読める。
だからこそ、試合開始の十数秒は硬直が続いたが、片方が動き出し、それに応える対戦相手。
そこから数分間、先程の試合とは打って変わって激しいバトルが続く。
レイの瞬殺劇も盛り上がるが、現在行われている試合の様に激しい戦いも、勿論観客たちにとっては大好物。
(この試合が終われば、次はあの人の試合か)
アラッドが心の中で呟くあの人とは、フローレンス・カルロスト。
現在行われいる試合は十分盛り上がる試合だが、アラッドは……どちらが上がってこようとも、レイなら勝てると確信していた。
その為、半分ほど意識が別の事に向いていた。
「アラッド、決まったよ」
「そうだな、ルーフ……次の試合は、どうやら消化試合になるかもな」
次の試合とはフローレンス・カルロストが出るものではなく、レイの準々決勝。
今試合を終えた二人の実力は、殆ど拮抗していた。
故に、勝負の差はほんの紙一重。
戦った時間はほんの数分と言えど、二人の最上級生にとっては濃密な数分。
体力も魔力も殆ど消費していた。
(どうやら、レイ嬢がまともに戦う試合は、準決勝だけになりそうだな)
そしてリングにはフローレンス・カルロストと対戦相手が現れ、会場はフローレンスの応援一色となる。
(多分、二年生か三年生だよな。十七か十八とはいえ、この状況下で戦うのはさすがに……って、他人の俺が心配しても無意味か)
結果として、その試合はフローレンスの勝利に終わった。
だが、それでも対戦相手はほぼ孤立していると言っても過言ではない状況下で、最高のベストパフォーマンスを発揮。
フローレンスに負けて悔しいという気持ちがゼロではないが、それでも永遠に記憶に残り続けるような後悔はなかった。
「それじゃ、行ってくる」
「「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」」
次の次に試合を控えるアラッドは、運営から事前に伝えられていた入場口へと向かう。
弟が今でも自分の事を嫌っているのは解る。
ただ、それでもアラッドにとってこれからの一戦は、非常に待ち遠しいものだった。
337
あなたにおすすめの小説
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです
今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。
が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。
アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。
だが、レイチェルは知らなかった。
ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。
※短め。
行き遅れ令嬢の婚約者は王子様!?案の定、妹が寄越せと言ってきました。はあ?(゚Д゚)
リオール
恋愛
父の代わりに公爵家の影となって支え続けてるアデラは、恋愛をしてる暇もなかった。その結果、18歳になっても未だ結婚の「け」の字もなく。婚約者さえも居ない日々を送っていた。
そんなある日。参加した夜会にて彼と出会ったのだ。
運命の出会い。初恋。
そんな彼が、実は王子様だと分かって──!?
え、私と婚約!?行き遅れ同士仲良くしようって……えええ、本気ですか!?
──と驚いたけど、なんやかんやで溺愛されてます。
そうして幸せな日々を送ってたら、やって来ましたよ妹が。父親に甘やかされ、好き放題我が儘し放題で生きてきた妹は私に言うのだった。
婚約者を譲れ?可愛い自分の方がお似合いだ?
・・・はああああ!?(゚Д゚)
===========
全37話、執筆済み。
五万字越えてしまったのですが、1話1話は短いので短編としておきます。
最初はギャグ多め。だんだんシリアスです。
18歳で行き遅れ?と思われるかも知れませんが、そういう世界観なので。深く考えないでください(^_^;)
感想欄はオープンにしてますが、多忙につきお返事できません。ご容赦ください<(_ _)>
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる